ノウフルは、建築業界(工務店、ビルダー、リフォーム会社)における収益改善のノウハウをまとめた情報誌で、全国1万9千社の建築業界の経営者の方々にお読みいただいている。
本誌のコンセプトは「経営ノウハウフル掲載」であり、業界唯一の経営ノウハウメディアとして、会員数・ノウハウ記事数・反響数は業界で一番をいただいている。そのような本誌ノウフルでは、テーマを「集客」に絞り、ノウハウを発信している。
では、なぜ本誌が経営戦略の中でも「集客」に特化したメディアとして展開しているのか。その理由を、我々が掲げる三つのミッションに基づき説明したい。
来る集客氷河期の活路となる
一つ目は、集客氷河期の活路になるということである。下の図は、2025年を起点とした住宅着工数の推移であるが、2025年以降は大幅に着工件数が減少し、今後は多くの住宅会社が淘汰されていくと予測できる。
この減少の要因は、大きく三つに分けられる。一つ目は、デフレからインフレへの転換によって住宅価格が高騰し、家が売れにくくなっているという問題だ。二つ目は、住宅業界そのものがライフサイクル上の「衰退期」に入っているとの構造的な問題である。そして三つ目は、下の図に示されているように、日本の総人口が2004年をピークに減少へ転じ、今後も下り坂をたどっていくとの構造の問題だ。
特に三つ目の人口減少は、住宅業界に限らず、日本社会、さらには先進国全体が抱える課題である。このように市場全体のパイが縮小していく中、集客の重要性は一層増し、今後、集客における氷河期が到来するという見方ができる。
こうした背景の中で、ノウフルは全国1万9千社の住宅会社に向けて集客に関する有益な情報を発信し、集客氷河期を生き抜くための一助となることを目指している。これが我々の第一のミッションだ。
マーケティングを再定義する
二つ目に、我々はマーケティングの再定義が必要であると考えている。集客を強化するうえで、最も重要な要素はマーケティング戦略である。下の図は、その中で、マーケティングとは何かを示したものである。
マーケティングは、4P戦略を中心に構成されている。まず、商品やサービスを指すプロダクト(Product)、そして価格を設定するプライス(Price)、モデルハウスやオーナー見学会、総合展示場出店など顧客を呼び込むためのルート戦略であるプレイス(Place)、最後に、広告やホームページ、SNSなどを活用したプロモーション(Promotion)である。これらを図解すると次のようになる。
プロモーションにはチラシやポスティングなどのオフライン媒体に加え、Web広告・SEO・ホームページ・マーケティングオートメーション・SNSなど多岐にわたる手法が含まれる。これらは、自社の存在を顧客に認知させる「飛び道具」とも言える。一方で、プレイスは、顧客を実際に呼び込む場所を指し、プロダクト・プライスは、提案するデザインや気密・高断熱など、いわゆるUSPを意味する。
本来、これら全体を包括して「マーケティング」と呼ぶべきであるが、日本ではその定義がプロモーションのみに限定されてしまっているのが実情である。我々は、これら4Pをすべてを含んだマーケティングを「シン・マーケティング」と再定義し、その見直しを進めている。
下の図に示されているように、集客の成果に対するインパクトは商品やサービスが最も大きく、ホームページ・Web広告・SNSなどプロモーションのインパクトは小さい。
しかし、現在の多くの集客施策はこのプロモーション領域にしか焦点を当てておらず、それがうまくいっていない原因でもある。また、下の図に示されている通り、プロモーションはあくまで戦術に過ぎず、商品・価格・ルートなどの戦略が設計された上で行われなければ、成果は出しにくい。
すなわち、4P戦略を理解している読者にとってシン・マーケティングとは「真」マーケティングであり、これから学ぶ読者にとっては「新」マーケティングなのである。
なお、集客と比較されることが多い営業戦略だが、住宅の商品・サービス価値を伝えるソフトの領域である。
営業マンの提案力や接客力は、会社やサービスの価値を高めるものであり、集客とは本来対比されるものではない。このような観点から、本誌は集客を主軸に据えつつ、営業についてのノウハウも併せて発信していく。
CMOを育成する
三つ目は、CMOの育成である。下の図は経営者の年代別に見た後継者の選定状況を示している。
現在、多くの経営者が後継者を選定できておらず、また選定できた場合でも、どのような強みで選ぶべきかという点で結論が出ていないのが実情だ。このような中、ひとつの指針として「CMO(Chief Marketing Officer)」の必要性を挙げたい。CMOとは、先に述べた「シン・マーケティング」を扱える責任者のことである。
アメリカでは62%の企業にCMOが存在する一方で、日本ではわずか0.3%に過ぎない。
今後の企業存続において、CMOの存在が極めて重要になると考えられる。かつては営業部門の責任者が後継者の筆頭だったが、集客氷河期の到来を見据えると、広報責任者なども後継者候補に含まれるべきである。極端な話をすれば、Instagram運用を担当している若手女性が、次代の経営者になる可能性もあるのだ。
近年日本の経済成長率が停滞傾向にあり、GDPについては他社に追随を許してしまっている。このような現状を打破するための大きな戦略の一つは日本に1人でも多くCMOを増やすことだと確信している。
以上の視点を踏まえて、本誌ノウフルは次の三つの約束をしたい。
一つ目に、住宅会社の経営者が集客氷河期を乗り越える活路になること。二つ目に、住宅業界に向けてマーケティングを再定義すること。最後に、日本社会の復興のためにCMOを育成することである。この三つを我々のミッションとしたい。