アットハウジングは、低コスト・高品質住宅で、災害に強く健康にも配慮された環境を柱に、地域社会に根ざした住まいづくりを目指している。今回は、同社の代表である伊藤元博氏(代表取締役社長)に、取り組みや販売における考え方、経営のモットーなどについてお聞きした。(聞き手:ノウフル編集長 狩野)
―まず御社の概要を教えてください。
弊社は、注文住宅の販売をメインに展開しています。エリアは愛媛がメインで、四国と広島県にも展開し、創業45年にて現在の店舗数は10店舗になります。また、年間棟数は300棟で売上は58億円、社員数は100名になります。
―ありがとうございます。御社の特徴を教えてください。
弊社はローコスト商品を展開している点が特徴と言えます。本体価格が550万など、創業から低価格の住宅を販売してきました。
ー550万は驚きの低価格ですね。創業以来一貫してローコストなのでしょうか?
いえ、ここまで様々な紆余曲折がありました。私は元々、創業当時からアイフルホームに加盟をしていました。さらに、ユニバーサルホームにも初期メンバーとして加盟していた経緯があります。その際、商品の価格帯がミドルコストまで上がった時期には、少し低迷していました。かつては、ロード店や総合展示場などの出店で20店舗ほど出していましたが、効率の悪化により、売却型のモデルハウスメインで進めるなど、様々な失敗を繰り返しながら今に至っています。
ー多くの企業が、低価格の住宅を販売したいと考えながらも上手くいっていません。何か、コストダウンの工夫をされているのでしょうか。
当然ながら、45年の社歴による繋がりや、棟数があることによるボリュームディスカウントも影響します。ですが、やはり理念に沿ったDNAが社内全体に根付いていることが大きいと考えています。弊社の理念は、世の中の困りごとを解決することです。ですから、多くの方が家が買えず困っているのであれば、どのようにコストダウンできるのか創意工夫することが重要になります。この姿勢が、末端の社員まで意識として根付いていることが、最もコストダウンの要因として大きいのではないでしょうか。
また、困りごとで言えば価格だけではありません。多くの住宅検討層は、自然災害に対して不安を感じていると我々は見ています。ですから、南海トラフに備えて、かなり前から制震を標準仕様にしたり、ハザードマップで危険エリアとなった土地を提案しないなど、理念に基づいた販売活動をしております。
ー素晴らしい取り組みですね。他にはどのような特徴があるのでしょうか。
弊社は商品を多数抱えており、ラインナップ戦略の観点がユニークだと言えます。まず、単純にローコストと言っても、2階建て・平谷・小さな家専門店・自然素材など、それぞれのニーズに合わせてブランドを設けています。全てのブランドで移動式のモデルハウスを展開するので、1ヶ月でかなりのイベントを行っています。
これを集客の観点で見ると、1回の開催で5組の来場があるとすれば、その開催数を増やすことで当然来場者も増えていきます。ですから、指標を設けて、できる限りのイベントを開催をしています。
また、これらは、コロナの影響により予約制が主流になったことで、待機の必要がなくなり効率が良くなったと感じています。さらに、それぞれのブランドもハウジングではなく、各ブランド名で広告していますので、全体として幅広い集客が実現できています。一つの屋号で複数ブランドを展開しているケースはよく見られますが、それでは複数ブランド展開している意味がありませんので、やはり各ブランド独立して、集客と営業を行うべきだと考えています。他業界で言えば、様々な居酒屋を展開する大手居酒屋チェーンのイメージです。
ーありがとうございます。商品開発は、やはり市場調査なども併せて行っているのでしょうか。
私達は、様々な調査をしながら商品を展開しています。例えば、小さな家専門店を展開する際には、日本の世帯数の分析をかなり緻密に行いました。調査では、「日本の世帯8割が3人以下」だとのデータが見えてきたため、小さな家への需要があると考え、新しく「小さな家専門店」のブランドを立ち上げた経緯があります。
実際に平谷の集客が多かったり、老夫婦の来場が多いことも同じような背景があるのではないでしょうか。繰り返しになりますが、我々の理念は、世の中の困りごとを解決することですから、このような市場調査を行いながら問題を徹底的に調べた上で、商品を転換していくことが勝ちパターンになっています。また、単なるローコストの住宅だけでなく、ミニファミリー向けに、超高品質でコスパの良い家というのも、今後開発をしていく予定です。
ー素晴らしい取り組みですね。組織の観点ではいかがでしょうか?
私共は、採用と育成に強いこだわりを持っています。毎年5人から10人の新卒が入社をしてくれますが、特徴としては、最初の説明会から社長が表に出る点にあります。また、説明会だけでなく、全ての面接へも私が参加します。
これらに参加する理由は三つあります。一つ目は、社長が一番会社のプレゼンができるためです。社長自らがプレゼンをすることで、言霊の乗ったメッセージを学生に伝えることができ、採用率も上がっていきます。
二つ目は、真剣さが伝わることです。マイナビなどのブースは採用担当が配置されているケースがメインですが、そこに社長が参加すると、学生側に真剣さが伝わるのです。そもそも、会社が「採用してやる」というスタンスは駄目だと思っていますし、採用から「入社をしていただく」との考え方を持てば、おのずと社長もそのようなブースに参加するようになるのではないでしょうか。
そして三つ目に、人材の見極めができることです。やはり、書面だけでは伝わらないような要素が人にはありますし、そこを早期に見極めたいとの考えから、これらの取り組みを行っています。
ー素晴らしい取り組みですね。育成については、どのような工夫をされているのでしょうか。
育成の特徴については、ロープレを徹底して行ってます。ロープレは、毎週2回徹底しており、社長や事業部長がロープレに参加しながら、マネジメントをしていきます。1回のロープレで2時間ほど行うケースが多く、動画を保存して若手が実習できる体制をとっており、復習などの効果も出ています。
よくロープレが続かないとの声を聞きますが、弊社では、日を決めたら用事を入れないほどにロープレを徹底しており、これらの時間に契約が入ったら契約を断るルールも敷いています。これほどまでに徹底しなければ続かないと考えています。
ーありがとうございます。非常に有意義な取り組みですね。最後に、今後の展望についてお聞かせください。
まず、社員満足度を上げたいと考えています。やはり、社員満足度と売り上げには相関性がありますし、組織と事業にとって最も良い活動だと考えています。具体的に言えば、休みを増やしたり、給与を増やしたりの取り組みがありますが、店ごとに決算書を出しているため、増収増益賞与も出しています。営業は、必然的に売上手当が上がっていくのですが、間接部門に対しても意識して、仕組み作りを行っています。
また、社員旅行に関しても、300棟を達成したら3泊4日、270棟なら2泊3日など、ノルマ調整しながら頑張ってもらえるような取り組みを徹底しています。営業メンバーは、元々人のために頑張る人種なので、本社の社員が旅行を楽しめることに動機を見いだし、精一杯働いてくれます。
さらに、今後は社員満足度を上げながら、役職を増やしていきたいとも考えています。まずは、副店長という立場を増やして、店長の疑似体験をしてもらいながら店舗数を増やしていくことを徹底する方針です。
ー今後の成長がとても楽しみですね。本日は、ありがとうございました。
アットハウジング
アットハウジングは、低コスト・高品質住宅で、災害に強く健康にも配慮された環境を柱に、地域社会に根ざした住まいづくりを目指している。