今回は広報部門を立ち上げ10年で100棟を実現した熊本県のL社について見ていきます。まずL社について簡単に説明をいたします。L社は熊本中心に展開しているデザイン住宅会社です。デザインだけでなく性能にも力を入れており、急成長を遂げている企業です。
では本日の目次をお示しいたします。
当初の課題
元々L社は、創業が2010年前後と比較的若い会社です。しかしながら創業者の意欲は高く圧倒的なスピードで棟数100棟を実現したいという強い気持ちがありました。しかしながら、圧倒的に集客が足りず、最も優先順位が高いテーマは「集客(以下広報)部門を立ち上げること」だという認識を持っており、広報部門立ち上げを積極的に行いました。
まず話を進める前に、住宅業界の前提についてお伝えいたします。下図をご覧ください。下図は、「日本とアメリカの広報部長の数」になります。アメリカでは大手を中心になりますが、62%もの会社で集客部長がいます。一方で日本の会社では0.3%しか広報部長がいないと言われています。
このように、日本では社会構造として集客に関する取り組みが遅れているということがお分かり頂けると思いますが、住宅業界に至ってはさらに低い数値になることが予想されます。
下図は住宅会社の部署における構造を記した図になります。多くの住宅会社では経営者が営業や工務においては経験しているケースが多く、一方で集客、主にデジタル集客については経験値が少ないケースが多く、「リーダー不在」となります。
結果、広報部門が育たず集客のマネジメント体制が出来上がらないのです。ここでL社は創業者である社長が自ら広報部門の長となり、集客全体の指揮を行う形を取りました。では集客におけるマネジメントとはどのようなことでしょうか。それは全体設計です。
集客部門は、様々なテーマに分岐されます。下の図は、住宅業界の集客構造を示したものになります。
集客構造に関しては媒体、販売ルート企画の三つがあります。媒体に関しても、チラシだけではなくWeb広告、SEOホームページ、SNS、紹介など様々なパターンがあります。また販売ルートにおいても、端点商店イベント見学会店舗など様々なルートがあります。
そして、販売ルートで行う企画に関しても相談会やセミナー、ワークショップツアー宿泊体験など多岐にわたります。このような業務を平面的に行ってしまうと、結果忙殺されてしまいマネジメントが困難になります。集客領域におけるマネジメントはいかに「全体プロデュース」に徹するかが非常に重要になります。
集客領域はSEO、WEB広告、HP、システムなど様々な分野から構成されます。これら一つ一つを完全にマスターするにはかなりの時間がかかってしまいます。ですから、あくまで全体を統括する「プロデューサー」の位置付けでマネジメントをする必要があります。
この構造を家づくりで例えるならばそれぞれの領域の外注先についてはあくまで大工やガラス屋、ガス屋などの「職人」にほかなりません。一方で集客部長はまさにそれらを統括する「現場監督」なのです。
L社の社長は集客部門の「現場監督」としてマネジメントを徹底いたしました。では具体的にどのようなマネジメントを行ったのでしょうか。
L社の取り組み
①獲得から認知
1つ目は「獲得から認知」です。下の図をご覧ください。下の図は、チラシや看板、テレビCMなどの見込み客へのアプローチを図にしたものです。当然ながら反響を獲得するという考え方は直接的な集客の目的ではありますが、長期的な視点で見れば、看板やチラシ、テレビCMなどによって、自社を知ってもらうという副次的な狙いが、最終的に反響として積み上がっていくことを押さえる必要があります。
ですから、単に集客は反響を獲得するものだ、という捉え方に終始するのではなく、認知度を獲得するという点も押さえることが重要なのです。そして最初に示した通り、認知度はテレビCMであれば何回放映されたか、チラシは何人の手元に届いたかなどの言わば「到達数」が重要な指標になります。
WEB広告の場合は「表示回数」という指標で判断され、だいたい1回表示あたり3円が相場と言われています。チラシは、だいたい5円が相場と言われていますのでWEB広告の方が効果的と言えるでしょう。では、認知強化については、本当に効果があるのでしょうか。まず下の図をご覧ください。
こちらの図は、ブランディングを行う際に目指す2つの指標になります。一つ目が、ブランド再認と言い、自社ブランドを見込み客が見た際に「あの会社知ってる」と思ってもらえる数を言います。そしてそろそろ家が欲しいなと思ったタイミングで、自社のブランドを思い出してもらうことをブランド再生と言います。
認知度という観点においては、このブランド再認とブランド再生を獲得することが重要になります。
例えば下の図をご覧ください。住宅の見込み客は常に住宅を検討しているわけではありません。下の図で言えば、折込を見たとき、あるいはCMを見たとき、または新築の魅力を感じたときなどに検討の熱が上がり、検討を始めるようになります。
この観点で言えば、いかに検討熱が高まったときに自社を思い出してもらえるか(ブランド再生)、が非常に重要になります。以上を踏まえると認知度を高めることがいかに重要な施策かお分かりでしょう。
また、下の図をご覧ください。こちらはダブルジョパティの法則と言われるものですが、端的に言えば「購入頻度とブランド認知度は相関する」ことを示しています。
以上を踏まえると集客において単に反響を取るだけではなく、認知度(知名度)を獲得するということが重要だとお分かりでしょう。
②逆算思考
二つ目が「逆算思考」です。下の図をご覧ください。下の図は、L社が集客の計画を立てるときの考え方になります。一般的には来場目標などは前期据え置きで設定されるケースが多いですが、N社は目標棟数から逆算するという考え方を徹底していました。
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