今回は規格住宅を開発し、初年度から60棟の受注を達成した兵庫県K社について紹介いたします。
K社は兵庫県に本社を置く住宅会社です。
分譲事業を営んでいるのですが、40名以上の一級建築士を擁し、デザイン性の高い住宅を販売している珍しい企業です。
今回はこのK社がどのようにしてリリース初年度から規格住宅を60棟も販売したのか、について触れてまいります。
では本日の目次をお示しいたします。
当初の課題
下図はK社が抱えていた課題と目標、ギャップを埋める為の対策を記した図になります。順に説明致します。
K社の課題は大きくは二つありました。一つ目が”土地依存型”のビジネスモデルで長期的に尻すぼみにあるという点です。K社は地場の不動産ネットワークと資本力を武器に大型分譲地を仕入れて販売をしているビジネスモデルですが、そもそも土地自体が年々減少傾向にあり、打開策を模索していました。
二つ目に、”土地依存型”営業である点です。K社は仕入れる土地自体に優位性があり、建物自体を訴求せずとも売れてしまいます。一方逆に言えば「土地が悪ければ売れない」ということであり、「建物で売れる」魅力的な住宅商品が出来ないかと悩んでいました。
このような背景から「土地に依存しないビジネスモデルの構築」に解決策を見出しました。
お伝えしたように現状の仕入れに限界がある中で「エリア拡大」が必須となります。一方で現状のように土地に依存していると仕入れのネットワークがない他エリアへの拡大は不可能です。ですから、建物で勝負出来る体制を作るべく規格住宅の立ち上げを行ったのです。この解決策は注文住宅層を取り込めるという副次効果もあり、有効だと判断されました。
K社の取り組み
ここからはどのように規格住宅を作り上げたのかについて説明致します。
結論から言えば下図のようにUSPを決定し、商品戦略を設計し最後に販売戦略を決める流れが最も好ましいフローになります。このどれか一つでも不足すると商品開発は必ず失敗いたします。ここでは「USPの決定」「商品戦略の設計」「販売戦略の設計」の順で見て参りましょう。
①USPの決定
一つ目が、USPを決めることです。USPとは自社が強みとする競争優位性を指します。下の図にあるように競合・自社・顧客において、「自社の得意分野の中で顧客ニーズを満たし、かつ競合が参入できない領域」をUSPといいます。
下図は適切なUSP事例になります。例えばエサキホームは「5LDKの間取り」をUSPとしています。他社が出来ない、かつ顧客が求めているという観点で優れたUSPと言えるでしょう。商品開発にはまずこのUSPを押さえることが非常に重要になります。
ではK社のUSPは何でしょうか。結論から言えば前途した「一級建築士が40名在籍」がUSPになり得ます。一方でそれだけでは不十分です。お伝えしたとおり、USPは「自社の得意分野の中で顧客ニーズを満たし、かつ競合が参入できない領域」であり、顧客が求める要素を取り込むことが重要です。
実はK社の商圏は学区制という特殊な特性がありました。学区制とはエリアを学区で区切り、学区内でしか移動できないという自治体のルールです。この学区性が敷かれている以上、立地が決まっている分譲住宅が売れる傾向にあり、多くの消費者が「分譲慣れ」しています。
ですから「分譲住宅は単一で魅力はないけど注文住宅は高いから仕方がない」という観念が浸透してしまっているのです。このような中で顧客が求めることは何でしょうか。
結論から言えば「”高い”というデメリットを排除した注文住宅」になります。K社は「一級建築士が40名在籍」×「”高い”というデメリットを排除した注文住宅」という観点で下図のように「一級建築士が作る定額制デザイン住宅」をUSPとしました。
②商品戦略の設計
このUSPが決まれば次に実際の商品開発に差し掛かります。商品開発には大きく3つの工程があります。それぞれ「パッケージング」「ブランド」「付随機能」という形でUSPをコアとして順番に設計していくことが重要です。
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