多くの建築会社がエクセルで工程表を作成することを試みますが、多くのケースで「作り方が分からない・・・」「時間をかけて作ったのに使われない・・・」とった事態に陥ります。

 

下図はある経営者の悩みですが、同じ悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。

 

 

最近は働き方改革なんかで生産性が求められ始めている。

とはいっても何から手をつければいいか分からないな・・・。

最近はアプリなんかも出てきてるけどどれがいいかさっぱりだ。。。

エクセルで工程表を作りたいけどどうすればいいか分からない・・・。

作ったところで形骸化して使われなくなる・・・。

どうやって進めるべきか教えてほしいよ。

 

今回はなぜ時間をかけて作ったエクセルの工程表が使われないのか、作り方が分からない場合は作るポイントを説明いたします。

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

本日のまとめ

 

まず、本日のまとめは以下になります。

checkbox工程表管理が求められる理由は建築業の粗利の低さである

checkbox粗利を上げるためにフロー化(工程表)・マニュアル化が必要である

checkbox工程表を作るためにまず目標設定が必要である

checkbox目標設定を行った上で工数分析を行うことが重要である

checkbox工数分析を行った上で分業体制を明確にすることが重要である

 

大枠を押さえた上で一緒に見て参りましょう。

 

工程表管理が求められる理由

 

今回の記事は施工管理における工程表のポイントをご紹介いたしますが、実際の工程表作成については下記にまとめておりますのでこちらを踏まえた上でご覧いただくことを推奨いたします。

 

 

なお、エクセルで工程表を作成するのではなく施工管理アプリなどで工程表を管理したい場合は下記の記事で具体的に触れていますので合わせて御覧ください。

 

 

 

業界構造としての低粗利

まず工程表を作る背景として建築業界の2つの課題から見てまいります。一つ目が、業界構造としての低粗利です。下の図をご覧ください。下の図は建築に関わる様々な作業を掲載したものになります。図に記載しているように、建築業界は一般的な製造業と比較し人の変数が多く、手間がかかる点が特徴的です。

 

 

 

下図は各業界における売上高総利益率を示していますが、サービス業や農業と比較し建築業建設業に関しては非常に粗利が低いことが見て取れます。粗利が低い要因は様々ありますが、前途した通り顧客とのやりとりなど変数が多い業務が多く存在する点が大きな理由の一つです。

 

 

様々な要因におけるコストアップ

また、様々な要因におけるコストアップという観点も非常に無視できません。下図はこの10年間での各セクションでのコストアップ要因になります。例えば、営業上で言えば競合が増え、契約までのリードタイムが増えています。設計上のコストアップについてはこだわり層の拡大により、プランや仕様確定の回数・時間の増大などが生じています。

 

 

施工上のコストアップ要因としては、原価各種材料の高騰による部材および施工経費が増大しています。また、それら以外にも法改正による品質管理および保証体制に関するコスト、金利高・貸し渋りによる資金調達コストの増大などが挙げられます。

 

 

下の図は原価の高騰を示した図になりますが、下図のように合板、鉄鋼、金属製品などが今後大幅に金利上昇・原価上昇していき、消費の冷え込みが続くと言えます。

 

 

下の図は新築戸建て成約平均単価を首都圏で示したものです。リーマンショック前後を起点にこの10年価格はピークアウトしておりましたが、2020年から上昇し、21年にはリーマンショック前後の水準を超え22年にはかなりの上昇率を示しています。

 

 

このような原価高騰時代において、営業上・設計上での対策としてはマーケティングや営業活動が挙げられます。一方でそれらに関しては非常に難易度が高い施策と言えるでしょう。施工上の対策としては大きく三つ挙げられます。

 

一つ目が先行管理発注による設計施工面でのロスミスの削減、二つ目が有能な協力業者の確保と新規業者の育成、三つ目が回転率の向上になります。これらの施策を行うことによって、施工上の粗利を改善し、原価高騰時代に向けて展開を行うことが重要になります。

 

 

また現場における粗利の改善については、管理を行うことが非常に重要です。中でも、下の図にあるような様々な管理を行うということが非常に重要になっていきます。

 

工程管理は計画通り現場が進捗し、完成することを指します。スローガンは「手待ち、手戻りを起こさない」です。品質管理は要求された品質で建物を完成させることを指します。スローガンは「作業が行いやすい現場をつくる」です。予算管理は予算を有効活用し利益を改善することを指します。スローガンは「計画、発注段階でムリ・ムダを起こさない」です。顧客管理は顧客の満足度を高めることを指します。

 

 

スローガンは「顧客との信頼関係を構築する」です。近隣管理は現場近隣との良好な関係を構築することを指します。スローガンは「近隣との信頼関係を構築する」です。

 

業者管理は協力業者との関係の強化を指します。スローガンは「協力業者に対して有益な状況を構築する」です。情報管理は関与者の情報レベルを合わせるることを指します。スローガンは「言葉だけでなく、記録を残す」です。

 

これらの管理体制を構築する上でどのような施策が必要なのでしょうか。下の図をご覧ください。下の図は製造業の作業工程を示したものです。製造業は粗利が50%と高い水準であるということはお伝えした通りになりますが、その要因としてはベルトコンベアのように作業フローが明確化されていて、かつマニュアル化されているという点にあります。

 

ですから、下の図のように、住宅業・建築業界においても、企画からアフターというところまでフローを明確化し、マニュアル化することが非常に重要になります。フローの明確化・マニュアル化を行うことで初めて前途した管理が可能になるのです。では粗利を改善する上でフローを構築する、あるいはマニュアル化することから始めればいいのでしょうか。そうではありません。

 

目標設定を行う

 

エクセルで工程表などを作る前に、大きく三つの取り組みを行うことが重要になります。一つ目が目標設定です。下の図をご覧ください。下の図のように作成においてはフローチャート、マニュアル・帳票・工程表などありますが、工程表作成がやマニュアル化が目的になってしまい現場で使われないケースが非常に多くあります。

 

そもそも粗利を生産性改善するそもそも育成で工程表を作成する目的は何でしょうか。下の図のように建築業であれば粗利を改善することにあります。例えば粗利を20%改善するには一棟あたり100時間の時間削減が必要です。そのために残業時間をなくす必要があります。

 

 

さらにそのために、移動時間や会議時間、顧客打ち合わせ時間を減らすとなります。これらを明確にした上でエクセル工程表を作成することが形骸化の予防になります。また定量的な目標を掲げるというだけではなく、達成に向けたKGI・KPIを明確にする必要があります。KGIとは目指すべき目標と、それらを達成する施策を指標化したものになります。

 

 

例えば営業の場合は、契約数=来場数✕次アポ率✕プラン提示率✕設計契約率となり、契約数はKGI、それ以外の数字がKPIとなります。そして下図にあるように、改善に向けたスケジュールをしっかりと明確にしながら定点観測をし、運用していくということが重要になります。

 

 

 

無駄な工数を分析する

 

次に工数分析になります。単に工程表を作るだけは非常に危険です。というのも現状の工程自体が非常に無駄な要素が多く多いことも考えられるからです。そのような場合に備えて、下の図にあるように現状の仕事の流れ、内容というものを全て洗い出しを行い、無駄がないかを整理することが重要です。

 

 

下図は、とある会社で日々日々の施工業務などを各部門ごとに期間や全体の工数から洗い出しをしたものになります。このような作業の中でまずは無駄をあぶり出しましょう。

 

 

 

また、これら業務を行うことで、重要なポイントがあります。それがDRASTICの視点です。DRASTICとは、下の図のように生産性を改善する上での軸を示したものになります。それぞれ止められないか、反対の立場、視点から考える業務の割り振りを変えられないか、他のもので代用できないか、順番は変えられないか、細分化できないか、集中集約できないかという視点で業務効率を考える必要があります。

 

分業体制を明確化する

 

そして分業体制の明確化です。下図は建築業界における売上規模から逆算した業務内容です。当然ながら、企業規模によって組織体制が大きく変わってきます。

 

 

例えば、事業立ち上げ期であれば、事業立ち上げ期では、仕様決めを営業が工務・設計が兼ねているケースが多い蛍光にあります。事業成長期においては優秀な営業や設計・監督の生産性を上げる為に、仕様決め担当としてICを入れ分業化を進めるケースが多くあります。

 

事業拡大期には、営業や監督や若手や他社から移ってくるメンバーが多く、共通フローの必要性が高まります。一方で設計はなかなか採用・育成が出来ず設計業務の一部を営業が担当したり設計が不要な規格住宅を入れるようになります。

 

このように企業規模によって分担が大きく変わりますのでこの観点で体制を見直すということが必要です。

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkbox工程表管理が求められる理由は建築業の粗利の低さである

checkbox粗利を上げるためにフロー化(工程表)・マニュアル化が必要である

checkbox工程表を作るためにまず目標設定が必要である

checkbox目標設定を行った上で工数分析を行うことが重要である

checkbox工数分析を行った上で分業体制を明確にすることが重要である

 

以上、本日はエクセル工程表を作る前に行う三つのポイントについて触れてきました。そもそもなぜ工程表管理が求められるのか、さらには工程表を作る上での目標設定・工数分析・そして分業体制という観点を正しく押さえることが重要になります。これらを踏まえた上でエクセル工程表の作成を行っていきましょう。

この記事が気に入ったら
いいね!をお願いします

最新情報をお届けします

フォローすると最新情報がTwitterで確認できます