今回は宮城県C社の事例をご紹介いたします。

 

C社は、東北全域でリフォーム事業を行っている会社になります。メインエリアの宮城ではエリアシェアトップ企業として展開しております。C社では女性販売員が飛び込みでリフォームについてのご相談を請負い、発注に繋げるというユニークなビジネスモデルで事業活動を行っております。

 

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

当初の課題

 

下図はC社が抱えていた課題と目標、ギャップを埋める為の対策を記した図になります。

 

順に説明致します。

 

 

C社には当初大きく二つの課題がありました。

 

一つ目が、USPがないビジネスモデルということです。話を進める前にUSPについて説明致します。USPとは下図にある通り、「自社の得意分野の中で顧客ニーズを満たし、かつ競合が参入できない領域」を指します。例えるならば「デザインの○○」「性能の○○」など、社名の上に関する自社の「独自性」を指します。

 

 

 

C社は「○○のC社」という冠となる独自性がありませんでした。というのもC社は前途した通り、「女性販売員が飛び込みでリフォームについてのご相談を請負い、発注に繋げる」というビジネスモデルです。リフォームニーズが顕在化したタイミングで独自性で勝負する必要がなく、飛び込みで潜在需要から発注に繋げる為、競合と独自性で勝負をする必要がないビジネスモデルなのです。

 

一方で、インターネットによる情報の氾濫によりリフォームに関心がない層も他のリフォーム会社と比較検討するケースが増加しておりました。そのような時勢の中C社は競争戦略の観点で「自社の独自性」がないことに課題認識を持つようになりました。

 

二つ目が単価の減少です。リフォーム業界には大きく4つの価格レンジがあります。C社では単価50万以上のリモデル・リノベーションを主な対応領域としておりました。しかし、近年は50万以下のリフレッシュやリペアの領域が拡大し、生産性が大幅に減少しておりました。

 

 

原因はリノベーション・リモデル領域における競合の競争力増加にあります。近年リノベーションを中心としたFC事業が拡大傾向にあり、市場自体が寡占状態にありました。このような時勢の中C社は他社と差別化出来る体制作りが必要であると感じるようになっていました。

 

以上、C社は様々な状況から「自社の独自性」を踏まえた「差別化戦略」を模索するようになったのです。このような背景から「自社の独自性を踏まえてブランディングを行う(差別化戦略)」ことに解決策を見出しました。

 

なお、ブランディングには下図のように「企業ブランド」「事業ブランド」「商品ブランド」があります。ブランド自体をどの規模感で展開するかで分かれるのですが、C社はリフォーム事業をほぼ企業として取り組んでいたので企業ブランドとしてリフォームブランドを構築することを目指しました。

 

 

また、ブランディングにおいては外向きのブランディングと内向きのブランディングがあります。外向きのブランディングは一般的なブランディングであり、顧客に向けてのブランディングです。一方で内向きのブランディングは社員に向けてのブランディングです。理念・哲学など社員が持っているブランドに対する関心や熱意を指します。

 

 

多くのケースで外向きのブランディングは行っているものの、内向きのブランディングは疎かになっています。結果「仏作って魂入れず」になるケースがほとんどですが、C社はこのインナーブランディングも意識的に取り組むことを意思決定いたしました。

 

このように「ブランド立ち上げ」→「外向きのブランディング」→「内向きのブランディング」と一気通貫で取り組んだC社ですが、下記のように契約単価を7倍まで引き上げる圧倒的な成果を創出いたしました。

 

 

C社の取り組み

 

ここからは実際にどのような取り組みを行ったかについてブランディングの考えと併せて説明致します。

 

なお、事前に下記ブランディングの記事をお読みいただくと理解が早まりますので是非ご覧いただいた上で読み進めてください。

 

 

そもそもブランディングとは何でしょうか。まず下の図をご覧ください。素材が同じ二つの財布があります。どちらの方が金額が高いでしょうか。

 

 

言うまでもなく、多くの方がルイヴィトンのロゴが付いた財布と答えるでしょう。では、どのくらいの価格を付けますか?多くの方は1万円以上の価格を付けるでしょう。素材(原価)が同じにも関わらず価格が大きく違う。これがブランディングの威力です。また、この価格差を「価格プレミアム」と言います。

 

 

この価格プレミアムを高めることがブランディングにおいて非常に重要になります。ではどのようにしてこの価格プレミアムを高めるのでしょうか。価格プレミアムを高めるには「認知度」と「好感度」を高めることが重要になります。端的に言えば「好きになってもらうこと」と「知ってもらうこと」ですね。

 

 

例えば、下図の通り認知度と好感度が全くない場合とある場合で契約率、もっと言えば全ての指標が変わってきます。日常生活でも知っているメーカーや好きなメーカーを中心に購買活動を行うでしょうからこの点はご理解頂けるのではないでしょうか。

 

 

また、下図を御覧ください。こちらは「ダブルジョバティの法則」と言われるものです。「認知度と売上は相関がある」ということを示したグラフですが、このようにブランディングと売上の相関はデータでも証明されています。

 

 

では「好感度」はどのように作ればいいのでしょうか。この好感度こそが前途したUSPになります。自社の得意分野の中で顧客ニーズを満たし、かつ競合が参入できない領域を指します。

 

 

 

C社の市場において「デザイン性の高いA社」「性能に強いB社」などすでにUSPを明確にした競合が多く存在していました。そのような中で二番煎じで展開することは寡占市場に乗り込む自殺行為であり、賢明ではありません。C社では下図のように他社の強みと自社の強み、そして顧客の感度に基づきそれぞれの特性を比較表にいたしました。その上でデザインや性能だけでなく、接客対応・価格・アフターフォローなど様々な観点で分析をいたしました。

 

 

調査の結果、C社の展開する市場においてはソフト領域をUSPにしている会社がないことが分かりました。ソフト領域は接客、施工管理やアフターフォローなど人的なサービスを指します。一方でハード領域はデザインや性能、構造などを指します。C社はソフト領域、中でも「保証」「施工管理」「アフターサービス」をUSPとすることにいたしました。USPを決定した上で次に必要な施策が、下図の通り4つのフローになります。

 

 

まず、ネーミングとロゴについてはキャッチフレーズも分かりやすさを踏まえて「保証(安心)」「施工管理(安全)」「アフターサービス(アフター)」の3つの頭文字を取って「AAA(トリプルエー)」といたしました。

 

 

ストーリーについてはAAAを訴求すべく「リフォーム業界のクレーム率32.7%」を取り入れます。クレーム率が高い業界だからこそ、AAAが重要であるというメッセージをストーリーとして顧客に伝えることでAAAの重要性を訴求します。

 

 

以上がブランディングにおける好感度設計になります。好感度はすなわち「USP」であり、それがブランディングの片翼を担っているという点が非常に重要なので押さえておきましょう。

 

ここからは認知度に話を戻し、具体的な認知戦略について説明してまいります。「認知度と売上は相関する」ということはお伝えしたとおりですが、どのように認知度を広げるべきなのでしょうか。結論から言えば「一貫性」と「情報力」いう観点が非常に重要です。

 

順番に説明いたします。まず一貫性ですが、「伝え方の一貫性」を指します。「チラシとホームページで言っていることが違う・・・」このような事態は顧客の信用を失います。ですからUSPに沿って自社ブランドを一貫性を持って展開することが重要です。

 

 

下図はスターバックスのブランディングを説明した内容ですが、ご覧の通り一貫性を持って展開していることが分かります。ちなみにスターバックスは広告宣伝費をかけないことで有名ですが、一貫性を持って発信すれば広告宣伝費をかける必要はないのです。

 

 

二つ目が「情報力」です。下図を御覧ください。どちらの方が訴求力が高いかと問えば多くの方が動画の方と答えるでしょう。情報量という意味では静止画よりも動画の方が圧倒的に情報発信に向いているということはご理解頂けるのではないでしょうか。

 

大豆のお肉のヘルシーハンバーグ| レシピ | マルコメ

 

実際に「84%のスマホユーザーが動画を視聴」「動画の情報は50%が記憶に残るが、文字情報は22%しか残らない。」「動画はSNSで他のコンテンツに比べて3倍シェアされやすい」「動画一分間の文字量は180万文字である」というデータからも動画の有効性は明確です。

 

 

ですから、前途したUSP、さらにはロゴやシンボルストーリーを動画にまとめ上げ、様々な顧客接点に配信することが非常に重要なのです。C社では実際に下のような動画をHP、メルマガ、YOUTUBE動画、バナー広告など様々な媒体で発信しています。

 

 

 

そのことにより自社のUSPがより鮮明に伝えることが出来るのです。この観点で重要な考え方があります。KPI指標を「反響数」から「認知度」に切り替えることです。多くの経営者は広告の効果を「反響数」で捉えますが、ブランディングの指標は認知度(広告で言う表示回数)であり、費用対効果を図れるものではありません。

 

 

ですから反響数という考えは捨て去り、認知度(表示回数)でマネジメントすることが非常に重要になります。実際にC社では「反響数(どれくらい反響があったか)」で評価をせず、「表示回数(どれくらい見られたか)」で全ての顧客接点を管理しています。

 

以上が、アウターブランィングになります。

 

ここからはインナーブランディングについて見て参ります。インナーブランディングは言わば社員に向けたブランディングです。ここでは下図のようにAAAと理念を紐付け、社内における浸透を強化することが重要です。前途したAAAというブランドを社員にどのように愛着をもってもらうか、がインナーブランディングにおいて重要になります。

 

 

 

 

なお、インナーブランディングについては下記記事に詳しく説明しているので併せて御覧ください。

 

 

詳細はこちらの記事に譲るとしてここではインナーブランディングについてどのような取り組みをC社が行ったか、についてご説明致します。一つ目が、「検討」です。AAAを踏まえた理念を構築する上で下図にあるように”社員を巻き込みながらの検討”が重要になります。この領域で社員を巻き込まなければ「仏を作って魂入れず」になるので注意が必要です。

 

 

AAAを踏まえて社会にどのような価値提供が出来るのか、を社員が主体となって検討するのです。その検討で出た価値をそのまま「ミッション」「ビジョン」「バリュー」としてまとめ上げることで、社員がAAAというブランドに愛着を持つようになるのです。

 

「ミッション」「ビジョン」「バリュー」が出来れば良い訳ではありません。幹部陣が中心になって「社内に発信”し続ける”」ことが重要です。発信については下図のようなアプローチがありますが、C社は全てのアプローチを行い、AAAに魂を吹き込みました。中でも経営者自らが月1回の全体朝礼で”AAAを通じてどのように社会に価値提供をするか”について「ミッション」「ビジョン」「バリュー」に沿って訴え続けました。

 

 

このような取り組みを行うことでC社では社員がAAAというブランドに愛着を持って、顧客に自信を持ってお伝えし、結果多くのファンを創り上げるという効果を生み出しました。結果、C社では契約単価が7倍まで高まり、大きな成果を出す結果となったのです。

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkboxC社は外部環境において競合との熾烈な争いを強いられていた

checkbox競合との差別化戦略として自社ブランドを立ち上げることにした

checkbox自社ブランドを外部だけでなく社内に浸透させることを目指した

checkbox結果、契約単価が前年対比7倍にまで増加した

 

以上、今回はブランディングをし、事業ブランディングにより契約け、契約単価が7倍になった宮城県支社の事例をご紹介いたしました。今後、ブランディングという考え方は非常に重要になってきますので、ぜひ取り組みについてしっかりと押さえていただければと思います。

 

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