本日は営業0名で完工粗利を18%から25%に増加させた岐阜県M社について見て参ります。M社は岐阜を中心に展開する注文住宅会社です。
では本日の目次をお示しいたします。
本日のまとめ
まず、本日のまとめは以下になります。
住宅業界は粗利が低く倒産率の高いビジネスである
M社では利益率が低い状況に課題認識を持っていた
M社は3つのポイントに沿って完工粗利を改善する施策を行った
結果完工粗利を18%から25%まで7ポイント上げることに成功した
大枠を押さえた上で一緒に見て参りましょう。
当初の課題
下図はM社が抱えていた課題と目標、ギャップを埋める為の対策を記した図になります。順に説明致します。M社は営業要員を抱えず、社長が1人で販売領域を見ていたので社内体制が全く整備されておらず、契約から完工までの工程において仕組み化されておらず、最終的な粗利が低いという悩みを抱えていました。
そこでM社は粗利を高めることで最終的な利益を確保しようと”見える化による粗利改善”を行うことになりました。
本題に入る前に住宅業界における粗利構造について触れてみたいと思います。そもそも、住宅業界は「粗利が低いビジネス」と言われております。理由は様々ですが「複数の業者がいる」「アフターフォローの長い付き合い」「多くの資材・備品の搬入」「詳細な見積もり作成に1週間」「3ヶ月から6ヶ月の工期」「お客様との打ち合わせ」など挙げだすときりあがありません。
一方で「詳細な見積もり作成に1週間」「3ヶ月から6ヶ月の工期」などはM社が契約から完工において仕組み化されていない為粗利が低いという考え方と関連する要素と言えます。下の図は、各業界の売上と粗利を示したものですが、サービス業などと比較すると住宅業界は粗利水準が低い特徴が伺えます。
また、粗利水準が低い為に全国で2番目に倒産件数が多いビジネスであり、事業存続においても粗利確保が重要であることは明白です。特にコロナ渦において利益率の確保は企業の存続を考える上で必須であることは言うまでもありません。このような状況下でM社はどのように粗利改善を行ったのでしょうか。
M社の取り組み
①脱Excel化による作業の効率化
結論から言えばM社は三つのポイントを押さえて粗利改善を行いました。一つ目が脱Excel化による作業の効率化です。M社では下の図のように、エクセル管理を全て社内システム化し生産性を高める取り組みを行いました。
このシステム化によって下図にあるように、「見積」「実行」「発注」「支払」「請求」「台帳」という6つの業務を一本化することで丸一日かかっていた業務をなんと1時間に短縮することに成功したのです。
②原価可視化による単価の調整
そして二つ目が、原価可視化による単価の調整です。下の図は、M社が完工における粗利実績をシステム化したものです。
このように各物件の粗利が一覧で可視化される体制をとることにより「どの物件がどの程度原価水準を超えているか」を明確にする体制作りを行いました。さらにこれらを「営業担当別」「工事担当別」「組織担当別」に分類することによって現場ごとに粗利がわかる体制作りを行い、粗利のばらつきを改善いたしました。その結果、大幅な粗利改善に繋げることができたのです。
それだけではありません。下の図は、各業者に発注する社内見積もりです。これらを一目でシステムで一覧化し、発注額が超過したものなどを可視化することに成功したのです。M社では発注額の超過を防ぐ為に、見積承認において社長決済を条件とすることで大幅に粗利の改善を成功させました。
③単価履歴の可視化による科学的交渉
三つ目が、単価履歴を可視化することによる科学的交渉です。下の図は、M社が過去業者に支払った内容などを履歴として残している図になります。M社ではこのような各業者にどのように単価で支払いを行っていたかをシステム上で履歴として残しています。
この取組によって例えば3年前と現在で見積もりの単価が上がっている場合に「なぜ上がっているのか」を明確に提示し、理由を確認することにより根拠のない値上がりに対して正当に交渉出来る体制を構築したのです。
結果、M社では非合理的な単価の上昇を可視化し、適時交渉を行うことで粗利改善に繋げることに成功いたしました。このような3つの取り組みを行うことによってM社は完工粗利を18%から25%と7ポイントも高めることに成功したのです。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
住宅業界は粗利が低く倒産率の高いビジネスである
M社では利益率が低い状況に課題認識を持っていた
M社は3つのポイントに沿って完工粗利を改善する施策を行った
結果完工粗利を18%から25%まで7ポイント上げることに成功した
今回は、M社の粗利改善について見て参りました。このような取り組みを行うことによって住宅会社の粗利は改善する余地があります。正しい流れで体制を改善することによって、利益率の高い企業体質を構築していきましょう。なお、実際のツールについてはエニワンのHPを参照ください。