岡山県を中心に注文住宅・分譲住宅を販売しているライフデザイン・カバヤ。既存事業だけでなく、成長事業や新規事業などへのチャレンジを続ける西日本を代表する企業。今回は同社の取締役社長である窪田社長に現在の取り組みや中長期の戦略、住宅業界の未来に対してのお考えなどについてお聞きした。(聞き手:ノウフル編集長狩野)

 

checkbox「住宅業界生き残りに向けた”3本の矢戦略”」

 

ー御社の事業内容についてお伺いさせてください。

 

弊社は創立50年の会社で、本社の岡山を中心に東西南北、そして沖縄と展開をしております。棟数は年々増加しており、年間で注文住宅と分譲住宅を合わせて1,200棟ほど受注しております。2015年から会社のハンドリングを任され住宅販売にとどまらず事業を拡大してきました。グループ会社にはオハヨー乳業やカバヤ食品、専門学校などがあり、衣食住ならぬ学食住の「住」を担うグループの一社です。

 

 

-創業当時から理念経営をされてきたので今も理念経営を行っているのですね。今では住宅業界でも長い実績をお持ちですが、業界に課題認識などおありでしょうか。

 

 

まずは業界がシュリンクしている斜陽産業ということですね。人口減少の中で必然的に市場が小さくなっています。
そのような中で新築事業だけでは成長は困難だと感じています。ですから弊社では「3本の矢」を重点戦略として掲げています。3本の矢とは既存事業だけでなく、成長事業・新規事業を含めた弊社の戦略です。

 

 

既存事業は当然ながら新築戸建て住宅販売の拡大ですが、成長事業は不動産・リフォーム・エクステリア、新規事業は特建事業(ゼネコン)・FC事業・海外事業です。それぞれをバランスよく展開することで縮小する住宅業界でもさらなる飛躍が出来るように様々な事業展開を行っています。

 

また、それぞれのシナジーも重要と考えています。既存事業については人口が減っていますから、当然戦略としてエリア拡大が重要になります。ですから既存事業でエリア拡大を行いますが、新たに展開したエリアにて成長事業である不動産やリフォーム、エクステリアと事業を広げ根を張っていくという考え方ですね。

 

 

 

checkbox「既存事業の強化」

 

-ありがとうございます。既存事業においてエリアを決めるポイントはあるのでしょうか。

 

当然人口増加が見込めるエリアが重要です。しかし、それだけではありません。エリアを選ぶもう一つの条件として岡山中心に「社員が見えるエリア」を意識しています。弊社は社員満足を重視した経営を行っておりまして、飛び地すぎると社内結束力が低下すると考えています。ですから人口が多ければ都心部に展開すれば良いという単純な発想ではなく、西日本を中心に根を張って拡大をしています。

 

-事業を行う上で他に意識している点はありますか。

 

 

自社だけでなく、仲間や業界に良い影響を与えるということを意識しています。仲間という観点では後に触れますが、フランチャイズや提携といった形で地域の工務店と共に成長するという点に拘りを持って事業活動を行っております。

 

また、業界については「住宅業界を尊敬される業界」にするという想いを掲げています。残念ながら住宅業界は他の業界と比較して不人気業界に位置づけられます。そのような業界を変えたいという思いを持って事業活動を行っています。例えば、自治体と提携して植林などを行い環境への取り組みでSDGsへの関心が高い若年世代に対してのアピールを行っています。このような取り組みで若者が住宅業界に関心を持ち、業界の活性化に繋がればと考えています。

 

checkbox「成長事業の強化」

 

-成長事業の強化として様々な事業を行っておられます。多角化でおすすめのポイントはありますか。

 

率直に言えばリフォームです。周辺業界という観点では取り組みやすいですし、ストックという観点で価値があります。一方でリフォーム業界は人材育成の難易度が高いという側面もあり、一筋縄ではいきません。相応の建築知識が求められますし、時には住宅以上の提案力が求められます。弊社ではリフォーム事業を成長事業と位置付け、様々な教育カリキュラムを用意することでリフォーム事業の強化を行っています。

 

-やはりリフォーム事業においても人が大事ということですね。

 

checkbox「新規事業の強化」

 

-新規事業にはCLTがあるとお伺いしました。詳細について教えて下さい。

 

まず、CLT(Cross-Laminated-Timber)とは建材のひとつであり、ひき板を並べた層を板の方向が直交するように重ねて接着した大判パネルを指します。一般的には木造ゼネコンという形で世の中に浸透しています。昔、ある機会でヨーロッパに視察に行ったのですが、その時ヨーロッパでは木造でビルが建っているということが当たり前ということを目の当たりにしました。木造のゼネコンによって造られた街並みに美しさを感じ、これからは木造ゼネコンが当たり前の世界が来ると確信しました。幸運にも日本では木造ゼネコンが浸透しておらず、市場創造のチャンスと感じましたね。

 

 

新規事業という観点で言えば差別化が必要ですが、この差別化要素に「木造ゼネコン」が最適です。今では本拠地を中心にCLTを中心とした木造ゼネコンを目指し、拡大に成功しています。ただお伝えしたように自社だけが勝てばいいのかと言えばそうではありません。仲間と共に成長し、業界を良くするという想いでFC事業を展開しています。

 

-業界に対しての姿勢として「一社で勝つのではなく皆で勝つ」ということを意識されているのですね。海外事業についてもお伺いさせてください。

 

私は常々日本の在来軸組工法は技術力・品質共に高い水準にあると感じており、海外でも展開すべきと考えています。実際に弊社ではベトナムを筆頭に海外進出をしています。単に海外に輸出すればいいかと言えばそうではなく、大工の育成やCADの体制づくりが重要になります。実際に大工学校、CADセンターをベトナムに創設してきました。

 

国と国が交われば政治的な動きが必要です。正攻法では困難と判断し、日本の外務省に掛け合い、日本の技術で世界を良くするという思いに賛同して頂き、国と連携した展開に切り替えました。結果、様々なハードルがありながらも徐々に進出が可能になってきました。

 

-日本優良ビルダー普及協会(以下JGBA)という住宅会社同士の勉強会の取り組みもされているそうですね。

 

 

JGBA設立の背景は先程も伝えたように「仲間と成長する」ということに私が拘っているからです。仲間と学び合い、切磋琢磨することで、結果的に業界をよく出来るのではないかと考えJGBAを発足いたしました。単なる机上の空論ではなく、実践的なノウハウを共有することで皆で成長する。そのような組織になればいいと考えておりますが、おかげさまでそのような理念に賛同頂き、今では会員数が170社を超えています。

 

-JGBAでは失敗も公開するというスタンスとお伺いしました。

 

失敗を公開するということは珍しいことかもしれません。一方でそのような情報だからこそ、公開することでよりよい学びが得られると考えています。月二回のペースでセミナーや視察を行っているので非常に価値のある機会になっているのではないかと思います。また、お伝えしたようにこれからは新築だけで勝つことは難しくなります。ですからJGBAでは新築のノウハウにとどまらず、リフォームや相続など様々なテーマで分科会を行っています。リフォームで伸びている会社も理事として参画頂いていて、今年からリフォームの分科会も立ち上げましたので、より価値のある情報交換が出来るのではと考えています。

 

-最後に今後の事業展望について教えて下さい。

 

これからは3本の矢を軸に国内事業を強化しつつ、CLTオリジナル工法をブラッシュアップし、海外に展開します。今よりも個性のある木造建築会社を訴求していきます。数十年すれば日本の木造建築が当たり前のように海外で見られるようになることを目指します。

 

 

また、3本の矢の根底には「世界一社員満足度の高い木造建設会社」を目指したいという強い想いがあります。その想いを達成する為の3本の矢という位置づけであり、この考え方を常に念頭に事業を成長させていきます。単なる売上だけでなく、社員満足を目指しつつ、エリア拡大を行います。住宅不況の今だからこそ飛躍のチャンスと考えています。今年はうさぎ年ですが、弊社も今年を飛躍の一年と位置づけ、近い未来に西日本制覇を目指したいですね。

 

-成長においてあくまで社員満足が大前提ということですね。

 

 

そうですね。当然ながら顧客の幸せが重要ですが、その為には「社員幸福度」がさらに重要です。社員幸福度が高いほど顧客満足度が高いと確信しています。では会社がどういう会社かと言えば「朝起きたら行きたくなる会社」と定義しています。仕事は人生の大半を占めますから、その仕事を楽しめるかが人生の充足度を決定します。そのためには3本の矢で事業を拡大し、社員の給与を上げていき、売上至上主義ではなく社員満足ありきで展開していきたいですね。

 

ー本日はありがとうございました。

 

ライフデザイン・カバヤ

ライフデザイン・カバヤは安全性の高い構造、自由度の高い設計、そして充実した保証・アフターサポートが付いているトータルバランスに優れたハウスメーカー。 近年ではリフォームやゼネコン事業、海外事業など幅広い戦略を展開しており、西日本で最も勢いのある会社のひとつ。

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