編集を終えて
現在ノウフルの11月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援する、こどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境の好転までには至っていない。
実際にノウフル経由で経営のご相談を毎月20社以上いただき、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。
なお、私は延べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上を支援し、3000人以上の経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。
2030年ZEH化比率100%に向けて早期に準備すべし
今回は、「2030年ZEH化率100%に向けて早期に準備すべし」について触れてみたい。近年、住宅業界において多くの法改正などが起こっているが、その中でもカーボンニュートラル宣言における動きが今後活発化するであろう。
カーボンニュートラル宣言とは、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする取り組みである。これを受けて、建築物の省エネ強化が今後加速すると考えられる。この温室効果ガスの排出削減においては、ゼロエネルギー住宅(ZEH・ゼッチ)によって、高断熱・省エネ・創エネが実現さて、温室効果ガスの排出量削減につながるといったロジックで、取り組みが進められるものである。
具体的に言えば、新築住宅・非住宅において、2025年4月以降、現行の省エネ基準である、耐震等級4かつ1次エネルギー等級4への適合が義務付けられている。また、2030年以降に向けて省エネ基準のワンランク上のZEH水準の確保も求められており、このタイミングでは、必然的に全ての建築物がZEH水準になると考えられる。 その上で、現状のZEH率について見てみよう。
下の図は、大手ハウスメーカーと一般工務店のZEH率を示したものである。現段階において、大手ハウスメーカーにおいては60%の建築物が ZEH化されている。それが2025年には80%、そして2030年には100%と順当なペースで推移していくと予想される。
一方、一般工務店においては、現段階において10%程度しかZEH化されておらず、2030年に100%を目指した場合に、かなりの努力指標になることが必至である。このような中で、今後どのようなペースでZEH化率を高めていくべきなのか。次の図は、一般工務店が2030年度100%のZEH化率を目指すとして、毎年どの程度の水準でZEH化率を上げていけばよいのかをまとめた図になる。
図を見てみると、ハウスメーカーのZEH化率については、2025年に76・2%、2026年に80・5%、2027年に84・9%と、無理のない水準で推移している。一方で、一般工務店の場合は、2025年に28・9%、2026年に37%、2027年に47・5%と、ZEH化率を毎年約28%向上させる必要がある。
最後に
このように考えると、今このタイミングで早期にZEH化に向けて取り組みを行うことが必要になっていくであろう。また、ZEHについては、顧客の暮らしを豊かにすることと直結する取り組みである。単に法改正を乗り切るという考えではなく、より良い家づくりを行うという最上位の目的を押さえて取り組みを行わなければ、自社の存続は難しいであろう。
このような状況下において「茹でガエル」にならないためには常に危機感を持ち、ヒト・モノ・カネに次ぐ「情報」に対してアンテナを張ることが重要であり、一人でも多くの建築従事者の方々にとってノウフルが貴重な情報源になれば、それ以上のことはない。