checkbox編集を終えて

 

現在ノウフルの8月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援する、こどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境の好転までには至っていない。

 

実際にノウフル経由で経営のご相談を毎月20社以上いただき、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。

 

なお、私は延べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上を支援し、3000人以上の経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。

 

checkbox中古住宅市場について

 

今回は、住宅業界注目テーマを考察するシリーズにおいて、中古住宅市場について見ていきたい。中古住宅の流通量は、下の図にある通り、2015年を境に新築を上回っている。

 

 

この状況から、中古住宅市場は今後も大きな伸びしろがあると言えるだろう。また、下の図にあるように、中古が新築を上回る要因はさまざまである。

 

 

一つ目が、中古住宅市場の拡大である。その中で、まず中古住宅市場の認知度が上がっていることが挙げられる。また、中古住宅をカスタマイズする手法がニーズとして増加していることも挙げられる。あわせて、新築価格の高止まりを敬遠するユーザーの代替ニーズが増えていることも要因の一つだ。

 

二つ目が、新築供給戸数の減少である。その要因は大きく分けて二つあるが、一つ目はリーマンショック以降のプレイヤー数の激減が挙げられるだろう。また、首都圏における新築開発に適した用地の減少も要因として考えられる。これらを踏まえると、中古住宅市場は複合的な要因によって拡大してきた経緯があると言える。

 

また、下の図は、国土交通省が出している既存住宅販売量指数である。

 

 

2000年代前半から見てみると、中古住宅の流通販売量自体が年々増加していることが見て取れる。このような観点からも、中古住宅市場は総じて底堅く推移していくということが考えられる。さらに下の図にあるように、中古住宅の整備や拡大に関する施策もいろいろと用意されている。

 

 

住生活基本計画では、六つの目標において、既存住宅流通およびリフォームの市場規模を12兆円から14兆円に拡大する目標を掲げている。住宅履歴情報では、ストック住宅の流通活性化や維持保全の効率化、住生活サービスの質の向上などを目的に、住宅の生産情報や維持管理情報などの住宅履歴情報「いえかるて」の普及に努めている。

 

宅地建物取引業法に関しては、宅建業者が既存住宅の取引時において、専門家によるインスペクション(建物状況調査等)の活活用を促すことにより、消費者が安心して既存住宅の取引を行える市場環境を整備し、中古住宅流通市場の活性化を寄与することを目的としている。また、安心R住宅登録制度では、耐震性がありインスペクションが行われた住宅で、リフォームなどについて情報提供が行われる既存住宅を「安心R住宅」として、「不安」「汚い」「わからない」といった従来の中古住宅のマイナスイメージを払拭し、「住みたい」「買いたい」既存住宅を選択できる環境を整備している。

 

スムストックでは、一定の条件を満たした住宅を「スムストック」として、他の中古住宅とは差別化して販売している。そして、適合リノベーション住宅は、リノベーション協議会が定める優良なリノベーションの「統一規格」に則したリノベーションが施された既存住宅のことで、消費者は安心してリノベーション住宅を選ぶことができる。

 

このような取り組みを今後政府が行っていくことによって、中古住宅市場はさらに活性化していくと考えられる。

 

checkbox最後に

 

以上、今回は「住宅業界注目テーマ 中古住宅市場について考察する」というテーマで見てきた。

 

中古住宅市場は、整備や施策の拡大も進んでおり、今後も販売数が伸び続ける傾向にあるだろう。このような状況下で「茹でガエル」にならないためには、常に活用できる新しい情報にアンテナを張ることが重要であり、一人でも多くの建築従事者の方々にとってノウフルが貴重な情報源になればそれ以上のことはない。

 

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