編集を終えて
今回もノウフルを通して、売り上げを上げるためのノウハウを紹介してきた。ノウフルは、人・物・金に次ぐ第四の経営資源である情報を、平等にさまざまな住宅会社に伝えることができたらと思い執筆している。
また、それだけではなく、常々お伝えしているように、今後住宅業界においては集客大恐慌が到来する。そのような中で、ノウフルは、単なる販促ではなく、商品戦略・価格戦略・立地戦略を踏まえた広義のマーケティング、いわゆる「シン・マーケティング」の浸透を目的としている。今回もこの「シン・マーケティング」というテーマに沿って編集後記を記し、本号の締めくくりとしたい。
自力集客の重要性
今回は、住宅業界におけるリクルート帝国構想について見ていきたい。ノウフルでは、集客パターンを大きく「自力集客」と「他力集客」の2つに分けて説明している。下の図にある通り、まず自力集客とは、自社で反響を生み出す方法を指す。例えば、完成見学会やオーナー宅見学会・相談会・セミナーといった販路、さらに自社ホームページ・Web広告・SEO・SNSなどのチャネルがこれにあたる。
一方で、他力集客とは総合展示場やSUUMOカウンター・SUUMOネットといった、他社の媒体から反響を購入する方法だ。そして、この他力集客の王者と呼ばれるのがリクルートである。リクルートは、住宅業界においてもSUUMOネットやSUUMOカウンターを中心にシェアを拡大しており、今後はさらに業界全体がリクルートへの依存度を高めていくことが予想される。では、このまま依存が進んだ場合、どのような未来を迎えるのだろうか。
まずは近年注目を集めている、SUUMOカウンター集客から見てみよう。SUUMOカウンターは、注文住宅を検討する顧客に対し、第三者であるSUUMOが住宅会社を紹介するというビジネスモデルだ。しかし、紹介料は工事価格の約5%と非常に高額で、業界平均の広告費2%と比べると2倍以上にもなる。このコストを顧客見積もりに上乗せするケースもあり、ビジネス倫理上の問題は大きい。
さらに最近では、SUUMOだけでなく、住宅会社を紹介するYouTuberやインフルエンサーも同様のビジネスモデルを始めている。なぜなら、このビジネスモデルは参入障壁が低く、初期投資も不要で誰でも明日から始められるからだ。その結果、住宅会社紹介系YouTuberやインフルエンサーの中には、年収2億円を超える人も出てきている。
続いて、従来からあるSUUMOネットのようなポータルサイトについても触れておきたい。これらは資料請求をゴールに設計されたビジネスモデルで、ユーザーが一括でカタログ請求すると、その件数に応じて住宅会社からフィーを得る仕組みだ。しかし、住宅会社にとって本来のゴールは契約であり、そのためにはまず来場を促すことが重要だ。資料請求だけに頼っていては、契約にはつながらず、事業の持続性も危うい。
にもかかわらず、SUUMO側は資料請求件数を成果とみなし続けるため、住宅会社とポータル側の目的は根本的に一致しない。このズレは、他力集客に依存し続ける限り、解消されないだろう。
では、この先どうなるのか。下の図をご覧いただきたい。これは住宅以外の業界におけるリクルートの支配状況を示したものだ。例えば美容業界では、他力集客であるホットペッパービューティーへの依存度が極めて高く、自力集客の構造はほぼ消滅している。
同様の現象は、宿泊業界や結婚式場業界・飲食業界などでも進行中であり、このような状態になってしまうと、集客という重要な領域をリクルートが完全に支配することになり、自力集客では太刀打ちできない業界構造となってしまう。そうなれば、当然ながら、今まで以上にリクルートに依存せざるを得ず、集客はさらに厳しさを増すことになるだろう。
住宅業界は今まさに、他力集客に支配されるのか、自力集客で勝負できるのかという分岐点に立っている。このまま他力集客に頼り続ければ、厳しい状況は避けられないだろう。だからこそ今、他力集客に依存せず、自力集客を重視した取り組みが不可欠なのである。
最後に
以上、今回は、住宅業界の重要テーマとして「住宅業界はリクルート帝国に支配されるのか」について見てきた。
リクルートをはじめとした他力集客への依存が進む中で、住宅会社が安定した集客を実現するためには、自社で反響を生み出す仕組みづくりが欠かせない。日々の取り組みの中で自力集客力を高めることが、今後の競争環境を生き抜くための大きなポイントとなるだろう。一人でも多くの建築業界従事者の方々にとって、ノウフルが貴重な情報源になれば、それ以上のことはない。
引用