checkbox編集を終えて

 

現在ノウフルの12月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援する、こどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境の好転までには至っていない。

 

際にノウフル経由で経営のご相談を毎月20社以上いただき、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。中でも今回は、多くの住宅会社が採用している「多角化戦略」について触れてみたい。

 

なお、私は延べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上を支援し、3000人以上の経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。

 

checkbox戦略とビジネスモデルの位置関係

 

それでは、今回は住宅業界の多角化について、中古市場の観点で見ていきたい。下の図にある通り、新築市場と中古住宅流通市場を比較すると、新築市場は比較的成長スピードが速い側面がある。一方で、中古住宅流通市場においては市場成長スピードが遅い。しかしながら、着実に拡大しているという側面がある。

 

 

また、新築市場においては、リーマンショック時の新築マンション市場の急減などに見られるように、景況感の影響を受けやすいと言える。一方で、中古住宅流通市場においては、景況感の影響を受けにくいということが言えるのではなかろうか。

 

中古住宅流通市場における今までの成長ドライバーは大きく三つある。従前からの中古住宅に対する認知度の高まり、新築と比較して割安な中古住宅に対するニーズの増加、そして新築価格に連動する形で上昇・高止まりで推移する中古価格である。

 

 

さらに、今後の成長ドライバーとしては、住宅ストック数の増大や、堅調な需要の継続による価格下落リスクなどが挙げられるであろう。

 

 

また、今後の成長を支えていく要因としては、政府主導による空き家などの社会課題の解決方針がある。こちらは、住生活基本計画という国が定めた方針であるが、その中で、住宅ストック・産業の視点といったものがある。そこでは、住宅循環システムの構築や空き家の管理・利活用、住生活産業の発展などさまざまな目標が設定されている。

 

 

中でも、定量的な観点において、既存住宅流通およびリフォームの市場規模を12兆円から14兆円に拡大させるという高い目標が設定されている。

 

 

併せて、住宅性能に関する情報が明示された住宅の既存住宅流通に占める割合も高い目標が設定されている。このような側面を全て踏まえると、今後の予測値としては、左のグラフにあるように、中古住宅流通量は住宅ストック数や中古住宅ニーズの増大で堅調に推移するであろう。

 

 

checkbox最後に

 

以上、今回は「住宅業界の中古市場について多角化を考える」というテーマで見てきた。

 

今後、住宅業界は市場が大幅に縮小していく中で、「3本の矢」の逸話の通り、さまざまな事業で補強を行ってくことが住宅業界の王道とも言える戦略である。しかしながら、外部環境の変化は急に訪れるものでもなく、日々の現場業務に追われ、危機感を持った戦略展開ができない企業も多くいることも事実である。

 

このような状況下において「茹でガエル」にならないためには、常に危機感を持ち、ヒト・モノ・カネに次ぐ「情報」に対してアンテナを張ることが重要であり、一人でも多くの建築従事者の方々にとってノウフルが貴重な情報源になればそれ以上のことはない。

 

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