編集を終えて
今回もノウフルを通して、売り上げを上げるためのノウハウを紹介してきた。ノウフルは、人・物・金に次ぐ第四の経営資源である情報を、平等にさまざまな住宅会社に伝えることができたらと思い執筆している。
また、それだけではなく、常々お伝えしているように、今後住宅業界においては集客大恐慌が到来する。そのような中で、ノウフルは、単なる販促ではなく、商品戦略・価格戦略・立地戦略を踏まえた広義のマーケティング、いわゆる「シン・マーケティング」の浸透を目的としている。今回もこの「シン・マーケティング」というテーマに沿って編集後記を記し、本号の締めくくりとしたい。
ブランディングとは
まず、ブランディングとは何かについて述べていく。例えば下の図は、ある有名ブランドのロゴが入った財布と、そうでない財布を並べたものである。
あなたなら、それぞれいくらで買うだろうか。そして、その理由は何だろうか。おそらく、多くの人が左側の財布に高い値をつけるのではないだろうか。このように、素材や原価が変わらなくても金額が上がることを「価格プレミアム」と呼ぶ。
このような価格プレミアムを醸成することこそがブランディングであるが、「ブランディング」という言葉が独り歩きしているように思う。そもそもブランディングとは、住宅商品の価値を「価格」を分母として、ハード・ソフト・ブランドに分けた際の付加価値の一つである。
大手ハウスメーカーは、1960年代に台頭したが、当時の販促施策といえばテレビCMくらいしかなく、親会社の資本力によって大幅なコストを投じて放映した。その結果、ブランドが構築されたのである。
商品の中身自体は変わらないが、ブランドがあるため高額で契約になるというハウスメーカーでよく起きる現象は、このようなブランド戦略によるものである。しかし、ブランドという考え方においては、前提として自社のUSPに基づいていなければならない。
USPを軸にしたブランディング
このUSPを明確にし、顧客とのタッチポイントに自社のUSPを展開していくことこそがブランディングである。また、USPの核となるバリューメッセージは、下の図のように、USPに沿った内容であることが適切である。
例えば、家事動線がUSPの場合は「ママの味方、家族の味方」、コスパがUSPの場合は「完全フル装備の家」、性能がUSPの場合は「世界基準の高性能住宅」といったものになる。
一方で、下の図にあるように、バリューメッセージとして何を売っているのかよくわからない内容を訴求しているケースもある。
これらは全くUSPに関わりがなく、適切なブランディングとは言えない。これはブランディングを推進する外部コンサルの功罪であるケースが多い。多くのブランディングに関わるコンサルティング会社は、イメージ戦略に特化しており、サービス戦略としての側面を持たない。
例えば、イメージ戦略とサービス戦略を比較すると、イメージ戦略は売上にコミットせず、好かれるための印象づくりやかっこいい見せ方を行う。一方、サービス戦略は売上にコミットし、商品作りにつながり、買われるものとして売れる見せ方を行う。
こうした状況の中で、多くのブランディングに関わるコンサルティング会社は、売上にコミットすることを避け、イメージ戦略の取り組みに偏る。このような取り組みは、名前を付けた空箱を作るようなもので、無意味である。今後、ブランディングという観点を押さえるには、サービス戦略として売上に関わる側面を持つ必要がある。外部に委託する場合は、どれくらい売上にコミットし、どれくらい売上を保証をしてくれるのかを確認してからプロジェクトを進めるべきだ。
最後に
以上、今回は住宅業界の重要テーマとして「住宅業界におけるブランディングコンサルの功罪」について見てきた。
ブランディングは単なる見せ方やイメージ戦略ではなく、自社のUSPを明確にし、顧客との接点で一貫して展開することが不可欠である。本記事で示した内容を参考に、自社のUSPを意識したサービス戦略を構築することで、ブランドとして選ばれる住宅づくりにつなげることができるだろう。一人でも多くの建築業界従事者にとって、ノウフルが有益な情報源となれば、それ以上のことはない。
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