今回も前号に続き、ブランディングという考え方について見ていきたい。
.
では本日の目次を示そう。
ビルダー向けのブランディング戦略
前回は、ブランディングのテーマで、タマホームの事例を見てきた。タマホームは、以前お伝えした通り、圧倒的な認知度と好感度を獲得する戦略によって、10年間で全国制覇を成し遂げた。ただし、その背景には銀行からの借入を含めた膨大な資金力が前提としてあった。しかし、地方の工務店が、同様の資金を確保できるのかというと難しい現実があるため、ブランディングの手法が大きく変わる。今回は、「工務店向けのブランディング戦略」をテーマに詳しく見ていきたい。
まず、ブランディングとは下の図にある通り、商品戦略の一つである。価格を分母としたときの付加価値「ハード」「ソフト」に次ぐ構成要素である。
ハウスメーカーと工務店は、ハード面・ソフト面にほとんど差がないにもかかわらず、ブランド力に大差があるため提案負けするケースが多い。ブランディングが「認知度」と「好感度」で構成されているとの内容は、前回も述べた通りであるが、この認知度や好感度は、必ずしもテレビCMのようなマスメディアに頼らずとも獲得することも可能なのだ。その手段こそが、SNS戦略である。
SNSを活用した認知度戦略
たとえば「認知度」の面においては、下の図を見ていただきたい。これはインスタグラムとYouTubeのフォロワー数ランキングを示したものであるが、ハウスメーカーを抑え、地域のビルダーが上位にランクインしている。
このように、SNSによる認知効果は非常に大きく、フォロワー数を見るだけでも、それは明らかである。また、フォロワー数だけでなくYouTubeそのものの視聴回数を見ても、SNSは認知度戦略としてオールドメディアを上回る可能性を持っている。
こうした状況の中で、もう一つの要素である「好感度」は、どのように獲得していくべきだろうか。これについては、さまざまな好感度向上のための戦略が考えられる。例えば、下の図にあるインスタグラムのリール投稿では、工夫を凝らした動画が比較的高く評価されている。
SNSでは、「いいね」などのリアクションが多い投稿がバズるとのメカニズムがあるが、この「いいね」を押す行動自体が感情の動きを伴うため、好感度が高まればバズるという結果となり、認知度の向上にもつながる一挙両得の構図が成り立つ。極端な例を挙げれば、好感度を得られるのであれば、投稿内容が住宅と直接関係していなくても、ブランディング戦略としては成立するのだ。実際、下の図にある住宅会社の投稿は、住宅に直接関係のない内容ながら好感度が非常に高く、結果としてバズり、認知度の向上につながっている事例である。
このように、SNSを活用したブランディングは、まさにビルダーに残された下克上戦略である。そして、SNSの中でも、まだ活用の余地が大きい最後の砦がTikTokだ。
TikTokは一般に若年層向けのSNSと考えられているが、実際のユーザーの平均年齢は34歳と比較的高く、一次取得層に近い。
実際、下の図にあるように、新築戸建て購入者の平均年齢は35.2歳、新築マンションは34.8歳であり、TikTokユーザー層との親和性が高いことが分かる。
ログインもしくは会員登録の上ご覧ください。