外観デザイン強化で1棟単価150万円向上6億円純増を実現した岐阜県Y社

今回は、外観デザインの強化によって1棟単価を150万円向上させ、6億円の当期利益純増を実現した、岐阜県Y社の事例についてご紹介します。

Y社が、岐阜県を中心に分譲住宅を販売している会社です。ローコストの建売を住宅中心として展開しており、近年では、パワービルダーと競り合うような価格帯、デザインに注力した展開を行っています。

今回は、Y社がどのようにして外観デザインの強化で1棟単価を150万円向上させ、6億円の当期利益純増を実現したのかについて見ていきます。

では本日の目次をお示しいたします。

当初の課題

下図はY社が抱えていた課題と目標、ギャップを埋めるための対策を記した図です。順に説明します。

Y社には、主に二つの課題がありました。一つは、性能を中心として、他社との差別化が非常に困難になってきているという点です。住宅業界では、主な差別化要因として土地・間取り・性能・デザイン・ブランド・価格があります。

この中で、土地・間取り・性能においては差別化が困難になっているのが現状です。土地に関しては、パワービルダーが大量に購入して高値で買い取ります。間取りや性能については、企業努力によって各社差分が見られなくなっています。Y社も例外ではなく、土地や間取り、性能での他社との差別化に限界を感じていました。

そして、二つ目の課題は、パワービルダーの大型仕入れにより仕入れ自体が困難になっている点です。建売分譲をメインとしているY社にとって、そもそも仕入れる土地がないということは非常に致命的な課題でした。このような背景から、Y社は「商品デザイン力を高めることで他社と差別化する」ことに解決策を見いだしました。

ここから話を進める前に押さえるべきポイントがあります。それは「分譲業界の誤解」と言われる考え方です。下の図に示している通り、分譲業界では「物件は場所と値段で売れる」という表現がよくされます。

しかしながら、場所と値段で売れる時代はすでに終わり、現在はそれだけで勝負をすることはできません。場所と値段が良くても売れない、こういった事態をしっかりと受け入れることが重要です。

この前提をきちんと踏まえていないために、図のような「負の連鎖」に陥っている住宅会社が多く見受けられます。

例えば、「場所と値段で売る」といった考えで仕入れと販売をしてしまうと、まず最初に「売れ残り」に陥ります。残った仕入れ物件は、資産回転率の発想のもとで価値が値減りしていきます。値減りするので、仕方なく値引きしてでも売るしかなくなってしまいます。結果、利益率が下がりますし、現場の社員は値引き合戦で疲弊してしまいます。

ではどうすればいいのでしょうか。

繰り返しになりますが、物件の価値は下の図の方程式で評価されます。付加価値としての「土地」、「間取り」「性能」「デザイン」「ブランド」があり、それらを掛け合わせて価格で割ると物件の価値になります。

例えば、付加価値が10、価格が5であれば価値は2となり、付加価値が10、価格が10であれば価値は1となります。この中で土地に関しては、パワービルダーが強気の仕入れを行っており、土地で差別化を行うことは非常に難しくなりつつあります。また、中長期で見れば土地自体が枯渇するので、そもそも差別化要素としては限界があることはお分かりかと思います。

では、間取りはどうでしょうか。この10年ほどで、さまざまな間取りのコンセプト住宅が誕生しました。ママ目線の設計から始まり、最近ではカリフォルニアスタイルやスキップフロアなど、多彩な間取りのコンセプト住宅が続々と出てきています。今後も新たなコンセプトが生み出されると良いのですが、この辺りでコンセプト住宅は一巡したと見るのが賢明ではないでしょうか。

そして性能においても、ほとんどの企業が高いレベルまで対応をしているので、差別化を行うのは非常に困難と言えます。一方で、残されたデザインとブランドにおいて、特に「外観デザイン」という領域においては、顧客のニーズも高く、取り組みのインパクトの面から見ても伸びしろがあると言えます。

では、どのようにして外観デザインの領域を強化していくべきなのでしょうか。ここからは、Y社の実際の取り組みについて見ていきます。

Y社の取り組み

Y社では、下の図のような流れでプランニングを行っています。まず土地を仕入れ、販売価格と仕様を決定します。そして、外観デザインとプランニングを行い、平面図と立面図を作成して、図面を完成させます。

Y社では、土地の仕入れと販売価格・仕様の決定については社内領域で展開しており、外観デザイン・プランニング以降は外注領域として展開していました。そのため、この社内領域と外注領域を共に強化する取り組みを始めました。

まず社内領域においては、自社の外観デザインにおける課題に合わせた研修パッケージを制作しました。そして、下の図のような勉強会を、社外の講師を交えて社内設計担当向けに定期的に行う取り組みを始めました。