兵庫県の播磨地域を中心に建設・不動産事業を手掛けてきた勝美住宅。 注文住宅をメインに地域顧客の家づくり及び住宅取得に関するサポートを行っている。 今回は同社の代表である、渡辺 喜夫氏(代表取締役社長)に 不動産での取り組みや販売における考え方、経営のモットーなどについてお聞きした。(聞き手:ノウフル編集長狩野)
ー御社の概要をご説明願います。
当社は建設および不動産を主軸とする企業です。年間棟数は300〜400棟で、サービスは住宅取得に対するサポートとして仲介・売買・請負・販売を全て行っています。また、グループ会社を含めると5社運営しており、KHCという純粋持株会社で数年前に上場をしております。
事業会社5社はマルチブランド戦略という戦略のもと、それぞれのUSPによってこのエリアにおいてのシェアを拡大することを目的としました。集客段階から差別化するために法人ごとにブランド化したと考えています。
また、不動産ビジネスを行っています。これは建築条件付き宅地で土地を販売していることから、複数社で売る方が当然、土地の改善率も高くなることを理由に、マルチブランド戦略としています。
ーちなみに、どういったUSPで分類されているのですか。
簡単に言うと、子育て・断熱・耐震・デザインに分けています。また、グループの共通の建築部門であるLaboをマーケティングフィルターのような形とし、さらに建物にこだわるお客様向けの建築部門も一つのブランドとして捉えております。
ーありがとうございます。組織運営上の狙いのようなところはあるのでしょうか。
組織運営上は、やはり「グループ会社・グループ経営」を意識していまして、KHCグループとして経営の効率化を図っています。まずKHCは持株会社ですが、経理・総務・計画のような管理系の部分はKHCのみ、その他は基本、営業のみとなります。建築と設計はLaboでグループ内取引を行うことが多くなっています。用地の仕入れは、この5ブランドのうち勝美住宅のみで行っています。
これは、勝美住宅が創業45年と古い老舗の企業となりますから、情報が一番集約しやすいとのことで、勝美住宅が用地の仕入れを行い、他の会社は共同で販売しています。マーケティングにおいても、情報収集には知名度の高い企業が一番ということで勝見住宅の中にあり、他の会社はマーケティング後にグループ内で依頼しているようなやり方になります。
ー昇格・降格・独立みたいなところも影響しているのですか。
はい。やはり会社が研修も含めた7社ありますから、7人の社長を内部昇格で育てることも可能で、将来の候補という意味で意識付けさせて成長させることもできると考えています。
ーそれが社内独立のような流出も防ぐというわけですよね。社長自身が建築士である点も踏まえ、業界の課題認識について教えてください。
業界的には建築技術者の社会的地位が非常に低いと意識していました。技術者が営業的センスを身につければ、報酬面でももっと優位に立てると考えています。私も建築技術者出身でありながら、ある営業に揉まれて成長してきましたから、そのような人間を育てていきたいと考えています。
ー建築士・建築技術者は研究者のような位置づけだとよく言われますが、やはり対応が必要ですね。
建築も、公共建築やビルなど色々ありますが、住宅は、やはり対話がなければ家づくりができないと考えています。ですから、いくら優秀な研修知識を持っていたとしても、やはりお客様の要望を引き出す「話術」も必要です。それが私の求めている建築技術者像になります。
ー社長が目指されている領域とは、例えばどのようなところでしょうか。
分かりやすく言うと料理人ですね。料理人が料理に合ったお酒を提供する。そうなると、ソムリエはかなわない存在であると考えています。そういったものを住宅の建築という部分で目指しています。
ーそのような社会的地位の向上に向けて、どのような取り組みをしているのですか。
「技術者の会」を、この地域にまたがり関西圏のエリアで定期的に開催し、情報交換を行っています。その中で、私が建築業者の社会的地位を高めたいとの内容を発信しています。そこで共感できるような方が集まりながら情報交換をする取り組みを2、3ヶ月に一度行っています。
ー他にも業界に対する課題認識はお持ちですか。
業界に対する課題としては、会社の成長には利潤の追求も重要ですが、やはり理念がなければいけないと考えています。経営者が住宅ビジネスをやりながら住宅に興味がない場合が多くあります。利潤追求の前に、まず理念であり、住宅を供給して顧客に喜んでもらうとの気持ちがなければいけないと感じています。
例えば、見学に来られた方が建物に興味がなく、原価や販売価格がいくらかといったお金の話ばかりになりがちなのも事実ですので、そこは変えていかなければいけないと感じています。
ー建築に対する思いの部分で、KHCグループの中ではどのような取り組みをされているのですか。
当社には建築士が40人ほどいます。新人もベテランも関係なく年間15件ほどモデルハウスを建設していますが、これは自由参加のコンペによって建築士の採用を決めています。寿司業界で言うとシャリ炊き3年ですね。握り8年などと言われた時代も遠い昔のことだと考えていますので、チャンスを与える意味で、参加したい人は全員参加できるコンペ方式で決定します。
その他に、デザインコンテストを年間2回行っています。これもイントラで全社員が投票する形にしています。一部の人間が決めるのではなくて、より消費者に近い人間も含めての決め方です。
また、図面チェックを制度化し、一次チェック・2次チェックと繰り返すことによって、ダイレクトに実践の現場で教育ができるシステムを作っています。当社は現場監督も設計を経験してきた人間が行っていまして、当社の現場監督の図面を読み取る力は他社にも負けません。
ー社長の中で、建築のデザインについて心がけている点はありますか。
一般的なデザインでいうと、見栄えがデザインであると言われますが、私はバランスであると言っています。機能性あるいはコスト、見た目、全てのバランスだと考えています。住宅は、絵画や陶芸と違って作品ではない。実際にそこに住む人のための建築物ですから、そのバランスが重要になってきます。私はデザインだけを追求して、使い勝手の悪い住宅を作った人間には厳しく指導もしています。
ー社内の取り組みをかなり徹底されているようですが、社外においても色々な取り組みをされていると伺いました。どのようなことをされているのですか。
関西の住宅会社4社でビルダーフォーラムという住宅会社が取り組みを共有し合う組織を立ち上げました。この交流会が一巡しましたので、さらに広げようと北海道から沖縄まで28社が参加する年4回の見学会を開いています。経営者の懇話会のような位置づけもあり、経営者同士が仲良くなって、個別で見学会や交流などを行うといったことが自然に発生していきました。どこのグループにも負けない交流会であると感じています。
また、システム会社やコンサル会社も共有します。各会社が実際どうなのか、使っている側に直接聞くことができるメリットがあります。
ーエリアが違う請負を依頼し合うこともあるとお聞きしました。
そうですね。当然、施工管理あるいはその後のアフターフォローの点でいくと、どうしても事業エリアを拡大していきがちですが、中には自分たちの地域を飛び越えた請負を締結できるような情報があったときに、このグループの中の会社に声をかけて紹介するようなこともございます。
ー素晴らしい取り組みですね。最後に、今後の事業展望についてお伺いしてもよろしいですか。
私は、従業員とこの会社を、最後まで終身雇用できるような企業にしたいと考えています。従業員の成長と共に企業も発展していきたいとの考えです。現段階では戸建て住宅のみでは厳しい状況ですが、土壌が違うと芽が育たないのも事実ですから、建設・不動産を強みに、そこから発生するビジネス、またKHCが純粋持株会社である点を活かしたM&Aによる他事業への展開も考えております。
ー「60歳を超えてもできる仕事」を軸に拡大されているのですね。
はい。60歳を超えてもできる仕事とのことで、介護リフォーム事業を開始しました。また、女性の活躍できるような場として、もう10年以上前にマーケティングも作り、雇用の維持の目的で事業も見据えております。
ー組織や従業員の働きやすさから、戦略を構築されているのですね。本日はありがとうございました。
兵庫県を中心に兵庫県の播磨地域を中心に建設・不動産事業を手掛けてきた勝美住宅。注文住宅をメインに地域顧客の家づくり及び 住宅取得に関するサポートを行っている。