多くの建築会社において営業力は非常に重要であろう。 中でも案件が減少している状況において 案件のマネジメントは近年、重要性を増している。 今回は住宅会社向けに営業研修や営業案件のマネジメント支援を 行っている株式会社インプライの官谷浩志氏に、 同社のサービス内容や取り組みについてお伺いした。 今後の営業戦略に課題をお感じの会社は ぜひこの記事を参考に営業力について考える機会にしてほしい。(聞き手:ノウフル編集部)

 

ーまず御社の事業概要を教えてください。

 

弊社は営業工務店向けの営業コンサルとして2008年に立ち上げ、主に住宅営業に特化した指導を行っています。これまで800人程度の営業個人に対して指導をしてきまして、累積のご支援社数は50社程度です。

 

 

サポートの内容は、追客中の案件の商談をどのように進めるのがベストかアドバイスを行う「レビュー研修」が中心です。この研修は、実際に追客中の案件をアドバイスしますから、アドバイスがそのまま受注に直結しやすいメリットがあります。コロナ期間中は動けない部分をZoomで対応し、累積のレビュー件数は1万5000件ほどとなりました。この中で、年間の受注数が約50棟から約100棟へと業績が2倍以上に向上した工務店もあり、平均で110〜200%の成果が1年ほどで出る会社が多いです。

 

各社の営業活動を正すことで、1・5〜2倍の業績を実現することは十分可能であると考えています。私は前職でも住宅営業のマネジメントを行っていたので、業界経験としては28年目になります。

 

ーもとは、営業マンとして活躍されていたのですか。

 

はい、私は27歳の頃に住宅営業マンになりました。それまでは、中学を卒業後にいわゆるフリーターや無職で自堕落に過ごしていました。18歳の頃、宮大工に憧れ、大工を志した時期もありましたが、その道も4年ほどで諦めてしまいました。当時はバブル景気であったこともあり、日当の低い中で仕事を続けることが難しかったのです。上手くいかずに水商売の世界に入ってしまうなど順調ではありませんでしたが、27歳にしてようやくローコスト系の住宅会社に就職をし、そこから営業マンとしての日々が始まりました。

 

 

当時は営業をやったことがなかったものの、最初は見よう見まねで必死に家を売りました。新規のお客様は全て自分が接客するなど朝から晩まで働くような忙しさが続きましたが、真面目に取り組んでいるうちに徐々に営業のコツを掴んできたのです。数とやる気でひたすら勝負していたところ、あっという間に年間で56棟の物件を売ることができるようになりました。会社も、私が入ったときには本当にちっぽけな会社でしたが、5年経つと全体で450〜500棟の業績を持つまでに大きくなり、私はその会社と一緒に成長してきたと感じていました。

 

その後に33歳で転職をして、新たな住宅会社では平社員から2年半で副社長へと昇格しました。社員数や営業人数は変えず、70棟ほどの業績が240棟まで急成長し、より生産性の高い成果をあげることができました。

 

ー素晴らしい実績ですね。そんな官谷さんから見る住宅業界の営業マンに対する課題はどのように考えていますか。

 

やはり営業力が足りないと考えています。ここ20年ぐらいは大きな地震が何度かあり、住宅業界も性能重視へとシフトチェンジしてきました。耐震性の高い家は価格もどんどん上がり、不景気な世の中では購入する顧客もかなり限られてきています。住宅の性能やウェブ・広告の活用だけで営業する者の技術が上がらなければ、その分コストばかりがかかりますよね。長く勤めているベテランが営業マンとしての高いスキルを持っているわけでもなく、ひたすら商品の良さだけでしのぐように家を売るのにも限界があるのです。性能が上がり続けると、もはや工務店の差別化は難しくなってきますので、最終的には個人の営業力が鍵になってくるのではないでしょうか。

 

 

ーまさに営業力で差別化するという発想は重要ですね。業界課題を改善すべくさまざまなサービスを展開されてますが、どういった内容なのでしょうか。

 

実際に追客している実案件に対し、どうやって商談を進めるべきかをアドバイスする「レビュー研修」を中心に、営業力をテーマにした営業研修を行っています。最近は、勉強にはなるものの実戦に活かせるコンテンツが少ないと感じている工務店が多く、実際に進めている案件への直接的なアドバイス・指導が求められるケースが多いです。

 

実案件に特化した形でアドバイスをすると、その工務店が抱えている課題も一緒に見えてきます。既存の営業スタイルを見ていると、組織の体制や人材育成の様子までもが浮き彫りになるのです。経験豊富な先輩からOJTを受けられる余裕がなかったり、若手の人が真似できないタイプの営業手法で売っていたりと問題はさまざまですが、部下を指導できるだけのプレーヤーがいなければ、全体にまとまりがなく受注が伸びにくい傾向にあるでしょう。

 

 

そういった営業と内部の様子などについても着目する必要があります。あとは、社内で使用しているツールや来場時のアンケートフォームなどに関しても、受注が上がらない原因となる部分が見られた際にはアドバイスをしています。

 

また、営業コンサルの指導を受けることがコスト的に難しい工務店も多いため、レビュー研修のように、実際の案件に関して自動でアドバイスをくれるアプリ「LASHINBAN 4×4(ラシンバンフォーバイフォー)」を開発しました。商談の結果を入力すると、アプリが自動的に足りていない部分や次の解決策などをアドバイスしてくれます。

 

ー最後に、今後の展望について簡単に教えていただけますか。

 

住宅営業業界もゆくゆくは無人化していく可能性がありますが、まだまだ営業力が必要な期間は続くと考えています。外部のコンサルタントが直接指導する機会が少なくなってくる時には、先ほどのアプリで自動アドバイスしてくれるような営業力改善の手段が必要になると思うので、アプリのサービス拡大を目指しています。

 

 

あとは、社員育成の仕組みについてです。2009年に社員教育の仕組みでグッドデザイン賞を受賞した「一飯教育(いっぱんきょういく)」というものがあります。家を建てっぱなしにするのではなくて、お客様の家でご飯をご馳走してもらえるぐらいの信頼関係を築けるような教育の仕組みになります。この一飯教育を広げてオーナーとの関わり方、ひいては工務店全体の社風をより風通しの良いものにしていけたら良いと考えています。

 

また、現在はコロナも収まり世の中が普通の状態に戻ってきましたので、パワービルダーに営業マンや現場監督を引き抜かれてしまっている工務店や、新規来場者数が減って受注が先細っている工務店の力になりたいとも考えています。紹介受注をもらえるような親しい関係性で住宅を一軒一軒売っていくような、その地域に根付いた工務店の良さが発揮できる企業風土と営業力を育てていきたいです。

 

ー素晴らしい取り組みですね。ありがとうございました。

 

株式会社インプライ


株式会社インプライは、工務店・住宅ビルダー様向け営業指導・ブランディングを展開している。11000件以上の案件実績に基づいた実践的メソッドで、工務店の受注棟数向上、リードタイム改善を実現する。

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