アルプスピアホームは、長野県の松本・長野・諏訪・上田で新築注文住宅を扱う 工務店である。住宅業界の常識を覆し、無駄な経費を削減して、 高品質で標準仕様がフル装備の注文住宅を手の届く価格で提供している。 今回は同社の代表である、石田 正也氏(代表取締役)に事業での取り組みや 販売における考え方、経営のモットーなどについてお聞きした。(聞き手:ノウフル編集長狩野)

 

 

ーまずは企業概要をお伺いさせてください。

 

弊社は戸建て事業(新築戸建て)と不動産事業(不動産販売、建売住宅、中古再販)を展開している企業です。年間売り上げは約80億円ですが、内訳は60億円が戸建で、不動産が15億円、リフォーム他が5億円となります。また、現在の年間完工棟数は250棟~260棟で、社員数は145名、長野県のみで展開しています。

 

ー御社の特徴を教えてください。

 

4つの注文住宅ブランドと不動産ブランド、家具雑貨ブランドという、6つのマルチブランドを展開しています。メインはフル装備住宅でショールーム展開をしているアルプスピアホームです。ショールームの強みは、フル装備・標準装備しているものを全て見ることで、お客様が納得して家作りを進められる点ですね。フル装備住宅に関しては、未来基準をフル装備・標準装備とする形で、太陽光や制振装置、設備15年保証などを標準としております。どうすればオーナーが豊かに暮らせるかを逆算して、プロの目から必要な装備を設定しています。

 

 

ーさまざまな取り組みをされておられるのですね。設備15年保証の「15」の数字はどういったところから来ているのですか。

 

家電設備の火災保険は10年が限界なのですが、お客様の多くはお子様が小学校に上がるタイミングで家作りをされます。そこから10年とすると、お子様は大学生になってお金がかかる時期なんです。そんな折に家の修理や故障でお金の心配をしないようにと保険会社にかなり無理を言って15年の保証を作ってもらいました。

 

ーなるほど。顧客視点を徹底されていますね。アフターフォローについては、どういった定期点検を徹底されているのですか。

 

弊社では約3千件のオーナーがおり、100%定期点検を行っています。ハウスメーカーやビルダーの現状を見ると、しっかりアフター対応されているケースが少ないと感じており、1ヶ月点検から30年点検まで無償で行うこととしました。その中でもお客様との関係性を最重視しており、例えば20年点検の際には、カスタマーサービスのスタッフがお花とカタログギフトを持って、「おうちの成人式」として点検訪問とお祝いをしています。

 

 

ーそれはお客様も喜ばれますね。カスタマー部門は石田社長も関わっていらっしゃるのですか。

 

そうですね。住宅会社は一般的にカスタマーサポートにはスポットが当たらないイメージがありました。しかし、住宅の引き渡しがゴールではなく、お客様との一生涯のお付き合いを目指して、私が専務の頃、15年ほど前にカスタマーサービスを立ち上げました。開始当初はクレームの記入もうまくできなかったのですが、今では100%徹底してどんな些細なことも必ず顧客管理システムに書き込み、いつでも全社員が共有できるようにしています。

 

営業や工事の担当者が起こした課題を引き受けるというネガティブな意識が当初はありましたが、根気強くCSスタッフと向き合い続けた結果、ミスをした時の最後の砦がカスタマー部門であると皆が考えてくれるようになりました。CSスタッフへは「点検やメンテナンスがあなたたちの仕事ではない、オーナー様の満足度を上げることがあなたたちの仕事だ」と伝え続け、月1回のオーナーイベントも全てカスタマー部門が企画から運営まで行うこととしています。

 

弊社は受注の約5割が口コミ紹介ですが、お客様に「ご紹介ください!」というような案内は一切行っておりません。珍しいケースですが、紹介する側はリスクも負うので、キャンペーンで紹介をお願いするのは違うのではと考えています。なので、お客様の自発的な紹介だけで5割ほどとなります。

 

 

ーありがとうございます。組織戦略の観点でも、理念経営をされておられるという話を伺いました。具体的に教えていただけますか。

 

どこの会社にも社訓や理念がありますが、住宅業界に限らず飾りになっている企業が多いと感じています。本来の企業の存在意義は「理念の実現」のはずですが、それがおざなりになっている企業が多いのではないでしょうか。私は三代目の代表になりますが、創業社長、二代目社長ともに「同族経営にはしない」と話していました。理念と一族を守るという2つの目的が同時にあると、スタッフが混乱してしまいます。私も企業は公器、公の器であるべきだと考えております。ですから、アルプスピアホームは「働くスタッフみんなの会社」にしようと決めています。

 

アルプスピアの名前も、「長野県のアルプスの裾野に、家作りが好きな仲間たちのユートピアを作ろう」という思いが由来です。そのような背景がある理念を大切にし、会社は私の所有物ではありませんので、私は代表としての役割を全うし、守るべき優先順位は常にアルプスピアホームが第一であると考えています。実際に、弊社の株は役員持ち株会と従業員持ち株会で6割を持ってもらい、私の進退を社員に任せています。ですから、私に問題があれば皆が止めるようにと伝えています。また、決算書は6月の全体会議のときに私の報酬額を含めスタッフに全て公開し、社員が頑張った結果だと伝えています。

 

また、決算賞与は年に1回出していますが、営業利益の20%を原資に定めました。他の経営者から見ればとんでもないことかもしれませんが、良い成果も悪い結果も全員で共有する方針としています。私が代表になった6年前に、任期は10年であることを宣言しています。期限を定めると今やらなければならないことが明確になりました。

 

 

ーこのような取り組みはビルダーフォーラムで学ばれ実践されていると伺いました。

 

15年ほど前にビルダーフォーラムへ参加した頃は、長野県で100棟前後の規模を持っていました。自分たちでは高い成果であると感じていたものが、全国のビルダーフォーラムでトップビルダーを視察して勉強させてもらったことをきっかけに、まさに井の中の蛙であることを痛感したのです。はるか先を行く成果を目にして、成長のきっかけを与えてくれたのがビルダーフォーラムです。

 

15年前はがむしゃらに進んでいましたが、壁にぶつかることで戦略や仕組みづくりの重要性を理解しました。視察で勉強になることも多くありますが、弊社が視察対象となり、ビルダーフォーラム会員に視察に来ていただくこともあります。ビルダーフォーラムで自分たちのやってきたことを伝える役割も持つことで、見る方も受け入れる方も成長が促されているのではないかと感じています。

 

ービルダーフォーラムは素晴らしい取り組みですね。来年に御社を対象とした視察があるということで非常に楽しみです。最後に今後の事業展望をお伺いできますか。

 

 

はい。長野県の住宅の市場は年間約8千棟ありますが、2030年には5千棟を切る可能性もあると言われています。今から4割近くが減ってしまうため、3年前に土地情報を扱う土地情報館ブランドを独立させて、不動産事業も一つの柱としました。当時は不動産の売上がほぼゼロに近かったのですが、この3年で15億円にまで成長しました。

 

ですが、まだ売上の8割弱が戸建てに依存していますので、3本目の柱としてオーナーとのコミュニティ事業をスタートしました。弊社の強みとして定期点検メンテナンスの取り組みがありますが、3000棟で、一家族3人から5人家族だとすると9千〜1万5千人ほどのオーナーとつながっている点に着目して作られたのがAPH経済圏です。

 

住宅を引き渡した後は、オーナーと会う機会が限られるため、距離を縮めたいとの考えで、オーナーとのやりとりをするアプリをIT会社とコラボしながら制作しています。ホームページにはオーナー専用サイトがありますが、閲覧数が少なく、イベントやキャンペーンの告知が知られにくいとの課題がありました。アプリでは、メンテナンス対応だけでなくコミュニティ機能も含めて、我々もアイデアを出しながら共同開発という形で進めています。

 

 

このアプリは今年の4月からメンテナンス機能が始動しており、点検時期を伝える往復はがきのやりとりがデジタルへと移行しました。アプリを使うことによって、あらかじめ弊社が点検できる日だけ登録し、その中からオーナーに希望日を入力してもらいます。これだけでカスタマー業務がかなり効率化されました。

 

ただ、メンテナンスアプリがメインではなく、そのアプリを使ってオーナー同士の双方向のコミュニケーションが取れるようにしたいと考えています。例えば、あるオーナーが居酒屋をやるとなった際に、そのアプリ内で他のオーナーに向けて発信・キャンペーン告知できるようなコミュニティですね。そういった形で双方向にコミュニケーションがとれると、お互いに恩恵を生み出せるようなアプリとなり、経済圏にもなるのではないでしょうか。

 

また、不動産のメルカリではないですが、このコミュニティ内で不動産業者が絡まずに情報の流通ができないかと考えています。これにはもう一つの狙いがあり、実現すれば1万3000〜5000組のオーナーの不動産プラットフォームが作れることになるので、いい物件を自社でも買い取れるメリットがあります。

 

 

今やSNSやインターネットは匿名性が高いため、安全性が低いとされています。全世界とつながることができる点は強みですが、裏を返すとそれが弱みにもなっているのではないでしょうか。このアプリの経済圏には長野県内のみの1万5千人のオーナーが集まりますが、住所、名前や家族構成、年齢に勤め先までの情報を我々は把握しています。我々がそれらを夜警のように秩序管理することによって、安全性が高く、オーナーの皆様が安心してさまざまな情報を交換できる、恩恵を受けられる経済圏へと成長させることを目指しています。

 

特に、弊社では建築を勉強してきたスタッフは全体の3〜4割ほどで、ほとんどが建築への興味よりもこの会社に興味をもって入社しました。そういったスタッフも活躍できるステージを、制作しているコミュニティアプリや経済圏を使って展開していきたく、それが3本目の柱になるとも考えています。

 

私の任期もあと4年半で、その間にこれらの基礎を作るべく走り始めています。来年にはコミュニティの機能が一部開放される予定ですので、次世代につなげるべく実りのある木を残していけるように努めていきます。

 

ー素晴らしい取り組みですね。本日はありがとうございました。

 

株式会社アルプスピアホーム


アルプスピアホームは、長野県の松本・長野・諏訪・上田で新築注文住宅を扱う新築注文住宅・工務店である。住宅業界の常識を覆した無駄な経費を削減し、高品質で標準仕様がフル装備の注文住宅を手の届く価格で提供している。

この記事が気に入ったら
いいね!をお願いします

最新情報をお届けします

フォローすると最新情報がTwitterで確認できます