編集を終えて
現在ノウフルの6月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援する、こどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境の好転までには至っていない。
実際にノウフル経由で経営のご相談を毎月20社以上いただき、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。
なお、私は延べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上を支援し、3000人以上の経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。
オフグリットハウスとは?
今回は、住宅業界注目テーマを考察するとの題目のもと、オフグリッドハウスについて触れていく。
オフグリッドハウスとは、別名トレーラーハウスとも呼ばれるが、端的に言えば、外部電力に頼らない100%自給自足型の住宅を指す。下の図をご覧いただきたい。
オフグリッドハウスの特徴は大きく分けて二つある。ZEHにより暮らしの消費電力を抑えること、そして太陽光発電と蓄電池でエネルギーをつくることである。
これらの要素を災害時に有効活用できる点では、地震を中心として災害が多い日本においては、非常に需要がある住宅形態だと言える。このオフグリッドハウスは、下の図にあるように、モバイル型のものが存在する。
モバイル型については、牽引することにより、自由に移動することができるという特徴がある。このモバイル型オフグリッドハウスの中でも一際注目を集めているのが、「WHOLE EARTH CUBE(ホールアースキューブ)」というブランドである。
これは東北のエネルギー会社「北良」が開発し、ブランド化したものである。3・11(東日本大震災)にて、当時電気がなく、在宅治療の患者を助けられなかった経験を踏まえて、10年をかけて開発された。このWHOLE EARTH CUBEのメリットは大きく分けて二つある。一つ目が、いざというときに家ごと避難することができることで、二つ目が、電気だけでなく水まで自給自足ができることである。
具体的に言えば、生活用水を浄化することで、1家族1日分の排水を1日で浄化することができる。また、太陽光パネルで発電し、バックアップとしてLPガス発電機を組み込んでいる。このような取り組みによって、災害時に有効活用できるという魅力がある。
このWHOLE EARTH CUBEは、2022年に都内大学構内で実験を開始したことを皮切りに、2023年には離島で試験利用を開始した。
2024年に販売が開始されれば、2030年には、季節に合わせて住む場所を選び、場所に縛られない生活ができるようになるかもしれない。そういった観点で見れば、住宅業界において、このオフグリッドハウスというマーケットは非常に伸びしろがあると言えるだろう。
最後に
以上、今回は「住宅業界注目テーマ オフグリッドハウスについて考察する」というテーマで見てきた。
オフグリッドハウスのように、新たなマーケットが誕生する可能性について知っておくことは非常に重要である。このような状況下で「茹でガエル」にならないためには、常に活用できる新しい情報にアンテナを張ることが重要であり、一人でも多くの建築従事者の方々にとってノウフルが貴重な情報源になればそれ以上のことはない。