編集を終えて
現在ノウフルの9月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援する、こどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境の好転までには至っていない。
実際にノウフル経由でのご相談を毎月20社以上いただき、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。
なお、私は延べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上を支援し、3000人以上の経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。
空き家対策について
今回は、住宅業界注目テーマを考察する特集において、空き家対策について見ていきたい。現在、さまざまなメディアで空き家問題が取り上げられている。この空き家問題は、我々の住宅業界においても、当然ながら無視できないテーマである。
まずは、空き家問題の界隈で起こっていることを簡単にまとめたものをご覧いただきたい。図1が、空き家問題におけるトピックスである。
まず、土地の固定資産税が本来の6分の1に軽減される理由により、取り壊されずに放置されている空き家が増え、大きな社会問題となっている。そして、空き家の通気や通水、清掃などを月額費用で提供する空き家管理ビジネスに、不動産会社やリフォーム会社、設備会社などが参入している。
また、不動産会社は空き家の売却時の仲介、リフォーム会社は管理からリフォーム工事の依頼につなげる狙いを持っており、空き家管理をきっかけとして、マンション管理業務のような住宅管理ビジネスが広がる可能性もある。さらに、売却用の空き家は、買取再販業者の仕入れターゲットの中心となる。
実際、空き家は、図2にある通り年々増加傾向にある。空き家の総数としては、1993年から2018年までの間になんと2倍の8489戸になっている。空き家率においても、1990年代後半から10%を超え、現在では13%台を推移している。
このような中で、この約8000戸の空き家をビジネスにする取り組みがいくつかあるので紹介しよう。
まず一つ目に、空き家管理ビジネスである。図3にあるように、空き家管理ビズネスは、空き家管理の単独での収益化ではなく、売買や賃貸運用などによる収益化を目的とし、その一環として顧客の囲い込みを行っている。管理については、換気・水漏れ確認・巡回・雨漏り確認・清掃・庭木確認・ポスト整理・診断報告などがある。
次に、サブリースの取り組み事例を見てみよう。地方に行くと、人口減少・高齢化が進んでいるため、電鉄会社が沿線エリアの活発化を狙い、サブリースの促進活動を行っている。
例えば、空き家に対してリフォームを前払い賃料で対応し、賃貸住宅の貸し出しを行い、住み替えの提案・促進なども行う。そして7年後には返却・転用を促すといった一連の流れを、電鉄会社の子会社の不動産部門、あるいはリフォーム部門などが行っているのである。
さらに、コンバージョンという取り組みもある。外国人旅行者の増加により宿泊施設が不足している問題があるため、空き家をリノベーションし、民泊活用につなげる活動である。ここでは、外国人向けのプロモーションなども行うことで、空き家を再活用することを目的としている。
最後に
以上、今回は住宅業界注目テーマを考察するという特集において、空き家対策について見てきた。
近年は、空き家問題を活用した新たなビジネスや取り組みが広がっているため、このような状況下で「茹でガエル」にならないためには、常に活用できる新しい情報にアンテナを張ることが重要である。一人でも多くの建築従事者の方々にとってノウフルが貴重な情報源になればそれ以上のことはない。