編集を終えて
現在ノウフルの1月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援する、こどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境の好転までには至っていない。
実際にノウフル経由でのご相談を毎月20社以上いただき、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。
なお、私は延べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上を支援し、3000人以上の経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。
4P戦略ついて
今月号のバンバン集客塾では、商品開発におけるハード戦略とソフト戦略について見てきた。ここでもハードとソフトにおいて、日本を取り巻く環境について考察していく。まず、産業におけるハードとソフトの定義を確認いただくと、このようになる。
ハードは、製造業や精密機器のような物理的なものを指し、ソフトは、ソフトウェアやサービス、コンテンツのような無形資産を指す。従来は、産業革命などでハードが重視されていた時代もあり、日本が得意な領域であった。
日本は自動車や家電などさまざまなハードウェアを開発し、世界を圧巻してきた。一方で、20世紀後半に情報革命といった形でソフト重視の時代が来ると全く太刀打ちできず、経済が停滞してしまった。このように、日本の経済停滞にはさまざまな観点で議論が繰り広げられているが、まさにこのソフトにおける遅れという観点も根深いのである。
これを図で示すと下のようになる。20世紀前半の産業革命のときには、ハードで日本のGDPを拡大した一方、20世紀後半に入ると情報革命となり、ソフトで台頭できず、経済が停滞する状況に陥っている。そもそも、なぜ日本人はソフトウェアの開発が苦手なのだろうか。
まず、ソフトに求められる要素には、柔軟な思考や独自の発想力などがある一方で、日本社会の特性は、理論や知識を重視する傾向にあり、ソフトウェアとの相性が良くない。また、変化に対応しながら進化させる要素も求められるが、日本の社会は上下関係により意思決定が遅く、特性としても失敗を受け入れない傾向にある。つまり、日本の根本的な風土がソフトウェア産業での遅れを出しているのである。
このような事態は今後、さらに深刻なものとなる。なぜなら、ソフトウェアがハードウェアを飲み込んでいくからである。IoTという言葉をご存じだろうか。これは「モノのインターネット」という意味合いになるのだが、要は、インターネットによりハードが全てソフトに集約されるという考え方である。
わかりやすく言えば下の図のようになる。これまで日本が幅広くシェアを取ってきたビデオカメラや電卓、カメラ、カーナビ、テレビなどのハードについては、スマートフォンや他のアプリケーションに取って代わられるようになった。
これはまさに、ハードウェアがソフトウェアの中に組み込まれてしまったということだ。
今後このような状況が続く中で、日本の強い産業は滅び続けていくであろう。今回示したような商品開発、各部のハードやソフト、ブランドの観点において、ソフト開発というのは単なる住宅業界だけの課題ではなく、日本全体の課題になっている。
最後に
以上、今回は、住宅業界の重要テーマとして「ソフト開発」の課題について見てきた。
住宅業界においては、価格の高騰化による顧客ニーズの変化などでハードの差別化が難しくなり、ソフト戦略が求めらる時代となった。この流れで今後淘汰される会社が増えていくであろう状況においては、商品戦略について今一度見直し、正しい戦略を立てていくことが重要である。一人でも多くの建築業界従事者の方々にとって、ノウフルが貴重な情報源になればそれ以上のことはない。
引用