株式会社はなおかは、徳島県を中心に注文住宅の設計・施工、リフォームなどを手掛け、 家づくりに携わる人とのつながりを大切にしながら、 土地の開発・分譲、エクステリアなど、不動産に関わるトータルプランナーとして活動している。 今回は、同社の代表である花岡秀芳氏(代表取締役会長)に、 取り組みや販売における考え方、 経営のモットーなどについてお聞きした。

 

―まず、御社の特徴をお伺いさせてください。

 

 

弊社は徳島県で新築戸建て、特に注文住宅を中心に事業を展開しています。年間の注文住宅の施工数は約180棟、売り上げは約54億円、社員数は86名です。着工数では徳島県内でNo.1の実績をいただいています。

 

社員のうち、1級・2級建築士の有資格者が32名在籍しています。昨年から徳島だけでなく、香川方面へも展開をしています。事業構成としては、新築のうち注文住宅が約85%、土地開発や分譲が約7%、リフォーム・エクステリアが約5%、その他が約3%という割合で、現在はエクステリア分野が成長しています。

 

ーもともとはス-パーマーケット事業からの業種転換と伺っていますが、その経緯について教えてください。

 

はい、弊社は先祖代々商売人の家系で、祖父は徳島で漬物製造及び穀物問屋を営んでいました。主に徳島港から大阪や奈良に漬物を出荷する事業をしていましたが、時代の流れを見て、父が人口約2万人の地域でスーパーマーケットを立ち上げました。そのため、私は子どもの頃から休みの日は家業の手伝いをし、当たり前のように休日は元旦だけという生活を送っていました。

 

 

やがて流通の変化が起き、スーパーマーケット事業が厳しくなった頃には、自ら起業し水処理の会社を立ち上げ8年間続けましたが、代理店制度の中での経営だったために自由が利かず、やりたいことができない悩みを抱えるようになりました。そこで、第2創業として何をやるべきかを考えたとき、土地や建物に子どもの頃から関心があり、宅地建物取引士の資格を取得し、妻と2人で住宅会社を立ち上げました。

 

住宅事業を立ち上げた背景は、縮小して継続していたスーパーマーケットを完全に閉店することが決定したため余力が出来たこと、それと病気がちだった私自身の体に改善が見られたこと、さらに上水処理事業の売上げに限界を感じていたことが大きな要因でした。

 

住宅会社を立ち上げる際には、事前にさまざまな情報収集や下調べも行っていました。事前に調査して特に驚いたのが、近所で働いていた大工さんへのヒアリングの反応です。彼らは、現在工事をしている施主の名前すら知らず、現場で使っているトイレが非常に汚い状況にも無関心でした。私が「そういったことが気にならないの」と尋ねると、「大工はそんなことには興味がない。この現場が終わると次の現場に行くだけ」という言葉に違和感を覚えました。

 

 

また、仕事があるときには急に呼び出され、仕事がないときには全く相手にされない、さらには値引き交渉を強いられるなど、まだ市場が成長していた頃でしたがその中で大工という「作り手」が家づくりに対して大きな不満を抱えていることも分かりました。こうした経緯から、私は大工に歩み寄る姿勢に変えることで、住宅業界に新しい風を吹き込めるのではないかと考えました。

 

また、他の住宅会社の方々にも話を聞いたところ、当時の住宅業界では「売り切り」の精神が強く、メンテナンスにはほとんど対応しないケースが多く見られました。さらに何かと理由をつけて追加費用を請求することも多く、顧客視点に立った対応とは言いがたい状況でした。

 

かつて、自身がスーパーマーケットで1円の価格にも敏感なお客様(主婦)と日々接していた経験より、住宅業界の対応には強い違和感を抱かざるを得ず、このような業界の常識を私たちが掲げる「正直に王道を行く」という経営理念によって、変えていけるのではないかと考えました。

 

 

住宅会社を立ち上げた際、私がこだわっていたのは「自社ブランドでの展開」でした。当時はフランチャイズ展開が主流であり、周囲からは「自社ブランドではうまくいかない。田舎では聞いたことがない。」と反対されましたが、過去の経験からどうしても自由に展開できる自社ブランドを立ち上げたいと考えたのです。こうした経緯の中で「ジャストホームシリーズ」という自社ブランドが誕生しました。

 

この商品は完成価格での販売をテーマにして開発しました。例えば、キッチンがあっても食器棚がない、カーテンが付属していないといった違和感に着目し、全てを含めた価格として坪38万円で販売しました。その結果、初年度から6棟の契約をいただき、7年後には注文住宅で県内トップの会社に成長しました。

 

しかしながら、この成功は、私のスーパーマーケット時代に培ってきたお客様目線だけではなく、公私ともに支えてくれた妻の存在があったからこそだと考えています。妻は高校の登山部の後輩で、長年の交際を経て結婚しましたが、小学校教諭をやめスーパーマーケットに嫁いできた当初は朝から晩まで業務に真摯に取り組んでくれました。その姿勢は住宅会社を経営するようになってからも変わらず、日々の仕事の後には勉強を重ね、二級建築士・一級建築士といった資格も次々と取得し、常に学び続けてくれました。

 

弊社は毎年新モデルハウスを発表してきましたが、そのほとんどを妻が手がけてくれました。そして、妻が発表した商品は一足先を行くおしゃれさがあると好評で、モデルハウスに来場された多くのお客様から感動の声をいただきました。このように、弊社の強みは商品力にあると考えていますが、やはり、地道に丁寧に完成後見えないところも責任施工をして、より良い商品を作り上げていく姿勢が大切であると実感しています。

 

 

ーそれは素晴らしいことですね。他にも売れる秘訣はありますか。

 

私どもは、利益率の考え方において一般的な住宅業界とは少し異なる視点を持っています。先ほどお伝えしたように、さまざまな価値を全て込みで提供するとなると、どうしても利益率が圧迫されてしまいます。その中で私は、住宅会社を立ち上げた当初から利益率を18%で運営していきたいと考えていました。一般的な住宅業界の利益率20%台後半と比べて、多くの方から経営は出来ないと反対の声が上がっていました。しかし、基本的に粗利率18%に設定しました。

 

さまざまな要素を建物に盛り込みすぎると、利益率を確保することは難しいこともありますが、高い利益率を取ってお客様にどう受け止められるのかがいつも気がかりでした。

 

ただ、利益率が低いだけでは経営上良くありませんので、1人当たりの売上高を向上させるシステムを構築しました。コスト面においては、徳島全域で展開していますが、事務所を1拠点に絞って運営してきました。来期は、香川支店を加えて2拠点を予定していますが、2拠点で210棟というのは珍しいケースではないでしょうか。顧客への価値を最大化するために利益率を圧縮し、その分他の領域で経営努力を行う取り組みは、我々のユニークポイントだと言えます。

 

香川県に進出して2拠点体制となって経費率が上昇したことへの対応と、パートナー様への交渉能力が向上したことにより、今後は目標の利益率を20%に改定します。長期にわたる財務の安定性が外部の機関からも評価されており、アメリカ大手格付会社S&Pの中小企業向け格付けで、3年連続最上位の「aaa」を取得しました。また、シンクタンクによる「経営力ランキング(注文住宅系住宅会社)」では、全国第2位の評価をいただいております。

 

 

ーとても素晴らしい取り組みですね。組織についてはいかがでしょうか。

 

組織に関しても「正直に王道を行く」をモットーとしています。また、社訓では「親切に・丁寧に・きっちりと」と定めており、社風は「自由活発」です。この分かりやすい言葉は一見簡単そうに見えますが、長期にわたり組織が変化する中で、徹底することは非常に難しいことだと感じています。

 

理念や社訓をどのように徹底しているかと言いますと、例えば、お客様からのクレームで私たちが現場に謝罪に向かった時に「ホームページに『親切』と記載しているのにもかかわらず、親切ではない」と指摘を受けたことがあります。その時は最も悔しかったですが、このような経験も一つの気づきとして受け止め、翌日にはさらに理念を磨くことを意識しています。

 

そもそも私たちは、事業や経営を行う際に、どの地域で事業を展開するかを真剣に考えてきました。徳島なのか、四国なのか、日本なのか世界なのかといったことを広く考える中で、私自身の体調の問題も考慮し、「地域に根付く」という意思決定をしています。「地域に生きる」とは、トータルベストではなく、エリアベストを目指すことであり、このような会社はマニュアルによる管理体制は向きません。したがって、理念や社訓への共感が必要不可欠であり、私たちは社員に会社の理念をしっかり浸透させることを常に意識して、活動を続けています。

 

また、社訓である「自由活発」という「はなおからしさ」を保つために、毎年ニューヨーク・ドバイ・香港など海外への社員旅行を企画したり、国内では大阪や鎌倉への遠足をしたり、計27回にわたる大工さん旅行など、自由で人間力を向上させる様々な活動を行っています。

 

 

また、事業が拡大すると縦割り組織の壁が大きくなるため、社員を11グループに分けてシャッフルしながら月に一度全現場を清掃するなど、全社で横串を打つ活動も行っています。給与においては、上場企業同等水準以上を意識しています。労働分配率が高いことで税理士など周囲から反対を受けることもありますが、その結果として離職率10%を下回り、非常に高い組織エンゲージメントを維持してきました。また、大工の意識改革教育も実施しており、大工さんに一緒に会社のイベントに参加してもらうことで仕事の働きがいを高めています。

 

ーありがとうございます。最後に、今後の展望についてお伺いさせてください。

 

起業前、徳島県内では一戸建ての注文住宅着工は年間約4800棟ありましたが、昨年は1675棟となり、約3分の1にまで減少しています。2030年には1000棟を切るとも言われており、その際には県内シェアを現在の11%から20%に引き上げることが重要課題となるでしょう。これは、経営理念を愚直に突き進めることで可能になると考えており、徳島県では棟数においてはほぼ現状維持で進めつつ、香川県へのエリア展開も進めてまいります。

 

なお、先ほどエリアベストという考え方で徳島を中心に展開するとお話ししましたが、外部環境を考慮し、その定義を「東四国で生きる」に変更しました。今年、新事務所がオープンするのですが、香川県は建築条件付き土地が多いため、土地を購入して準備を進めています。この香川県進出後の9か月間で22棟の契約をすでにいただいていますが、現状は人の充実よりも建物や土地が先行している状況です。やはり、はなおかのビジネスモデルは「物より人」で人が先行することが本来の姿なので、今後人材の確保・育成に力を入れながら、積極的に事業を展開していきたいと考えています。

 

 

ーこれからが楽しみですね。本日はありがとうございました。

 

株式会社はなおか

徳島県を中心に注文住宅の設計・施工、リフォームなどを手掛け、家づくりに携わる人との繋がりを大切にしながら、土地の開発・分譲、エクステリアなど、不動産に関わるトータルプランナーとして活動している。

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