checkbox編集を終えて

 

現在ノウフルの9月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援するこどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境好転までには至っていない。

 

実際にノウフル経由で経営のご相談を毎月20社以上頂き、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。

 

なお、私は述べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上のご支援、3000人以上の建築経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。

 

checkbox建設業界が直面する雇用問題へ早期に対処を行う

 

それでは、今回は、建築業界が直面する雇用問題へ早期に対処を行うという内容について見ていきたい。近年、建築業界における労働人口が減少しているといったテーマがよく議論されている。このような中で、2024年問題に向けた早期の労働環境見直しと大輝の正社員化というものが重要になってくる。今回はその背景について深く深掘りしてみたい。

 

まずは、下の図をご覧いただきたい。建設業就業者数の推移においては、20年間で26%も減少している。元々2000年では600万人を超えていた人口が、2022年の段階では500万人を切っているといった状態である。

 

 

なぜこのように、建築就業者数は減少しているのか。要因としては五つ考えられる。長期的な観点で言えばバブル崩壊後の建設投資額の急減が挙げられる。また、建設会社の倒産などの業界構造が大きな影響を与えており、近年激化している厳しい競争環境も要因としては考えられる。

 

また、3K(キツイ・キタナイ・キケン)と言われる肉体労働のイメージや長時間労働・休みが不規則といった観点での採用における魅力度が低い点も挙げられる。長時間労働という観点で言えば下の図をご覧いただきたい。下の図は、年間出勤日数の推移を製造業と建設業で比較したものである。

 

図を見ていただく通り、建設業の2021年の年間出勤日数は240日で、製造業と比較して16日も長いことになっている。このような背景としては、先ほど前述した天候不順での長時間労働や休日出勤などがあるため、どうしても労働時間と年間出勤日数が長くなっているのである。

 

 

このような状況下において考えなければならないのが、2024年問題である。2024年問題とは、2019年に施行された働き方改革関連法において時間外労働の罰則付き規制が導入され、労働時間の上限が月45時間、年36時間に設定されたことが関わる。

 

 

建設業においては残業が常態化していることや、東京オリンピックパラリンピック関連工事などで当時需要が増えており、人手不足がさらに深刻になるリスクもあったことから、適用が5年猶予され、2024年から適用となった。これらの状況を踏まえて、早期に働き方の見直しを行うことが重要である。また、建築業就業者の年齢構成を見ると、65歳以上の人口が80万人を超え、最も多くなっている。この層が10年後に大半が引退することを考えると、若手の就業と定着といった観点が課題となる。

 

 

更に下の図は、建設業許可事業者の比率をまとめたものである。資本金が1000万円未満の法人と個人を含めると60%以上となり、零細企業では、後継者不足が大きな課題となるであろう。労働人口においては、大工就業者数の推移を見ても減少傾向にある。

 

 

1980年に93.7%いた太鼓人口は、2020年には29.8万人と7割近くが減少している。また、太鼓の年齢構成を見てみると60歳から69歳が大半を占めており、10年後には大半が引退することを考えると、木造新築や耐震省エネ改修工事に対応できる大工社員が工務店の最大の競争力になることが考えられる。

 

 

 

これらを踏まえて全国工務店協会では、大工育成ガイドラインというものを設定している。大工がどのようにキャリアを積み上げていくのかということをロードマップにしたものであるが、雇用条件や福利厚生面の不安を最適化し、社員大工確保を狙うことを主な目的としている。

 

 

checkbox最後に

 

このように、人材不足という業界課題において、業界全体を最適化する取り組みを行っていかなければ、建築、この業界の未来は暗いままになるであろう。このような観点から、前述した2024年問題に向けた早期の労働環境の見直しと大工の正社員化を早期に行うことが重要になる。

 

このような状況下において「茹でガエル」にならない為には常に危機感を持ち、ヒト・モノ・カネに次ぐ「情報」についてアンテナを張ることが重要であり、一人でも多くの建築従事者の方々にとってノウフルが貴重な情報源になればそれ以上のことはない。

 

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