今回は、ランク型営業の取り組みと体制強化により大幅な収益増加を実現した、鹿児島県A社の事例を見ていく。

 

では本日の目次を見ていこう。

 

 

住宅業界の外部環境

 

A社の取り組みについて説明する前に、前提として二つの外部環境のポイントを押さえてほしい。まず一つ目が、相対的な集客母数の減少である。繰り返し伝えているが、下の図にある通り、2013年以降の住宅着工数は減少を続けており、今後も市場の縮小が予想される。

 

 

その背景としては、人口減少が大きな要因としてあり、今後さらに集客は縮小していく。

 

 

二つ目のポイントとしては、潜在客(まだ先客)が増えていることである。潜在客について説明する前に、まず反響の定義を押さえていただきたい。住宅業界における反響には、非対面反響と対面反響がある。非対面反響は、資料請求や会員登録、、問い合わせなど来場につながらない反響を指す。一方で対面反響とは、来場やアポイントなど、実際に対面する反響を指している。

 

 

顧客はまず、下の図にあるように、チラシやWeb広告を見てホームページに流入し、その上で来店予約するのか、資料請求や会員登録をするのかの判断を行うわけである。その中で、昨今では資料請求や会員登録を選択するケースが増えている。彼らは購買熱が上がりきっておらず、営業されるよりもまずは自分のペースで考えたいという潜在客なのである。

 

 

下の図は、あるアパレル店でのアンケート結果であるが、「商品を見ている時に店員からの声かけがあった方が良いか」との質問に対し、多くの人々が「ない方が良い」と答えている。住宅の場合と同じように、本質的には、顧客は営業されずに自分のペースで考えたいと思っていることがおわかりいただけるだろう。

 

 

つまり、直接来店する「今すぐ客」は減少しており、資料請求などで情報収集を行う「まだ先客」が増えているのである。これを図にすると下のようになる。

 

 

いわゆるAランクと呼ばれる、今すぐ客が減少しており、あわせて全体の総数も減っていることがわかる。このような中で、A社はどのような取り組みを行ったのかを見ていこう。

 

A社の取り組み

 

まず一つ目に、Aランク(今すぐ客)へのアプローチの強化である。従来、A社では初回面談を一般営業に任せており、最終段階でクロージングに部長職(契約率20%以上)が登場していた。

 

 

しかし、このような中で、そもそも一般営業が初回面談で失注していることが課題であった。今までの市況であればそれでも良かったが、前述の通りAランク客が減っている中では看過できない問題であった。このような状況下において、A社は、下の図のように初回面談を全て部長職が行う体制に切り替えたのである。

 

初回面談以降は一般営業が対応するため、部長の稼働工数を増やさないようコントロールする形で体制構築ができたのである。この取り組みを行うことによって、Aランクへのアプローチ、特に初回面談の体制が強化された。

また、営業ステップ全体で見ても、下の図のように大きな改善を行った。従来は、初回面談をぶっつけ本番で営業担当が順繰りで行っており、そこから次アポにつなげていたが、改善後は、図にある通り、初回面談の前に事前ヒアリングを行うことにした。

 

 

役職者が商談に向けて電話でヒアリングを行い、前述した通り、初回面談に関しては役職者同席で行うことにした。なお、契約率20%以下のメンバーは単独で営業させないということも徹底し、面談後はアンケートや電話で初回面談に対するヒアリングを行うという体制に切り替えた。

 

アンケートに関しては、下の図にある通り、次の五つのポイントを確認している。接客の満足度・会社や商品の満足度・自社で家を建てたいか・今の自社は何番手か・その他フリーコメントである。

 

 

 

当然ながら、接客の満足度が低い場合は、営業担当を変更するなどの取り組みも併せて行い、アンケートの内容に未記入などが多ければ、内勤のスタッフが電話で事後確認をするといった取り組みを行った。また、初回面談を一人で行うためのデビューチェックリストも作成した。下の図はその一部である。

 

 

自分が言ったことではなく顧客が話した内容を語れるか、自社が何番手か答えることができるか、顧客が家を建てたい動機を説明できるか、顧客の家づくりの優先順位を回答できるか、などの要素をリスト化し、問題なければ初回面談に一人で臨める体制に切り替えた。このような取り組みを行うことで、今すぐ客へのアプローチが最適化され、契約率が2倍となったのである。

 

次に、Bランク(まだ先客)へのアプローチの強化である。これまでA社では、下の図にあるように、Aランク、つまり熱の高い顧客の案件のみに対応しているという状況であった。

 

 

しかし、前述した通り、集客の総数が減り、さらには今すぐ客が減少し、まだ先客が増えているということを考えると、当然ながらBランク以降に対するアプローチも重要である。その点を踏まえて、下の図のような取り組みに切り替えた。

 

 

企画やイベントによって、Aランクに対してのアプローチを行いながらも、Bランク・Cランクへもアプローチを行う方法である。Bランクに対しては、定期的な情報配信や案内などを行い、Cランクに対しては、企画部がマーケティングオートメーションで対応し、熱が再度高まったタイミングで営業担当にパスする仕組みを構築した。

 

このような取り組みによって、Bランク・Cランクからの引き上げも安定化し、大幅な収益改善につながったのである。

 

本記事のまとめ

 

改めて、本記事のまとめを示そう。

checkbox住宅業界には情報収集の段階の「まだ先客」が増えている。

checkbox顧客は、「今すぐ客」や「まだ先客」などランクごとに分別することが重要である。

checkbox今すぐ客への営業は、初回面談でのアプローチが重要である。

checkboxまだ先客へは定期的な情報配信や案内を行い、ランクを引き上げつつアプローチすることが重要である。

 

以上、今回は、ランク型営業の取り組みと体制強化によって契約率を2倍にした鹿児島のA社の取り組みについて見てきた。

 

今後さらに集客が減る中で、このような取り組みはますます重要になっていく。現状、取り組みが遅れている企業は、早期に体制づくりを行っていただきたい。

 

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