編集を終えて
現在ノウフルの4月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援する、こどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境の好転までには至っていない。
実際にノウフル経由でのご相談を毎月20社以上いただき、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。
なお、私は延べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上を支援し、3000人以上の経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。
リーダーに求められる素直力
ノウフルでは、経営に関するさまざまな情報を発信している。これらの情報を自社に生かすためには、その情報をいかに貪欲に吸収し、現場に落とし込むかという姿勢が求められる。この際に必要な能力に「素直さ」があるのではないかと私は考えている。今回は、この素直さにフォーカスし、「リーダーに求められる素直力」というテーマでノウフルの4月号を締めくくりたい。
大前提となる「素直さとは何か」については、さまざまなビジネスセミナーやビジネス書にて提言がされている通りである。もちろん、素直であることに越したことはないし、多くのリーダーが素直であることを意識して日々活動しているであろう。一方で、素直という言葉自体が概念的であり、どこかつかみどころのない特性を持っていることは否定できない。リーダーに求められる素直さとはどのようなものかをケーススタディを用いて解説したいと思う。
まず、下の図をご覧いただきたい。コップに水が半分入っているが、どのように感じるだろうか。
これは人によって解釈がさまざまである。「まだ半分もある」と思うのか、「もう半分しかない」と思うのか。このように、同じ事実であっても捉え方が人によって異なる。
これを事業活動に当てはめると、次のような考え方ができる。ある事象や取り組みに対して、知っていること・できていることに対する解釈はさまざまだ。例えば、ある成功事例について話を聞いたとき、それを「知らない」と感じる人もいれば、「知っている」と感じる人もいる。さらに、「できていない」と感じる人もいれば、「できている」と感じる人もいる。
この仕事をしていると、ある場面に直面することがある。それは、ある取り組みについて「知らなくても知っていると感じる人」や、「できていないにもかかわらず、できていると感じる人」がいるということだ。ある成功事例があったとして、取り組みの半分を知っていた場合、あなたはそれを「知っているに値する」と感じるだろうか。 それとも「知っているに値しない」と感じるだろうか。このケースにおいては、半分知っていても「「知っているに値しない」と捉えて貪欲に知ろうとする方が、当然ながら成果につながりやすい。
また、100%知っている事例だったとしても、それを「できていない」場合、「100%知っているから」と思考停止するのか、「できていないから」と定義し、貪欲に情報を吸収していくのかによって、成果の度合いが変わってくる。この「知っている」と「できている」の間には圧倒的な壁がある。しかし、「できていない」にもかかわらず、「知っている」だけで「その情報は不要だ」と判断する人もいるだろう。これを三つのパターンで分けると、下の図のようになる。
パターンAは①で止まるリーダーである。一部しか知らなくても「その手法は知っている」と思考停止するケースで、先ほどの水の例で言えば、半分しか水がないのに「まだ半分もある」と満足してしまうケースにあたる。次に、Bパターンは②で止まるリーダーである。知っているだけで満足し、できているかどうかまでは考えないケースである。
そして、Cパターンが突き抜けるリーダーである。知っていても「知っているに値しない」と捉え、できていても「できているに値しない」と考えて、最大限に取り組むケースにあたる。この姿勢こそが「素直さ」 なのだ。かの名経営者・松下幸之助氏も、「経営で成功する秘訣は素直さだ」と表現するほど、リーダーに素直さは必須なのである。 ノウフルではさまざまな成果事例を掲載しているが、それらの情報を判断する上でも、この素直さの程度が、その後の自社での取り組みの結果を大きく左右するのである。
この観点から言えば、情報化社会ではさまざまな情報があふれている。その中で、「これは知っている」と切り捨ててしまうのではなく、「知らないところがないだろうか」と貪欲に情報を吸収し、さらに「知っている」だけで満足せず、「できていない部分はどこか」にも目を向け、「どうすればできるのか」と考えるリーダーこそが成功するだろう。ぜひ、このような考え方を大切に持っていただきたい。
最後に
以上、今回は、住宅業界の重要テーマとして「リーダーに求められる素直力」について見てきた。住宅業界の経営においては、情報に対する素直な姿勢が重要だ。そのためには、「知っている」ことに満足せず、「できていない部分はどこか」を常に問い続ける姿勢が求められる。一人でも多くの建築業界従事者の方々にとってノウフルが貴重な情報源になれば、それ以上のことはない。
引用