
編集を終えて
今回もノウフルを通して、売り上げを上げるためのノウハウを紹介してきた。ノウフルは、人・物・金に次ぐ第四の経営資源である情報を、平等にさまざまな住宅会社に伝えることができたらと思い執筆している。
また、それだけではなく、常々お伝えしているように、今後住宅業界においては集客大恐慌が到来する。そのような中で、ノウフルは、単なる販促ではなく、商品戦略・価格戦略・立地戦略を踏まえた広義のマーケティング、いわゆる「シン・マーケティング」の浸透を目的としている。今回もこの「シン・マーケティング」というテーマに沿って編集後記を記し、本号の締めくくりとしたい。
マーケティング別相性
住宅業界のマーケティングには、「プッシュ型マーケ」と「プル型マーケ」が存在する。プッシュ型とは、資料請求などでリードを集め、自社から電話やメールでアプローチして販路に呼び込む手法である。

一方、プル型は顧客のほうから来てもらうマーケティングであり、ウェブ広告やホームページを通じた来場予約などが該当する。リードに対して企業側から働きかけるのがプッシュ型、顧客が自ら行動して接点を持つのがプル型である。この2つを「自力集客」と「他力集客」に分類すると、次のようになる。

自力集客でいえば、プッシュ型はホームページ上での資料請求、プル型は見学会・勉強会・相談会などが該当する。ここで注目したいのは、プッシュ型マーケは分譲業界とは相性が良く、注文業界とは相性が悪いという点である。なぜだろうか。

下の図をご覧いただきたい。

まず、分譲業界の資料請求の目的を見てみよう。顧客は「物件を実際に見たい」と考えているため、資料請求後の電話にも比較的応じやすい。現地見学につながる可能性が高く、顧客自らアポイントを取りに行くような状況をつくり出すことができる一方、注文住宅業界では、リードの目的が「カタログ請求」である場合が多い。
カタログは問い合わせをした時点で自動的に送付されるため、顧客が電話に出る必要はなく、結果的に居留守となるケースが多い。分譲業界の営業は不動産営業的な要素が強く、断られても何度も電話をかけることに慣れている。
一方、注文住宅の営業は断られることへの耐性が低く、積極的に電話をかけることをためらいがちだ。このような背景から、分譲業界は「資料請求や会員登録でリードを集め、電話でアプローチする」プッシュ型マーケと相性が良く、注文住宅業界はそれに不向きであるといえる。実際、SUUMOでは注文住宅分野の不振が続き、雑誌が休刊となった事例もある。

こうしたことからも、注文住宅業界においてはプッシュ型マーケが機能しにくいことがわかる。したがって、業界ごとに特性を踏まえたマーケティング戦略の設計が重要である。
最後に
以上、今回は住宅業界の重要テーマとして「編集後記~分譲と注文を隔てるマーケティングの溝~」について見てきた。
分譲業界ではプッシュ型マーケが効果を発揮しやすく、注文住宅ではプル型マーケ中心の戦略が適している。本記事で示した内容を参考に、自社の業態に合わせた集客戦略を設計することで、より効率的かつ実践的なマーケティングにつなげることができるだろう。一人でも多くの建築業界従事者にとって、ノウフルが有益な情報源となれば、それ以上のことはない。
引用