今回は、若手の契約率が大幅に向上するポジショニング営業について見ていきます。
早速ですが、近年、住宅業界では、集客難や原価高騰により、今すぐ客が大幅に減少していると言われています。下の図をご覧ください。この図は、住宅総合展示場の協議会が収集したデータですが、住宅の実現可能時期に関するアンケートに対し、多くの方が2年以内と回答しています。
未定と2年以内を合わせると7〜8割と圧倒的です。彼らは住宅購入がまだ先であることから「まだ先客(潜在客)」と言います。「今すぐ客(顕在客)」と言われる住宅購入の早期決定を検討している層が商品説明を求めているのに対し、彼らはそもそも自分たちが本当に家を建てられるのか、住宅購入がまだ先である自分のペースで話を聞いてくれる良き相談相手がいるのかについて、不安や疑問を抱いています。ですから、従来の顕在客への商品提案型の営業スタイルだけではなく、潜在客に向けた営業スタイルを構築することが重要になります。
しかしながら、ここで気をつけなければならないことがあります。それは「検討はまだ先」とアンケートに記載する潜在客の中に顕在客が混じっているということです。下の図をご覧ください。アパレル業界において、「商品を見ている際に店員から声かけがあったほうが良いか」との質問に対する回答を示しています。「声かけがない方が良い」との回答が圧倒的に多いことがわかります。
住宅検討についても同様で、検討期間を短く書くとゴリゴリ営業されてしまうため、一部の顕在客も検討期間を2年以上先に設定しているのです。ですから、下の図のように、リアルな潜在客だけでなく、「隠れ顕在客」も存在することを念頭に置くことが重要になります。
今回は、この隠れ顕在客を攻略する手法について見ていきます。
なお、リアル潜在客の攻略法についてはこちらの記事に掲載してますので併せてご覧ください。
では本日の目次をお示しいたします。
ポジショニングとは
では、ここからは、隠れ顕在客のガードを下げるにはどうすれば良いのかについて見ていきます。その手法として、グリッピングとポジショニングがあります。今回はポジショニングに焦点を当てて説明します。
まず、グリッピングにより、お客様と会話のキャッチボールがつながるようにするのが、営業のファーストステップです。しかしながら、最終ゴールである「契約」につなげていくには、単に「会話」が成立しただけでは不十分です。いくら良い関係性を構築でき、仲良く会話ができるようになったからといって、本質的にお客様の心を掴むことはできません。さらに、一方的に質問を浴びせるようなことがあれば、せっかく開いたお客様の心が再び閉じてしまうことにもなりかねません。
つまり、営業パーソンがセカンドステップとしてやらなければならないことは、単なる「会話をしても良い相手」から「住宅のプロ」へとポジションを向上させ、お客様から「家選びについてはこの人に相談したい」「相談するといろいろと教えてもらえそうだ」と思っていただくことです。このような工程を、「ポジショニング」と呼びます。
まず、下の図をご覧ください。「あなたは病気です」と言われた場合、一般的な見た目の人と、白衣を着た人とでは、どちらを信じるでしょうか。
多くの人が白衣を着た方と答えると思います。ポジショニングとは、まさにポジションという「白衣を着ること」を意味します。住まいに関するプロという観点でポジションを確立し、先生としての立場で営業を行うことが非常に重要であることがおわかりいただけるでしょう。
このポジショニングについては四つのポイントがあります。順番に見ていきましょう。
①中立的なアドバイス
自社の売り込みではなく、中立的な立場で住宅購入についてアドバイスすることで、相談相手としての信頼を確保することができます。下の図は、そのトーク事例です。
どのようなキッチンが良いかというのは一概には言い切ることはできません。例えば、お子様とのコミュニケーションを重視するなら、対面キッチンの方が適しています。ただ、一方で、臭いや音・油はねといった問題も出てきますので、プラスマイナス考えた上で自分に合ったものを選ぶことが大切ですね。
②過去の実績開示
例えば、営業パーソン自身が過去に携わったお客様の事例を話すことで、個人としての経験値に対しての信頼感が高まります。トーク事例は下記となります。
私がこれまでお手伝いさせていただいたお客様には、多くの場合、最初は変動金利でローンを組み、金利が上がりそうになったら固定に借り換えるのが良いのでは、とアドバイスさせていただいております。
というのも、、、、
③将来の問題指摘
お客様が気付いていない先々の問題点について指摘してあげることです。「さすがプロだな」と思ってもらうことができます。下記がそのトーク事例です。
今の住まい方だけではなく、「20年、30年経った時の暮らし」も合わせて考えることが、プラン検討では重要です。例えば、和室はいらないという方が非常に増えてきていますが、特にご長男の場合は、将来的には仏壇を置くための仏間が必要になるかもしれません。
④気付きネタ
他の営業パーソンがあまり言わないような、お客様に気付きを与えるネタを話すことで、相談相手としての価値が高まります。トーク例は下記となります。
「今は消費税が上がるから買い時だ」と多くの営業マンから言われるかと思いますが、実は消費税ってそんなに重要ではないんですよ。というのも、消費税が増税になっても60万円ほどしか変わりません。それよりも影響が大きいのは金利です。金利が1%上がるだけで、返済額は500万円以上変わってきます。ですので、消費税がどうかよりも、いかに金利が安いタイミングで買うかの方が重要です。
では、どのようなテーマならポジショニングができるのかについても見ていきましょう。ポジショニングの大原則は、相手が関心のある話で情報格差を取ることです。
失敗しがちなのが、関心がない話をすることです。いくら詳しくプロらしく説明したところで、相手がその話に関心がなければ、ポジショニングは絶対にできません。ですので、相手が関心のある話を瞬時に見極めるセンスが必要です。この流れに基づいてステップを見ていくと、下の図のようになります。
まず、グリッピングによって人として認められ、その後、ポジショニングを行いプロとして認められます。その上で、課題を抽出するコーチングを行い、購入の選定基準を与えるフレーミングを行います。そして最後に、生活をイメージさせるイメージングを行う流れになります。なお、このコーチング・フレーミング・イメージングについては、下の図のような扱いになります。
イメージングはお客様の理想の暮らしを具現化することで、コーチングは理想の暮らしに向けての課題に向き合うことです。そしてフレーミングは、課題解決に向けた軸を伝えることです。このような流れでアプローチを行えば、若手でも契約率を向上させることが可能です。
なお、コーチング・フレーミング・イメージングについては下記の記事にて詳しく記しておりますので併せてご覧ください。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
隠れ顕在客のガードを下げるには、グリッピンとポジショニングが重要ある
ポジショニングは4つのポイントを押さえながら進めていくことが重要である。
営業では、ポジショニングに続いてイメージングまで正しい流れで行う
以上、今回は、若手の契約率が大幅に向上するポジショニング営業について見てきました。
今後もこのような取り組みが重要となりますので、しっかりと取り組んでいきましょう。