多くの住宅関連企業・工務店で日々「他社と差別化する為にどうすればいいか」という視点で日々商品の差別化を検討されていることと思います。一方で日本の住宅は資材などの仕入先が変わらない分、商品の差別化が難しいということがあるのではないでしょうか。特に「高気密・高断熱」については多くの住宅会社が謳っていることからも差別化に苦慮されているのではないでしょうか。
こちらはある経営者の悩みです。
うちは高気密、高断熱が売りだ。
ここは誰にも負けない。
でも。。。
他社も同じ打ち出しをしている。
そもそも高気密高断熱が強みなのか・・・?
地域密着やアフターサービスをもっと打ち出したほうがいいのではないか?
3C分析をしましょう、って言われるけど3Cってなんだ・・・!?
気密や断熱を打ち出しても、結局差別化が出来ず、他決してしまう・・・。このようなお悩みの経営者は多いのではないでしょうか。
本日はこのようなお悩みについてどのように対処すべきかをお伝えいたします。
では本日の目次をお示しいたします。
はじめに
多くの住宅会社は気密、断熱という点を重視されています。ただやはり気密、断熱が強いですと宣伝している住宅会社がたくさんありますので、見込み客の取り合いになるということがあるのではないでしょうか。
そして営業が正確に優位性を話しているのか、或いはホームページに説明を入れていない、何から始めていいのか分からないということがあります。今回はそもそも商品力としての考え方の視点で考えていきます。
まず商品を強化するには以下の通り「市場を決める」「商品の差別化戦略を立てる」「販売戦略を立てる」の大きく3つの流れが重要になります。本記事もこの流れに沿って商品強化について触れて参ります。
ステップ①〜市場を決める〜
まずは一つ目の市場を決める、について見ていきましょう。下の図をご覧ください。住宅業界には様々な商品が展開されています。それぞれを大きく分けると「機能・性能・設備系」「デザイン系」「コンセプト系」に大別されます。この中で、価格が高いか(High)安いか(Low)という観点を踏まえてまとめた図が下記になります。まず、非常に重要なのは商品展開をする上で、「どの市場を狙うのか」を決めることです。
ではそもそも、住宅業界にはどのような市場があるのでしょうか。先ほどのような商品分類以外にも様々な市場分類があります。一つ目が、地理分類です。この国を狙おう、あるいはこの地域を狙おう、といった市場分類です。二つ目が、人口分類です。高齢層を狙う、若年層を狙うといった市場分類です。
三つ目が心理分類です。デザイン重視層を狙う、性能重視層を狙う、といった顧客の心理から逆算した市場分類です。4つ目が行動分類です。消費者の行動であるリピーターを狙おう、夜間に活動する層を狙おう、といった顧客行動に合わせた市場分類です。
一般的に住宅業界では心理分類の観点で市場を決めるケースがほとんどなので、今回はこの心理分類を軸に進めて参ります。心理分類とは言葉の通り、「消費者の要望を軸に市場を決める」といった考え方です。性能の良い住宅がよい、低価格が良い、高いデザイン性が良いなど、様々な要素がありますが、消費者の要望の数だけ市場があると言えます。
その上で注意しなければならないのが、あくまで分類軸は「集客を決定づける要因(集客決定要因)」であることが重要だということです。端的に言えば、チラシに打ち出して反響が出る要素が条件である、ということです。例えば購入客にアンケートを取ると、多くが「営業マンの対応が良かった」、あるいは「地域密着で安心出来る」といった回答がありますが、これはあくまで購入の決定的な理由になった購買決定要因です。
営業マンの対応が良い、といった要素をチラシに打ち出してもそれだけでは反響が来ないことはお分かりでしょう。ですから、当然この購買決定要因で自社の市場決めてしまうと、全く反応がないという結果になります。
以上を踏まえて下の図をご覧ください。集客設定要因である「性能の良い住宅」「デザインが良い住宅」を求める消費者を狙う場合は、右の図のような「性能」「デザイン」市場になります。この2つの軸で、自社の強みを狙うべき市場を決め、商品の差別化戦略、販売戦略を構築していくことが重要です。しかしながら、どの市場でも勝負してよいかと言えばそうではありません。
下の図をご覧ください。結論から言えば、「自社の得意分野の中で顧客ニーズを満たし、かつ、競合が参入できない領域」を見つけ出し、市場を決定することが重要です。この領域をUSPと呼びます。
USPを端的には和訳すると「自社が強みとする競争優位性(差別化要素)」になります。つまり、自社が競合に負けない強みとしながらも、顧客に求められる要素を指します。このUSPを明確にすることが、商品開発において非常に重要です。
USPがずれてしまうと、「そもそも顧客が自社の商品差別化要素に関心を持ってくれない」、あるいは「そもそも自社の商品差別化要素が競合に負けている」といったことになります。USPのズレは集客の仕組みや営業テクニックでは解決できない根本的な問題ですので、慎重に設定しましょう。
下の図は優秀企業のUSPですが、顧客・競合・自社の観点で非常に強いUSPを持っていることが分かります。このUSPを決めることが、商品開発における最も重要なことであるということを押さえましょう。
ではどのように自社に合った市場を見つけ出すのでしょうか。ここからはある住宅会社ケースをもとに説明いたします。下の図は、ある住宅会社が自社の商圏における分析をした考察資料になります。縦軸はデザイン・構造・機密といった各社の強みを洗い出しています。横軸は顧客感度と競合と自社の強みと弱みを洗い出しています。顧客感度とは、それぞれの要素において、どの程度顧客に関心があるか、を明確にしたものです。
こちらを見ると、従来この会社は気密を強みにしていることが分かります。しかしながら、気密に関しては顧客感度がそこまで高くないことが分析の結果判明いたしました。同時に顧客は構造に対する関心が高く、また競合各社は構造に対してあまり強くないことが分かります。結果、この会社のUSPは気密ではなくて構造が適切であるといった考え方になります。
以上、簡単に説明をいたしましたが実際には下の図のような細かく分析をしながら、USPを決めていくことが重要になります。
ケースによっては下の図のように様々な分析を行うことでUSPをより明確にすることもあります。顧客に関してはネットリサーチ・座談会、競合に関してはWEBリサーチ・覆面調査、自社に関しては社内アンケート・OBアンケートなどですね。このように細かいデータを積み上げていくことで、より精度の高いUSPを決めるこのような取り組みが重要になります。
また、単にUSPを分析するだけではなくて、下の図のような観点で「そもそも市場があるのか」を踏まえて、正確に分析を行うことが重要です。6つの視点で市場がないという結果になれば市場を攻めても意味がありませんので見直しが必要になります。
ステップ②〜商品戦略を立てる〜
次に商品戦略の内容に入ります。そもそも、自社のUSPが決まれば、その内容を踏まえて「販売戦略」、「商品差別化戦略」を決めることが重要になります。先程の図で言えば、下図のようになります。
では、商品戦略の構成要素は何でしょうか。下の図をご覧ください。下の図のように、USPを軸に、「パッケージ」、「ブランド」、「付随機能」を明確にすることが商品戦略になります。
パッケージとは、下の図にあるように、ネーミング・ロゴ・シンボルストーリー・商品仕様・商品ラインナップなどを指します。USPを消費者に分かりやすく伝える要素全てがパッケージと称されます。
ブランドは認知度と好感度を軸に、自社のブランドを一貫性を持たせて顧客に発信するといった考え方になります。なお、ブランディングについては下記の記事に詳しく説明しているので併せて御覧ください。
下図はブランドステートメントというツールを活用して顧客接点に一貫性を持たせて事業展開する、といった考え方です。先程の記事で触れておりますが、ブランディングには「一貫性」が重要になる為、このようなツールが必要になります。
付随機能とは「○○賞を受賞」「社歴○年」「地域密着」など、商品に付随する強み(長所)をまとめて訴求することを指します。下図のように自社の付随機能を分かりやすくまとめ上げ、ホームページやチラシなどで訴求することが非常に重要です。
付随機能について少し補足をいたします。例えば下の図は付随機能を作る流れを示した図になります。このように社内で自社の長所を自由に洗い出します。そしてそれぞれの要素を共通項でグルーピングし、それを文章としてまとめ上げます。そうすることで、商品自体の訴求力を高める付随機能というものが明確に伝わるようになるのです。
なお、付随機能をまとめる為のツールは下記よりダウンロードが可能ですので必要に応じてダウンロードしてください。
ステップ③〜販売戦略を立てる〜
次に販売戦略について見ていきましょう。
販売戦略は、商品戦略同様「自社が強みとする競争優位性(差別化要素)」を軸に販売戦略を組んでいきます。
住宅業界の販売戦略を分解すると以下のようになります。「媒体」「販売ルート」「企画」と大きくわかれ、媒体に関しては「顧客に認識してもらうための手法」を指します。販売ルートは、「顧客と接点を持つ為の場所」を指します。企画は、「販売ルートに何をフックとして呼び込むか」を指します。
近年ではこの企画自体がオンライン化しているという点が特徴的です。そして、この媒体・販売ルート・企画がUSPの種類によって、適切なパターン変わることを押さえなければなりません。
例えば、下の図のように高性能の場合は総合展示場で、ハウスメーカーとの価格差を訴求することが重要になりますし、ローコストの場合はホームページを媒体として、店舗に集客することが重要になります。ですから、あくまで自社のUSPに沿って、販売戦略を構築することが重要になります。
なお、こちらについても下の記事で詳しく触れていますので併せて御覧ください。
以上、商品開発の流れについて説明いたしました。単に商品戦略を組むのではなく「市場を決める」「商品戦略を立てる」「販売戦略を立てる」の3つを順番通り行わなければ売れる商品を創り上げることは出来ません。下のツールに沿って開発プロセスを踏めば適切な商品開発が可能なのでダウンロードし、正しいステップで進めていきましょう。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
商品開発は「市場を決める」「商品戦略を立てる」「販売戦略を立てる」の流れで進める
市場を決める際に、自社のUSPを明確にすることが重要である
商品戦略にはパッケージ・ブランド・付随機能がある
商品戦略は自社のUSPに沿って設計することが重要である
販売戦略は自社のUSPに沿って設計することが重要である
以上、今回は商品開発の大きな流れについて説明いたしました。このような適切な流れで正しく商品開発を行うことが非常に重要です。特に自社のUSPを決めることが最も重要ですので、緻密に設計を行いましょう。