多くの住宅関連企業(工務店)で、営業組織の実行力が低い…最近たるんでいる…といった課題をお持ちではないでしょうか。
こちらはある営業会議での話です。
営業部長「A君、最近数字が落ち込んでるぞ。たるんでるんじゃないか?」
営業マン「申し訳ありません・・・。」
営業部長「何か悩みでもあるのか?最近は遅刻も増えてるぞ。」
営業マン「そんなことないです。」
営業部長「1棟売ればちゃんと歩合がつくじゃないか。不満なのか?」
営業マン「(正直お金がそこまで欲しいとは思ってないんだよな。最近仕事がなれてきて飽きてきた・・・転職でも考えるか。)」
営業部長「なんか言ったか?」
営業マン「いえ、頑張ります!」
このように、スキルはあるにもかかわらず、また売りやすい商品があるにもかかわらず、営業メンバーがやる気がないといったことで、数字達成につながっていないケースも多くあると思います。
今回はそのようなお悩みにお答えする形で、どのようにして実行力を上げていくのかについてお伝えします。
では本日の目次をお示しいたします。
組織における5つのタイプ分類
まず、組織において、人は五つのタイプに分類されると言われています。順番に説明していきます。
まず一つ目が、点火型と言われるタイプです。自分自身の成長はもちろんのこと、組織のために進んで貢献することで、自分の周りの人々にも良い影響を与えながら、世の中に価値を提供しているタイプです。こちらは組織において全体の5%ほどいると言われています。
二つ目が、自燃型です。自分自身でゴール設定ができ、意義を見いだし、自身で成長できるが、一方で、組織や周囲を進んで導くことができないタイプです。このタイプは組織において15%ほどいると言われています。
三つ目が、可燃型です。点火型の人間に影響されることで、ようやく行動を起こすことができるタイプです。組織にとっては最低ラインの働きしかできていないものの、今後の見込みがある人です。こちらのタイプが最も多く、全体の40%を占めると言われています。
四つ目が、不燃型です。点火型の人間からも感化されず、自分でも火をつけられない残念なタイプです。基本的に他責思考で、今の自分の実力・実績は環境のせいだと思っています。このタイプは組織に30%いると言われています。
そして五つ目が、消火型です。暴言・自慢・陰口・マイナス発言・ため息などで周囲に悪い影響を与えるタイプです。最悪な人たちではありますが、自分では気づかないため厄介で、手のつけようがないタイプです。
まずはご自身がどのタイプか考えてみましょう。
では、どのようにしてメンバーの心に火をつけることができるのでしょうか。
組織に火を付けるとはどういうことか?
ここからは、事例を見ながら説明したいと思います。次の図は無印良品の元経営者である松井氏のエピソードです。
無印良品には衣料品部門があるのですが、設立当初は売り上げが全く上がらない状態でした。最終的には30億円以上の赤字を出してしまい、在庫となった衣料品が工場に積み上がっている状態でした。
これらの在庫を処分しなければ、保有しているだけでコストがかかってしまうという状況になったのですが、松井氏はなんとそこで在庫を焼却炉で燃やす場面を社員に見せたのです。そうすることによって、今自分たちが置かれている状況を明確に把握した社員は、一人一人の心に火がつき、やる気を高めるといった結果につながりました。
もう一つが星野リゾートの星野社長のエピソードです。
星野リゾートは、リゾート業界の中でも比較的高収益な企業として知られていますが、それでも外部環境によって売り上げが厳しい時期がありました。ここで星野氏はなんと、自身の社内向けブログにて自社の倒産確率を共有するようにしました。最初は社員の中で動揺が広まりましたが、最終的には社員に火がつき、倒産確率を下げるためにはどうするべきなのか、といった観点で、社員が一丸となって活動するようになりました。
このように、さまざまな場面で社員の心に火をつける取り組みを行うことが営業組織においても重要です。
下の図をご覧ください。これはナポレオンの格言です。「人間を動かす二つのてこは、利益と恐怖である」という考え方です。つまり、利益と恐怖をてことして活用することで、人を動かすということが重要になります。
もう少しビジネス寄りに言葉を変えると、利益は正しい報酬、恐怖は正しい緊張と捉えることができると思います。本記事では、その中でも正しい緊張をどのようにして醸成するか、に焦点を置いて解説していきます。
なお、正しい報酬については下記にまとめておりますので併せてご覧ください。
緊張感を醸成する一貫性の原理とは?
では、どのようにして正しい緊張感を醸成するべきなのでしょうか。
まず下の図をご覧ください。こちらは、ある調査データです。
まず、「結婚式を挙げたか」というアンケートデータですが、なんと結婚式・披露宴ともに開催したカップルについては、1割前後の離婚率であるのに対し、何もしていないカップルの離婚率は8割超という結果になりました。ここから導かれるのは、一貫性の原理という考え方です。まず、人は行動する上で一度決めたことをやり通そうとする心理があるのですが、これを一貫性の原理と呼びます。
一貫性の原理は人に公言することによって効力を発揮します。ですから、その意思を聞く相手が多ければ多いほど、一貫して行う気持ちが強くなるということですね。先ほどの結婚式の事例で言えば、多くの人たちを巻き込んでの結婚式や披露宴を行うことで、一貫性の原理が働いていると捉えることができます。
この原理の強度は範囲が広ければ広いほど効果は高まります。ですから、部署内よりも経営幹部、経営幹部よりも全社、全社よりも社外と範囲が広がるにつれて効果が高くなります。
一貫性の原理を踏まえた取り組み事例
例えば次の図のように、一部の住宅関連企業(工務店)では経営計画発表会を銀行などのステークホルダー向けに行っていますが、これはまさにこのような一貫性の原理を踏まえた取り組みと言えるでしょう。
一方、次の図は社内に向けての一貫性の原則を踏まえた事例です。営業部の上長あるいは営業メンバー各自がメールや日報を活用して、社内に目標・現状・改善施策などを報告するというものです。このような取り組みにより、正しい緊張感を醸成することができるということですね。
また、こちらの図は別の事例です。このように数字成績を壁に掲示するような形でも一貫性の原理が働くので、正しい緊張感を醸成する上では効果的でしょう。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
組織には5つのタイプが存在する
社員に火を付けるには正しい報酬と正しい緊張が必要である
一度宣言したことをやり通そうとする心理を一貫性の原理という
一貫性の原理を活用することで組織に緊張感を醸成することが可能である
以上、今回は、営業組織の実行力を上げる上での正しい緊張感の醸成について見てきました。このように、外に向けた報告体制を作ることで一貫性の原理を軸に実行力を上げるという考え方は非常に重要です。早いタイミングで体制作りを行い、実行力を高めましょう。