多くの住宅関連企業(工務店)で営業会議にて営業進捗中の案件管理を行っていることと思います。しかしながら、どのように案件管理すれば良いか分からない、とお悩みのケースも多いと思います。
こちらは、ある住宅会社の会議の風景です。
営業部長「じゃあ営業会議始めるぞ。A君、●●さんの進捗はどうだ?」
営業部長「はい、関係性もよく好感触です!ただ、少し進捗が遅れています。」
営業部長「あいまいだなあ。ハードルは何なんだ?対策はどうするつもりだ?」
営業部長「やはり土地ですかね?対策は・・・少し悩んでいます。」
営業部長「そうか、そういえば前アドバイスした例の土地案内はどうなってる?」
営業部長「あ、忘れていました・・・。」
営業部長「先月言ったことだぞ?まだやっていないのか。(このやり取りを何件すればいいんだ・・・)」
このように、案件の進捗管理を行っているものの、うまく機能していないケースが多く見られます。
今回はそのような状況についてどう対応すべきかについて、説明をして参ります。
では本日の目次をお示しいたします。
目次
外部環境変化①集客母数の減少
「案件がない事態は集客の問題なのか」、について論じる前に住宅業界を取り巻く環境を3つお伝えさせてください。一つ目が、相対的に集客母数が減少している点です。
こちらの図をご覧ください。こちらは新築戸建ての市場環境予測になります。
2013年以降は着工数が減少を続けていて、今後も減少が予測されております。そして、下の図は、人口の推移を表したものです。西暦800年から人口は増加し続けてきましたが、2004年をピークに、人口は減少し続けております。
さらに下の図をご覧ください。現在30代と言われる人口は1720万人います。一方で、20代の人口は1320万人と減少しております。水準としては、30代と比較し、25%減少する計算になります。
図の下部分は現在の集客、契約効率になります。総集客数が500組であれば、契約率が10%の場合は50棟になります。一方で市場が縮小した後、つまり先ほどの20代をターゲットとする時代になった場合は、総集客数が375組に減少します。契約率は10%で据え置きだとしても、現状と同じ動きを体制をとっているだけでは棟数が減少してしまいます。
外部環境変化②潜在客の増加
二つ目が潜在客の増加です。
下図をご覧ください。かつての住宅業界の集客営業構造は非常にシンプルな構造でした。いわゆるインターネットを中心としたホームページやポータルサイトがなかったので、集客はほとんどチラシ・CM・情報誌・紹介でした。
このような施策は、集客=来店、反響=来店でしたので、営業マンとしては、来た見込み客の対応するだけで良かったんですね。
一方で、下の図をご覧ください。
こちらの図は、オンラインいわゆるホームページ、ポータルサイトを踏まえた図になりますが、まさに現在の住宅業界はこのオフラインとオンライン2パターンの集客構造になっています。
中でもオンラインの特徴としては反響の定義が来店ではなくなったということですね。来店ではなく、資料請求や会員登録が反響となりました。そうすると、当然ながら、その資料請求、会員登録の人たちに対し、電話メールDMで来店を促進するということが重要になります。
このプロセスが一つ増えたことによって、契約数もっと言えば、来店数自体は変わっていないけれども、反響数は増えているということが分かるのではないかと思います。
ですから、下の図のように一重に反響と言っても、来場・アポイントのような「誘致反響」だけではなくて、資料請求、会員登録問い合わせといった「リード反響」が存在するのです。その中でリード反響が増加しているものの来場やアポイント、さらには契約に繋がっていない・・・このようなケースが増えております。
外部環境変化③嫌消費層の増加
三つ目は嫌消費層が増加している点です。
近年は、世代交代という言葉がよく使われますし、最近ではさとり世代と言った言葉も使われています。実は、昔から団塊の世代、ポスト団塊の世代、ポスト団塊ジュニア世代など様々な世代分類がなされてきました。
その中でも注目すべきがポスト団塊ジュニアと言われる現在20代の方々の価値観の変化になります。彼らは、図に記載している通り、「消費が嫌い」、「モノを持たない」という考え方になりますですから、そもそも住宅を買うという考え方自体が薄れてきている点が挙げられます。
外部環境を踏まえたBランクマネジメントとは?
以上3点を踏まえて、どのようなことが言えるでしょうか。結論から言えばBランクマネジメントが重要になります。順に説明致します。
下の図をご覧ください。こちらは、ある住宅会社の年間の集客。をグラフ図にしたものです。
当然ながら、Aランク日は少なく、BランクはそれなりにCランクが多くいるといった構造になっています。この三角形が先ほどの①全体の総数が減っていること②今すぐ客が減っていること③嫌消費層が増えていることを踏まえると、右側の図のようになります。そもそも全体の集客が減っている中で、更にはAランクの見込み客自体が減ってしまっているんですね。
そのような中で、集客を増やす、あるいは質を高めてAランクを増やすといった考えは集客の部門からすると、非常に難しいテーマであり、言ってしまえば「無い袖は振れない」といった考えになるのではないでしょうか。その中で、営業部が出来ることについて触れてみたいと思います。
下の図をご覧ください。こちらは一般的な住宅会社のイベントに関する対応を図にしたものです。多くの住宅会社では企画イベントを行った際に、熱いお客さんのみ対応してまだ検討段階に入ってない見込み客に対しては、熱心にアプローチをしていないのではないでしょうか。
その結果、企画イベントによるAランクの補充を待ち、少ないパイをでチーム内で取り合うような構造になっているのではないかと推測します。
一方で下の図は優秀な住宅会社のケースなのですが、企画イベントを行った際に、Aランクだけではなくて、BランクCランクに対しても各営業マンが管理を行います。Bランクに対しては定期的な情報発信、Cランクに関しては、定期的なお手紙やご連絡を吸う様々なアプローチをまめに行うことによって、企画やイベントでAランク客を確保するだけではなくて、BランクCランクから自然発生的に繰り上げをしていくと言った考え方を持っております。
ですから、本来営業が行うべきこととして、集客が少ない中では、BランクやCランクを対応することが非常に重要になります。
ある会社で下図のような各営業マンのAランクの案件Bランクの案件Cランクの案件を数字で管理する体制をとっております。この取り組みによって、営業メンバーが営業活動を適切に行うことが出来るか。を可視化して管理することが出来るんですね。
なおこちらのツールは下のリンクからダウンロード出来ますのでツールが欲しい方は下記よりダウンロードください。
案件管理で何を確認すべきか?
次に確認すべきことです。案件管理を行う上で何を管理すべきでしょうか。下の図は上長・部下それぞれが案件管理のやり方おいて何を確認すべきかを示した内容になります。
まず、上長は大きく案件の進捗具合・確度・ハードル・次回のアクション(前回アクションの実施状況)・契約タイミングを確認しましょう。進捗具合については初回面談や土地案内などステップごとに今どのステップでで次のステップにいつ進むのか、まで確認することが重要です。
アクションについては必ず各案件ごとに「次回いつ、何をするか」「前回のアクションは実施されたか」を確認しましょう。少しづつアクションを進めるだけでも契約数は大幅に増えます。契約タイミングはどの時期に契約するのか、まで常に確認し、案件の優先順位を決めることが重要です。
また、ハードルについては明確に社内で定義されていない場合は以下の6つを使いましょう。それぞれの案件で6つのハードルのうちどのハードルかを洗い出し、それぞれに対し対策を打つことが案件管理では最も重要になります。長期的にはハードルの統計を取り、最も多いハードルに対し全社的な取り組みを行うことも重要です。
ランクは契約における確率を指します。一般的には下記のランクを使用されるケースが多いです。注意点がCランクが資料請求などのリストである点です。ランクについては営業だけでなく集客領域もリストの対象になりますが、営業上の中長期や没であるDランクと比較し、資料請求などのリストは比較的ランクアップの余地がある為Cランクと定義されます。
上記のランク定義をフローでまとめた図が下になります。S〜Bは営業の案件になりますが、Cランクは資料請求や会員登録(リード)になる為、直近1ヶ月は営業がアポや来場促進を行います。1ヶ月以内に繋がらなかったCランク案件はそのまま集客部の管理している定期メール送付対象に切り替えます(Dランク)。同様に営業案件から脱落した没や中長期も同じ定期メール対象に切り替えます(Dランク)。
A社が行っている案件管理とは?
下の図は契約率が30%を超える営業組織の案件管理帳票です。先程お伝えした上長と部下の確認事項をすべて管理帳票で記入出来るようにしています。また、ハードルとランク定義も前途した内容に合わせて管理をしています。ポイントは一覧表のように掲載し、一覧がひと目で分かるように縦軸を顧客、横軸をそれぞれの管理項目で分けている点です。
また、この帳票を個別で管理しているわけではなく、全営業分をまとめて管理しています。その上で下図のように営業メンバーが一同に介して、帳簿をプロジェクターで壁に映しながら1件1件案件の管理を行っています。全員が各案件の状況を確認することで様々な視点でアドバイスが出来る、適切な緊張感を創出出来ると言った副次効果を狙っています。
また、下図のようにエクセルデータをGoogleドキュメントで管理することでそれぞれのパソコンでリアルタイムで管理が出来る為、エクセルではなくGoogleドキュメント上で各自が編集しながら管理をしております。このような取り組みを愚直に行うことで契約率を30%まで引き上げる結果に繋がりました。
なお、こちらの帳簿は下のページよりダウンロードが可能ですので必要に応じてダウンロードしてください。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
案件管理では上長と部下が何を確認すべきかを明確にすべきである
案件を管理する上では特にハードルとランクの定義を明確にすることが重要である
またそれぞれが個別管理するのではなく、全営業マンの案件を一覧化し、全営業マン参加のもと確認を行うべきである
Googleドキュメントを活用することで効率的なリアルタイムの管理も実現する
以上、今回は営業案件管理のやり方について見て参りました。一度営業会議などで体制を構築すれば永続的に効率的な運営が出来ますので積極的に実施しましょう。