今回は、満足度向上の取り組みで紹介来場数と来場効率が大幅に増加した、静岡県のN社について見ていきます。
まず、N社の紹介をします。N社は、静岡県で展開する住宅会社であり、ローコストの建売住宅を販売しています。近年ではデザインに注力し、注文住宅の比率も高めてきた総合建築企業です。
では本日の目次をお示しいたします。
当初の課題
N社は、元々集客におけるいくつかの課題を抱えていました。
一つ目は、1来場コストが元々の10万円から15万円に増加したことです。コロナより前は、チラシを打てば10件ほどの見学会の来場がありましたが、コロナ以降は、その半分の来場しか見込めず、来場コストが1・5倍となりました。
二つ目は、紹介による集客が年々低下傾向にあることです。さらに、営業面において、若手の成長鈍化により、契約率が落ちていたとの問題もありました。こうした課題への対策として、N社ではオーナーと業者それぞれからの紹介を増やす取り組みを行い、成果創出につなげました。次の図は、実際の成果グラフです。
来場数自体は、コロナの影響もあり低下傾向にありましたが、紹介を増やす取り組みを行ったことで、販売棟数が大幅に増加しています。では、N社がどのような取り組みを行ったのかについて詳しく見ていきます。
N社の取り組み
下の図は、ある経営者の悩みになります。
このような悩みを抱える経営者は多いのではないでしょうか。では、そもそもの見方として考えてみましょう。オーナー全員が紹介をしてくれるでしょうか。答えはノーです。
次の図は、とある会社のデータですが、結論から言えば、1割のオーナーが全体の5割近くを紹介しているとの結果が出ました。これには二つの要因が考えられます。
一つ目は、紹介をもらえる数と満足度に相関があることです。満足度が高ければ紹介をしてくれますし、満足度が低ければ紹介をしてくれません。
そして、もう一つが、おせっかい係数です。例えば、周りの知り合いに「おすすめの飲食店を教えてください」と伝えても、積極的に教えてくれる人もいれば、そうでない人もいます。
これは、満足度などとは関係なく、人それぞれの特性で、さまざまな情報を提供してくれる人はおせっかい係数が高く、オーナーの中にいればたくさん紹介してくれる人になります。ですから、下の図のように、オーナーを四つのタイプに分類し、右上にあるおせっかい係数が高く、満足度も高い1軍と言われるオーナーに対して紹介活動を行うことが重要です。
では、どのようにして1軍を抽出するのでしょうか。下の図は、オーナーに対しての満足度調査を行い、その結果から1軍の抽出を行った事例を示したものです。下の図にあるように、満足度は10点評価にしています。
まず、自社に満足しているかどうか、満足している場合はどの程度おすすめしたいかなどを質問し、最終的な点数で評価をします。N社では、下の図のように往復はがきを活用し、満足度とおせっかい係数を調査することにしました。
項目は記載の通り、自社に対する満足度を10点評価にし、紹介できる人がいるかどうかを聞いています。なぜ、10点評価なのかについては、次の図をご覧ください。この図は、NPSという本当の推奨者を洗い出す考え方を示したものです。
一般的には、NPSにおける10点評価の中で、0点から6点は自社を推奨してくれないユーザーになります。7点から8点は中立者となり、9点から10点が自社を推奨してくれるユーザーになります。ですから、N社も10点評価を実施し、9点から10点のユーザーを1軍と定義しました。そして、紹介をする人はいないが、いれば紹介したいと記載してくれるユーザーに対しても1軍と定義しています。
次に、別の経営者の悩みを見ていきましょう。下の図にあるように、最近ではオーナーズクラブをインターネット上で立ち上げるケースが増えています。
しかしながら、オーナーズクラブを立ち上げても紹介が増えないと悩む経営者が多く存在します。次の図をご覧ください。オーナーズクラブは、一般的にウェブサイトやアプリ、LINEを活用して運営されます。
しかしながら、ウェブサイトやアプリにおいては、そもそもログインされないといった幽霊部員の問題がつきまといます。オーナーズクラブを立ち上げたところで、インターネット上でログインが必要となれば、オーナーの人々は面倒でログインすらしないでしょう。
また、根本的な考え方として、顧客オーナーとの接点というのはビジネスにおいて非常に大切な領域になります。企業によっては、オーナーが会社で一番の財産と考えるケースもあるほど、その存在はかけがえのないものと言えるでしょう。そのため、オーナーとのやり取りをDX領域で完結させようとすること自体を間違いと考える必要があります。
オーナーとの接点はリアルで持つことが前提であり、そこで感謝の気持ちを直接伝える取り組みが必要です。この領域をDXで効率化しようとするのは、ビジネスとして誤った考え方になります。ですから、先ほどの一軍アプローチの観点と照らし合わせて伝えると、1軍のオーナーとリアルの場でファンミーティングを構築することも重要だと言えます。
なお、ファンミーティングにおいては紹介をもらうだけでなく、オーナー宅見学会を開催してもらい、営業の代行をしてもらう、口コミの投稿をお願いする、商品開発に協力してもらうなど、さまざまな取り組みをN社は行いました。従来のオーナーではなく、自社の圧倒的なファンが1軍ですから、このように依頼ができる幅が広がっていくのです。
では、次に、三つ目の経営者の悩みについて見ていきましょう。
前述のようなファンミーティングをしているものの、なかなか紹介が増えないといった課題を抱える経営者も多いでしょう。そのような場合は、下の図のようにオーナーの心理を押さえることが重要になります。
オーナーの心理として、紹介する対象が周りにいない・紹介のメリットがない・紹介にリスクを感じているなどのケースがあります。まず最初の、紹介する対象が周りにいないオーナーに対しては、下の図にあるように、今から家作りをしたい方ではなく、アパートに住んでいる方・結婚を控えている方・お子様が入学を控えている方・子供ができた方などへ対象を広げて紹介を依頼することが有効です。
また、実際に紹介をしてもらうタイミングなど、ご主人と奥様それぞれの視点で具体的に依頼することも重要です。
次に、紹介はしたいけれどメリットがないというオーナーに関しては、下の図にあるように、紹介の特典を手厚く制度化することが重要です。
紹介が契約につながらなくても1件当たり3000円のクオカードを渡す、成約になれば従量課金型で10万円単位で現金を渡す、成約になった場合は紹介を受けた方にも20万円相当の特典を付けるなど、紹介制度に魅力を感じるような取り組みが必要になります。また、チラシなどのツールを作成して、紹介制度を認知してもらうことも重要です。
最後に、紹介はしたいけれどリスクを感じるというオーナーに関しては、図の図にあるような、いろいろなお客様の声をまとめた動画をお見せすることにより、リスクを感じずに安心して紹介をもらえる体制を構築していくことが必要です。
N社はこれらの取り組みを、次の図のようなファンミーティングで行う場合、前半は座学で紹介制度や依頼の仕方、動画の共有などを行い、午後はバーベキューをするなどの触れ合いを重視した構成にしました。
N社はまた、これらの取り組みは、オーナーだけではなくて業者に対しても有効と考えました。というのも、次の図にあるように、住宅会社にとって、顧客は仕事をいただいている以上、上の立場になります。しかし、業者は仕事を与えている以上、対等か下の立場になります。ですから、紹介をもらうという強制力が働かせやすいのです。
次の図のように、業者会においてもファンミーティングでの取り組みをそのまま活用して、実践していくことが重要になってきます。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
紹介を増やすには1軍を抽出しアプローチをすべきである。
あわせてリアルでのファンミーティングを行うべきである。
ファンミーティンにて紹介の仕方を伝えるべきである。
同時に金銭的・心理的報酬を設定する。
上記について満足度を高めて効果性を高め、業者にも行うべきである。
以上、今回は、紹介における取り組みとして、オーナーそして業者からの紹介のもらい方についてお伝えしてきました。このような取り組みを行うことで、まだまだ紹介は増やすことができますので、ぜひ参考にしていただければと思います。