今回は「圧倒的歩合報酬による強力な営業部隊で年30%成長を6年維持する東京都のオープンハウス」について紹介します。

 

オープンハウスは東京都を中心に分譲住宅の販売をしており、「東京に、家を持とう。」のキャッチフレーズで一躍知名度を上げました。不動産仲介事業・新築戸建分譲・マンション開発事業で自社ブランドを展開し、近年では東京以外にも名古屋・福岡に拠点を拡大し、今、急成長している会社です。

 

 

今回はオープンハウスがどのようなビジネスモデルを展開し成功しているか、について考察していきます。

 

なお、本記事は戦略論について論じるため、基本的な戦略の考え方をこちらの記事を踏まえて把握した上で読み進めてください。

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

信賞必罰モデルとは何か?

 

では、オープンハウスはどのようなビジネスモデルを展開しているのでしょうか。結論から言えば、信賞必罰モデルと言われるビジネスモデルを採用しています。信賞必罰モデルとは、組織実行力を高めるための体制を強化するビジネスモデルで、金銭報酬だけでなく、意味報酬と言われる報酬制度を充実させており、高い組織実行力を実現するビジネスモデルです。

 

 

なお、金銭報酬とあわせて設計されている意味報酬は、「成長報酬」「承認報酬」「親和報酬」「貢献報酬」に分類されます。成長報酬は知識や技術の向上、承認報酬は成果の表彰、親和報酬は良質なチームワーク、貢献報酬は感謝の言葉などの貢献欲を助成する考え方になります。

 

下の図をご覧ください。この図はマズローの欲求5段階説と金銭報酬、意味報酬を照らし合わせたものです。昭和の時代は金銭的な報酬がモチベーションになっていましたが、近年では、親和報酬、承認報酬、成長報酬といった意味報酬に関心が寄せられています。

 

 

こちらについては以下の記事に詳しく記していますので併せてご覧ください。

 

 

では、他業界でこのようなビジネスモデルを採用している企業はどこになるのでしょうか。下の図をご覧ください。大手生命保険会社のプルデンシャル生命が代表的な例と言えます。

 

プレデンシャル生命は徹底した成果連動型の評価制度を採用しており、昇格・昇給の頻度が多いことが特徴的です。また、育成における制度も細かく整備されており、パフォーマンスを高めるための体制が社内に確立されています。

 

 

ここからは、オープンハウスのビジネスモデルを詳しく見ていきましょう。次の図は、オープンハウスのUSP(差別化ポイント)を記載したものです。

 

オープンハウスでは「東京に、家を持とう。」をキャッチフレーズにしていることから、土地が狭い都内において3階建ての狭小住宅を主に展開しています。この図のマトリックスで言えば、郊外よりも都心、そしてその分、狭小でも3階建てを中心に付加価値を生みやすい分譲住宅を展開しています。当然、都内となると土地代が非常に高くなりますので、価値提供段階でさまざまな企業努力を行っています。

 

 

例えば、仕入れに関しては、不動産会社への飛び込みを1日に25件をノルマとしています。設計に関しても、変形地でも対応する力、あるいは4棟平米に5棟設計を行う設計力を保持しています。また、施工管理で言えば、庭や大理石など、顧客が求めないものは徹底的に排除し、自社一貫施工を徹底することでコストダウンを実現しています。

 

営業においても、「源泉」と呼ばれる駅前での声がけを積極的に行い、源泉での契約が30%を超えるといった非常にユニークなビジネスモデルになっています。当然ながら、ここまで徹底する上では高い組織実行力が必要になるのですが、まさにこの金銭報酬と意味報酬による信賞必罰体制を徹底することで、組織実行力を作り上げることに成功しています。

 

実際に、オープンハウスの評価制度について見ていくと、主に評価・育成・報酬・等級と4つに分けられます。評価については部門・等級別のメッセージを明確にし、育成については能力アップを心がけ、報酬に関しては成績によるメリハリの大きい報酬分配、そして等級においては部門・等級別の要件・キャリアパスの明確化を行っています。

 

 

そして、この評価制度により、業務向上や社員の成長を徹底していることが分かります。このような徹底した取り組みによって、オープンハウスでは、「20代の管理職率が76%」「若手の結婚率が34%、持ち家率が53%」そして「3ヶ月ごとの昇格機会」「20代の平均給与は東証最高額」「5年目平均年収は1025万円」「離職率は10%水準を維持」といった圧倒的な組織力を実現しています。

 

オープンハウスのビジネスモデルとは?

 

ここで、オープンハウスのビジネスモデルについてさらに詳しく解説していきます。

 

ビジネスモデルのキー 圧倒的な組織実行力
内部環境 顧客 年収500万円〜1000万円の東京で戸建てを建てたい層
販売戦略 年間3万件の資料請求をネットから獲得し、250名の直販営業により3%を契約につなげる。(全体は5万件)物件エリア内の一般客に声を掛ける源泉により契約の30%を獲得する。
提供価値 「東京に、家を持とう」というコンセプトを元に住宅を販売する。狭小地や旗竿地に付加価値を付けることで低価格で販売を行っている。
組織戦略 社員のやりきるモチベーション維持と育成体制を強化している。顧客情報を元に80名の用地担当が狭小地や旗竿地の設計を行っている。
財務戦略 源泉営業により資産回転率が高く、高い利益率を維持している。
外部環境 500万円〜1000万円の年収層で都内で戸建てを建てたいというニーズは高い。

 

まず顧客においては、年収500万円から1000万円の、東京で家を建てたい分譲戸建て層に限定しています。また、販売戦略においては、年間3万件の資料請求をネットから獲得し、250名の直販営業によりその3%を契約につなげています。全体では年間5万件の反響がありますので、インターネットからの反響が比較的高いと言えます。併せて、物件エリア内の一般客に声をかける「源泉」と言われる営業活動による契約数が全体の30%である点も非常に特徴的です。

 

提供価値においては、「東京に、家を持とう。」というコンセプトで狭小地や旗竿地に付加価値を付けることで、低価格で販売を行っています。

 

組織戦略においては、社員のモチベーション維持と育成体制を強化しており、営業だけでなく設計など間接部門にも適切な評価制度を敷いています。実際に、設計部門は顧客情報をもとに、80名の用地担当が狭小地や旗竿地の設計水準において適切な評価を徹底しています。また、財務戦略においては、源泉営業により資金回転率が高く、非常に高い利益率を維持している点が特徴的です。

 

さらに、外部環境で言えば、500万円から1000万円の年収層で都内で戸建てを建てたいというニーズは非常に高く、このような外部環境から逆算してビジネスモデルを構成しています。

 

最後に、オープンハウスのビジネスモデルのフィット構造について見ていきましょう。

 

顧客と外部環境がフィットしている

まず一つ目が、顧客と外部環境がフィットしているという点です。東京で家を建てたい層に狙いを定めており、外部環境を踏まえても、一定数の市場が存在することは明確で、顧客と外部環境がフィットしていると言えるでしょう。

 

顧客と販売戦略がフィットしている

二つ目に、顧客と販売戦略がフィットしている点です。顧客は、住み慣れている、知り合いが多い、子どもの学校を変えたくないなど、現在住んでいる場所から大きく動きたくないと考えていますが、現在の収入で手が届く戸建ては近隣にないと思い込んでいます。このような顧客には、駅前で「ナンパ」をし、手が届く戸建てがあることを伝える「源泉営業」は非常に効果的です。この観点で顧客と販売戦略がフィットしていると言えます。

 

販売戦略と組織戦略がフィットしている

三つ目に、販売戦略と組織戦略がフィットしている点です。一般的な営業とは違い、呼び込みなどの源泉営業はモチベーションを維持することが困難ですが、組織戦略上でモチベーション管理を徹底している点で双方がフィットしていると言えます。また、営業以外にも、1日に25件の飛び込みを行う仕入れ部門や、条件の悪い土地を設計で解決する設計部門などを見ても、全社的なのモチベーション管理を成功させていると言えます。

 

提供価値と財務戦略がフィットしている

四つ目に、提供価値と財務戦略がフィットしている点です。源泉営業による早期販売で資金回転率を上げ、その分、価格に還元している点で、提供価値と財務戦略がフィットしていると言えます。

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkbox信賞必罰モデルは金銭報酬と意味報酬をかけ合わせ適切な報酬体制を構築するビジネスモデルである

checkbox他業界で信賞必罰モデルを採用している企業はプレデンシャル生命である

checkbox信賞必罰モデルは営業だけでなく、全部門に対して行うことが重要である

 

以上、今回は東京都のオープンハウスに見る信賞必罰モデルについて考察してきました。今後の企業経営においては、人材の質がより一層求められます。オープンハウスの組織マネジメントを参考に、ぜひ自社の戦略を見直していただければと思います。

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