checkbox編集を終えて

 

現在ノウフルの7月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援するこどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境好転までには至っていない。

 

実際にノウフル経由で経営のご相談を毎月20社以上頂き、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。

 

なお、私は述べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上のご支援、3000人以上の建築経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。

 

checkboxUSPに基づいた今後の差別化戦略を考える

 

ではまず自社の差別化戦略を考える上で、3Cという考え方について触れてみたい。3Cとは、自社(Company)・競合(Competiter)・顧客(Customer)を対象として、差別化要因を明確にする手法を指す。下図のように3つのCの中で最適な場所を強みとして強化するのである。

 

 

 

この最適な場所はいうなれば「自社の得意分野の中で、顧客ニーズを満たし、かつ競合が参入できない領域」を指す。この差別化要素をUSP(Unique Selling Proposition)と言う。

 

 

例えば、優秀企業のUSPは以下の通りである。このように、自社のUSPを考える上でどのような要素を洗い出すべきなのかについては、トレンドを押さえながら考えることが重要である。

 

 

例えば、下図を見てほしい。空間設計というテーマにおいては、「大空間+ファミリーリビング」そして、「軒下空間+アウトドアリビング」というものがトレンドとしてある。そして、省エネについては、「高断熱+全館空調+ZEH」がトレンドとして存在する。

 

 

さらに、共働きという観点で言えば、「家事楽+時短動線・設備」などが挙げられる。このようなトレンドに追随する形としてコロナという外部環境を軸に「ワークスペース確保・居心地・省エネ・抗菌抗ウイルス」という要素がトレンドとして浮上した。

 

そしてさらに、近年では、”高付加価値”という観点で「リビングのブランディング化」が進んでいる。例えば下図を見ていただきたい。積水ハウスでは、家族がそれぞれの多様な暮らしを楽しむという観点で、ファミリースイートという商品を開発している。

 

 

そして、ヘーベルハウスでは、重鉄・システムラーメン構造が叶える無柱空間をふんだんに取り入れた全方位への広がりを特徴としたTheLivingという商品を展開している。

 

このように、リビングをブランディングするという観点が今後トレンドとして強くなっていくのではないだろうか。この動きは大手ハウスメーカーだけでなく、スタートアップ企業でも見られる。VUILDというスタートアップ企業では、施主が自らデザイン設計ができるリスティングというアプリでの住宅販売を展開している。

 

 

 

既にここ半年で数10数棟の施工に向けて体制を構築している勢いのあるビジネスモデルであるが、このようなアプリにおいても、柱のない空間をベースとした3種類の雛形を用意して自由に設計できるというルールを設けている。このように、空間を意識した家作りということが今後、トレンドとして浮上してくると考えられるため、この観点を踏まえてしっかりと商品開発を強化すべきであろう。

checkbox最後に

このように、今後、棟数が減少していく中で、USPに基づいた差別化戦略が重要になる。また、外部環境における深刻度も大きく変わる。今後の市場を見れば「現状維持は後退」であり、何もしなければ競争の中で淘汰されてしまう。

 

このような状況下において「茹でガエル」にならない為には常に危機感を持ち、ヒト・モノ・カネに次ぐ「情報」についてアンテナを張ることが重要であり、一人でも多くの建築従事者の方々にとってノウフルが貴重な情報源になればそれ以上のことはない。

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