checkbox編集を終えて

 

現在ノウフルの2月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援する、こどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境の好転までには至っていない。

 

実際にノウフル経由で経営のご相談を毎月20社以上いただき、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。中でも今回は、多くの住宅会社が採用している「多角化戦略」について触れてみたい。

 

なお、私は延べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上を支援し、3000人以上の経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。

 

checkbox住宅業界の解体市場関係

 

今回は、住宅業界の多角化を考えるという観点で、解体市場について見ていきたい。

 

まず、住宅業界における解体サービスは、以下の三つを前提としている。一つ目は、建築解体である。建築解体とは、古いもしくは不要な建物を取り壊す作業を行うことを指す。次に、廃棄物処理である。これは、建物の解体から発生する廃棄物を適切に処理することを指す。そして、環境配慮である。有害物質の除去、土壌汚染の防止など、環境への影響を最小限に抑えることを指す。

 

 

このような取り組みを行う解体市場は、どのような成長曲線を描くのだろうか。

 

下の図をご覧いただきたい。この図は解体市場拡大のドライバーを示している。一つ目が、高度経済成長期の建物の老朽化である。そして二つ目に、空き家の増加がある。

 

 

次の図は、日本における住居のボリュームを示したものである。人が居住している住宅は、全体で6270万戸あると言われている。その中で、1980年以前に建てられた住宅は1300万戸に上る。この数字は全体の20%を占めており、40年以上経過している物件がそれほどあるという計算になる。また、その中でも高度成長期に建てられた建物が多くあり、それを考えると、50年以上経過している物件も多いと言える。

 

 

このような点を踏まえると、今後さらに住宅解体の市場規模は拡大していくであろう。

 

次に、空き家の増加である。空き家については全国で848万戸あると言われており、これは全体の13・4%を占める。なお、この空き家の定義にはいくつかあるので順に説明しよう。

 

 

一つ目は売却用の住宅で、新築・中古を問わず売却のために空き家になっている住宅である。二つ目は賃貸用の住宅で、新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅である。三つ目の二次的住宅は、別荘など、普段は人が住んでない住宅を指す。

 

その他の住宅は、いわゆる空き家と言われるものである。その他の住宅については349万戸あるとされており、固定資産税や都市計画税などの税金がかかり、老朽化による近隣トラブルなどになるケースがあるため、早急に解体をすることが望まれている。

 

以上のことを踏まえると、住宅解体の戸数、市場規模ともに、今後は増加していくと考えられる。下の図は、住宅解体市場規模予測を示したものである。ご覧の通り、解体市場は2030年に向けて1・5倍の水準まで市場規模を拡大することになるであろう。

 

 

checkbox最後に

 

以上、今回は「住宅業界の多角化 解体市場について考える」というテーマで見てきた。

 

今後、住宅業界の市場縮小が進むにつれて、多角化戦略が企業存続の鍵となることは間違いない一方で、縮小自体は比較的緩やかに進行すると考えられる。このような状況下において「茹でガエル」にならないためには、常に危機感を持ち、ヒト・モノ・カネに次ぐ「情報」に対してアンテナを張ることが重要であり、一人でも多くの建築従事者の方々にとってノウフルが貴重な情報源になればそれ以上のことはない。

 

 

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