タマホーム
今回は「圧倒的ローコスト住宅の発明で10年で全国制覇を成し遂げたタマホーム」について触れてみたいと思います。
まず、タマホームの概要をお伝えします。
タマホームは木造住宅の注文建築を行っている会社で独自のコストダウンロジックで低価格路線を展開し、10年で全国制覇を成し遂げた企業になります。近年は、不動産や海外展開など幅広い事業領域の拡大を行っており、年間棟数も6000を超える非常に勢いのある会社です。
タマホームがどのようなビジネスモデルを展開し成功しているか、について今回は考察してみたいと思います。
なお、本記事は戦略論について論じるため、基本的な戦略の考え方をこちらの記事を踏まえて把握した上で読み進めてください。
では本日の目次をお示しいたします。
中抜きモデルとは?
まず、タマホームのビジネスモデルである中抜きモデルを説明します。
中抜きモデルとは、端的に言えば、直接卸や小売を排除し消費者に到達することで中間マージンをカットし、低価格販売を実現するビジネスモデルです。
このビジネスモデルを他業界で採用しているのがグリコになります。オフィスに置き菓子を設置する「オフィスグリコ」は卸と小売を経由しないビジネスモデルを展開しています。中間マージンをカットすることにより、低価格で商品を消費者に提供することが可能になるのです。
では実際にタマホームのビジネスモデルを見ていきましょう。タマホームはローコスト注文住宅の市場を展開しており、低価格で高品質な住宅を提供しています。
低価格が実現出来る理由は5つあります。生産者と直接繋がる新しい流通システムを採用している点、施工を直接管理している点、住宅設備の大量発注によるコストダウンを行っている点、間取りの作成提案や資金計画を1人が担当している点です。
このような取り組みを行うことによって、坪単価24.8万円(総額税抜1.781万円)という圧倒的な低価格を実現しています。この中でも特に生産者と直接繋がる新しい流通システムが非常にユニークと言えます。
下の図は、タマホームの流通構造を図にしたものですが、従来型の流通と比較し、原木市場や不買問屋、木材市場、木材店を経由せず直接森林保有者と契約しているのです。このように中抜きを行うことによって圧倒的な低価格を実現しているのです。
また、国内の森林業者と提携していることもあり、国産材を多く使うことも特徴の一つと言えます。実際に1棟当たり70%を超える国産材を使用しています。
タマホームのビジネスモデルとは?
ではタマホームのビジネスモデルをさらに詳しく見ていきましょう。
ビジネスモデルのキー | 中間マージンカットによるローコスト商品の提供 | |
内部環境 | 顧客 | 低価格で性能の高い注文住宅を希望する若年一次取得層をメインとする。また、20代も併せてターゲットとして展開している。 |
販売戦略 | テレビCMで認知度を上げ、総合展示場や単独展示場で販売を行う。 | |
提供価値 | 坪単価24.8万円を売りにローコスト住宅を提供している。近年では分譲商品も展開している。 | |
組織戦略 | 創業者である会長の圧倒的なトップダウン体制が特徴である。また、間取りの作成・提案や資金計画を一人が担当している点もユニークである。 | |
財務戦略 | 広告宣伝費を大幅に使うことで販売力を高め、その分利益が減るもののスケールで利益を積み上げている。 | |
外部環境 | 巨大市場であるローコスト市場を中心に展開している。 |
タマホームのビジネスモデルは、中間マージンをカットすることによるローコスト商品の提供になります。ターゲットは低価格で性能の高い注文住宅を希望する若年一次取得者層をメインとしています。また、20代も合わせてターゲットとして展開している点が非常に特徴的です。
販売戦略においては、テレビCMで認知度を上げ、総合展示場や単独展示場で販売を行うといったマスを活用した販売戦略が特徴的です。提供価値においては、坪単価24.8万円を売りにローコスト住宅を提供しており、近年では分譲住宅も展開しています。
組織戦略で言えば創業者である会長の圧倒的なトップダウン体制が特徴的です。また、間取りの作成提案や資金計画を1人が担当している点も非常にユニークと言えます。
財務戦略において、広告宣伝費を大幅に使うことで販売力を高め、その分利益が減るもののスケールで利益の積み上げを行っています。またタマホームを取り巻く外部環境としては、巨大市場にあるローコスト市場が存在しこの市場から逆算してビジネスモデルを構築していると言えます。
この中で、販売戦略について掘り下げましょう。
お伝えしたように、タマホームはマスメディアを活用した集客を得意としております。一次取得者層であるターゲットだけでなく、20代に向けてのTVCM、または20代30代の購入者が相談するような団塊層に向けても好感度の高いタレントを採用する、あるいはその上のリタイヤ層に向けても、相撲やプロ野球などで広告を配信する全世代を対象としたメディア戦略が非常に特徴的です。
また、組織戦略でお伝えしました会長のトップダウンにおいても、創業からトップダウンならではの拡大展開を展開しています。
まずタマホームは、アイフルやアキュラホームといったハウスメーカーを研究し、独自のコストダウンロジックを確立し、会社を設立しました。その後、短期間で地元福岡でシェア拡大を成功させ、その後銀行の反対を押し切り大量に店舗出店し、設立10年目で全国制覇を果たしています。
設立15年目においてシェアが頭打ちになり、初めての赤字になるものの創業者である会長のアイディアで、地域限定商品といった商品開発を行い、利益が回復します。
さらに、設立20年目においては、不動産業を強化し5年で3倍に上る1000棟の分譲住宅を販売し、現在は海外展開を視野に入れ日本的慣習である手形を廃止するなど、積極的に拡大戦略を展開しています。
これらの戦略方針は全て創業者がトップダウンで行っており、このトップダウンのビジネスモデルが非常にスピードを意識した展開になっていると言えます。下の図をご覧ください。
下の図は企業成長のあるべき姿をまとめたものです。
経済が成長期であり、確実性が高く、競争が緩やかな時代はマネジメントの時代と言われ連続的な成長が求められます。一方で経済が成熟化衰退期、また確実性が低く、競争が激しい時代においては非連続的な成長、つまりリーダーシップが求められると言われております。
まさにタマホームはこの非連続的な成長を強いリーダーシップのもとで実現しており、時代に沿った戦略的成長と言えます。
また、財務についても触れてみましょう。財務については、他社と比較すると比較的粗利は低い傾向にあります。
一方で、労働分配率や1人当たり給与においては他社と比較すると低い傾向にあり、帳尻を合わせていると言えます。一方で、広告宣伝費率については他社の5倍(多い時は10倍)近くかけるといった戦略が非常に特徴的であり、マスメディアを活用した認知度の獲得を積極的に行っています。
では、このビジネスモデルがそれぞれの要素とどのようにフィット構造を産んでいるのでしょうか。
①提供価値と外部環境がフィットしている
一つ目は提供価値と外部環境がフィットしている点です。デフレ経済において、ローコストを提供価値としている点で外部環境とフィットしていると言えます。また、24.8万円という他社の半額前後の価格設定は市場への影響度は非常に高いといえるでしょう。
②提供価値とターゲットがフィットしている
二つ目に提供価値とターゲットがフィットしている点です。低価格商品を展開している上一次取得者だけでなく、20代にも対象を広げ、需要の先食いをしています。20代でも購入できる価格という点で、提供価値とターゲットがフィットしていると言えるでしょう。
③組織戦略と販売戦略がフィットしている
三つ目に組織戦略と販売戦略がフィットしています。間取りの作成提案や資金計画を1人が担当しており、効率的な販売体制を組んでいま組織戦略上分業におけるデメリットを受けることがなく、販売戦略と組織戦略がフィットしていると言えるでしょう。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
中抜きモデルとは中間マージンをカットし、低価格販売を実現するビジネスモデルである
他業界で中抜きモデルを採用している企業はグリコである
タマホームの成長戦略はリーダーシップの時代と適した成長を遂げている
以上、今回はタマホームにおけるビジネスモデルを見て参りました。
現在は確実性が低く、競争が激しい時代と言われております。そのような中で、タマホームの強いリーダーシップにおける非連続的な成長は自社の企業経営においても非常に参考になるのではないでしょうか。是非タマホームの取り組みを踏まえた上で、自社のビジネスモデルについて改めて見直す機会を作って頂ければと思います。