今回は「50以上の多角化&ホールディングス経営で200億の大台を超えたジョンソンホームズ」について触れてみたいと思います。
まず最初にジョンソンホームズの特徴をお伝えします。
ジョンソンホームズはヨーロッパ風の輸入2×4住宅のインターデコハウスを展開しています。住宅に限らず、「生活デザインの総合商社」と称して、建築以外にも様々な事業を展開しています。現在の事業は50を超え、合計売上げが200億を超える大型の多角化経営を行っており今非常に勢いのある会社です。
こここからはジョンソンホームズはどのようなビジネスモデルを展開し成功しているか、について今回は考察してみたいと思います。
なお、本記事は戦略論について論じるため、基本的な戦略の考え方をこちらの記事を踏まえて把握した上で読み進めてください。
では本日の目次をお示しいたします。
多角化モデルとは?
ここからはジョンソンホームズのビジネスモデルである多角化モデルについて説明していきます。
多角化モデルとは、顧客に対して同時に提供される製品やサービスを扱う周辺事業を統合することによって価値を作り出すビジネスモデルです。自社のある一つの領域だけではなくて、周辺事業の商品もまとめて統合し提供価値を高めるという考え方になります。
他業界でこのような取り組みを行っている代表的な企業は楽天です。
楽天は大型のECモール事業ですが、近年では周辺事業に参入し、楽天ポイントを並行して利用できる体制を構築することでシナジーを確立しています。楽天ポイントだけでなく、2000万人の会員データベースの有効活用などにより相乗効果を高めており楽天経済圏と言われることもあります。
では実際にジョンソンホームズのビジネスモデルについて見ていきましょう。
ジョンソンホームズでは下の図の通り、様々な事業を展開しています。住宅事業においては、住宅建築だけでなく、保健事業・リフォーム・リノベーション・分譲・マンションと幅広く展開をしています。それだけではなく、その下請け事業にあたる建材事業・イベント・貿易・エコ事業など、様々な事業を展開しています。さらには、同業の住宅事業会社に対して、教育研修・FCなどでノウハウを提供する事業を行っています。
それだけでなく、生活事業として、インテリアショップ・アパレル・ホテル・レストラン・カフェ・デイサービスなどの様々な事業を展開しております。このことにより、総合力として建築事業の理念である「住んでからの幸せ」を実現する企業努力を行っています。
下の図をご覧ください。下の図は、アンゾフの成長戦略と言われるものです。アンゾフの成長戦略とは、「既存のサービス」「新たなサービス」「既存の市場」「新たな市場」と4つの象限に分け、適切な順番で事業拡大をしていくことが望ましいといった考え方を示したものです。
ジョンソンホームズにおいても、既存サービスを既存の市場で展開し、次のステージで新サービスを既存の市場で展開しています。さらには新サービスをそのまま新市場に展開し、最終的には未知の領域である新市場において新サービスを展開するといった流れで展開をしていることが特徴的です。
また、ジョンソンホームズの特徴として、ホールディングス経営という考え方があります。
ホールディングス経営とは、事業会社をそれぞれ束ねるホールディングス会社を作り、それぞれのマネジメントを行うという考え方です。オーナーはホールディングス会社の社長として、それぞれの事業の社長とコミュニケーションを図ることで、全体最適を行っております。
ホールディングスのメリットは多岐にわたります。一つ目に、オーナー体制ならではのトップ意識を醸成することができます。また、二つ目に事業承継が容易である、三つ目に一人経営者番頭経営から脱却できる、4つ目に責任意識により成長スピードが増す、5つ目に企業家希望層が集まる、6つ目に経営のリスク分散になる、7つ目に人事などの中央コストが減るという点が挙げられます。
このようなメリットを享受しながら、効率よくホールディングス経営を行っている点がジョンソンホームズの特徴と言えます。
このホールディングス経営においては重要な考え方が三つあります。順に説明いたします。
①ホームラン思考からの脱却
一つ目が、ホームラン思考からの脱却です。多角化経営はホームランではなくヒットを量産するという考え方です。実際にジョンソンホームズは50以上の事業を立ち上げているものの、5年以内に同数の事業を畳んでいます。また、50事業で200億ではありますが、住宅事業100億であり、1事業につき2億前後です。あくまで10億以上のホームランではなく2億前後のヒットを量産するという考え方を押さえることが重要です。
②ビジョンを強く浸透させる
二つ目に、ビジョンを強く浸透させるということです。業態が違えば連帯感が出にくくなるため、ホールディングスとして全事業を束ねる為には共通のビジョンが必要です。ビジョンを通して一本串を通し、連帯感を構築することが重要です。
③再現性が高い経営システムの構築
三つ目に、再現性が高い経営システムの構築です。事業が多くなればその分、経営構造を構築することが重要になります。その上で再現性の高い経営システムを構築することが重要です。
以上を踏まえてジョンソンホームズの実際の取り組みを見てみましょう。まず二つ目の「ビジョンを強く浸透させる」についてですが、ジョンソンホームズでは下図のようにすべての企業を会社をビジョンで結束するといった取り組みを行っております。
また、三つ目の経営システムにおいても、経営計画・業績管理、成果配分・会議&報告・委員会・能力開発といった要素をシステム化することで効率的に事業を増やしています。
ジョンソンホームズのビジネスモデルとは?
ではここからは、ジョンソンホームズのビジネスモデルをさらに詳しく見ていきましょう。
ビジネスモデルのキー | 事業間のシナジー | |
内部環境 | 顧客 | ヨーロッパ風の輸入住宅を求める層をターゲットとしている。 |
販売戦略 | 年間3万人を集客するインテリアショップなど別事業からの送客を行い、相乗効果を高めている。 | |
提供価値 | ヨーロッパ風の輸入住宅を展開している。また、規格住宅のCOZYも展開しており、幅広い層に価値提供している。 | |
組織戦略 | ホールディングス経営にて独立採算制で事業を展開している。また、ビジョンによる結束感が強く、他事業との相乗効果を創出している。 | |
財務戦略 | 採用などの中央コストが分散する為、固定費の負担が少なく財務効率が良い。 | |
外部環境 | 本格的な輸入住宅を展開しているプレイヤーが少なく、ニッチ市場を確立している。 |
ビジネスモデルのキーは事業間のシナジーであると言えます。ジョンソンホームズの顧客はヨーロッパ風の輸入住宅を求める層がターゲットと言えます。販売戦略においては年間3万人を集客するインテリアショップなど、別事業からの送客を積極的に行い相乗効果を高めています。
提供価値においては、ヨーロッパ風の輸入住宅を展開しており、また規格住宅のCOZYも展開しており、幅広い層に価値提供をしています。組織戦略は、ホールディングス経営にて独立採算制で事業を展開しています。また、ビジョンによる結束感が強く、他事業との相乗効果を創出しています。
財務戦略においては、採用などの中央コストが分散するため、固定費の負担が少なく財務効率が良いと言えます。そして、外部環境は本格的な輸入住宅を展開しているプレイヤーが少なく、ニッチ市場が確立されています。ジョンソンホームズのビジネスモデルは、まさにこの外部環境から逆算して作られていると言えるでしょう。
では、このビジネスモデルにおいて、それぞれの要素がどのようにフィットしているのかについて見ていきたいと思います。
①提供価値と販売戦略がフィットしている
一つ目が、提供価値と販売戦略がフィットしている点です。輸入住宅を展開している中で、輸入住宅と関連性が高い海外のインテリアを扱ったショップを展開しています。月間3万人が来店するインテリアショップと住宅の顧客相性が良く、住宅顧客にもインテリアの半額クーポンを提供するなど適切なシナジーを生んでいます。
②提供価値と組織戦略がフィットしている
二つ目に、提供価値と組織編戦略がフィットしている点です。ホールディングス体制の肝である経営のシステム化が組織上徹底されています。また、システム化に強い点が規格住宅事業の立ち上げとフィットしていると言えるでしょう。
③財務戦略と提供価値がフィットしている
三つ目に、財務戦略と提供価値がフィットしています。採用などの中央コストが分散する為、固定費の負担が少なく財務効率が非常に良いです。結果的に提供価値よりもリーズナブルに価値を提供することに成功しています。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
多角化モデルとは周辺事業を統合することによって価値を作り出すビジネスモデルである
他業界で多角化モデルを採用している企業は楽天である
多角化モデルを展開する上で3つのポイントを押さえることが重要である
以上、今回は北海道のジョンソンホームズに見る多角化モデルについて考察をいたしました。今後、住宅事業の成長が鈍化すると言われております。そのような中で、多角化という観点は非常に重要なキーワードであり、その上でホールディングス化経営という考え方も非常に重要になっています。
長期的な戦略を見下げ見据える上で、ジョンソンホームズの取り組みを参考に、自社の経営戦略を描いて頂ければと思います。