今回は、住宅業界における組織活性化という観点で、理念構築について見ていきます。
まず下のグラフ図をご覧ください。この図は、住宅業界の企業戦略を示したものです。
事業戦略・組織戦略・財務戦略をまとめて企業戦略と言いますが、活性化は組織戦略の一つの要素を指します。組織のやる気を高めるためのポイントについて見ていく前に、図2のようなことはないでしょうか。これは、ある経営者の悩みです。
最近は組織が中だるみしているな・・・。
報酬制度を見直したけどお金だけでは不十分なようだ・・・。
あの有名な会社は固定給なのに社員がいきいきしているし・・・。
一体何が違うんだ。
理念で社員をひっぱることが大事?
そんなこと綺麗事でしょ・・・。
このように、組織の風土があまり良くなく、組織実行力が低いことを課題とされている経営者は多いのではないでしょうか。この問題を解決するためには、自社が目指すべき方向性を示すことで組織のやる気を高める「理念構築」という考え方が重要になります。
では本日の目次をお示しいたします。
では、どのようにすれば組織は活性化するのでしょうか。次の図をご覧ください。この図は、マズローという学者が唱えた欲求5段階説です。
下から生理的欲求・安全欲求・社会的欲求・尊厳欲求・自己実現欲求とあります。生きるために最低限必要となる生理的欲求が満たされれば、次に身の安全を保障する安全欲求が生まれ、それが満たされれば組織に属する社会的欲求が生まれます。そして、それが満たされると尊厳欲求として認められたい欲求が生まれ、最終的には自己実現欲求へとつながるという考え方です。
これは、下位の欲求から順番に満たしていく考え方とも言われますが、生理的欲求がなくても自己実現欲求が現れるケースもあるのです。そしてまさに、この自己実現欲求を満たすことが組織の活性化につながります。また、自己実現欲求を満たす手段は、企業側の志として理念構築、個人のやりがいとして組織開発というふうに分かれています。
今回は、この理念構築について詳しく見ていきます。
組織開発・個人のやりがい・個人の自己実現を踏まえた活性化については、こちらの記事を参照ください。
理念構築とは
では、自己実現・超越を目指す上で、どのような観点が必要なのでしょうか。図5をご覧ください。この図は、ベクトルスコープを縦軸と横軸で示しています。
個人や組織という枠を超えた社会全体に対する貢献が自己実現であり、これらは自己超越にもつながるのです。このような考え方は、マーケティングの観点でも語られています。従来のマーケティング1・0では製品だけを売っていたのですが、マーケティング2・0においては、製品を一方的に売るだけではなくて、顧客のニーズから逆算するという流れになりました。そして現代のマーケティング3・0では、商品や企業が社会課題を解決することを求めるCSVという考え方が主流になっています。
下の図をご覧ください。この図は、スターバックスの取り組みの一つです。
スターバックスは、数年前からプラスチックから紙ストローへの切り替えを進めています。当然ながら、自社の商品力あるいは顧客のニーズだけを考えると、紙ストローは使い心地が良いものではありませんので、本来はこれに切り替える発想は生まれません。しかし、社会課題の解決が必要な時代へと変わり、このような取り組みを行っているのです。
下の図は、「企業は社会的・環境的課題に取り組むべきか」とのアンケートに対する回答を出生年別に示したものです。1965年生まれの人に比べて、1997年生まれの人は、かなりの比率で「取り組むべきだ」と答えていることがわかります。
また、最近ではSDGsなどの取り組みもありますので、これらの取り組みを合わせることによってコミットメントスコープを上げることが非常に重要なのです。また、この理念構築には副次効果があります。そもそも理念とは、企業が活動していく上での基本的な価値観ですので、経営者の企業使命を明確にし、それらを社内外に発信することで、社員の結束強化と主体的な活動の促進につなげることができるのです。
例えば、現場でAとBどちらの方向に進むべきかとなった際に、理念があれば、社員一人一人が細かい意思決定ができるようになります。
このように、理念を構築し浸透させることによって、組織結束力を高める副次効果があるのです。そもそも、下の図にあるように、住宅業界は機能分業制で展開しているため、部署ごとの分断によるトラブルが多く発生しています。
このような状況において、理念を活用した組織結束力の構築が有用であることはおわかりいただけるでしょう。
企業のビジョンとバリュー
理念構築では、下の図のように、会社の理念を考えるだけではなく、ビジョンやバリューにも目を向けることが重要です。
理念は英語でミッションと言いますが、ブランドを通して果たす社会的使命を指します。そしてビジョンは、ブランドを通して目指すゴールを指します。最後に、バリューはブランド展開する上での価値観を指します。ですから、ミッションという方向性に対しビジョン(目標)を掲げ、そこに向けてバリュー(行動指針)を持つ必要があるのです。
ミッションとビジョンの位置づけがわかりづらいので、事例で説明しましょう。次の図は、ある企業のビジョンとミッションを記したものです。
ビジョンには、売上30億円・ホールディングス化・上場を掲げています。そしてミッションは、地域における貢献です。つまり、ビジョンとは目標であり、企業経営の目的になります。企業経営を行う先にどのような目的があるのかを定量的に示すわけです。そして、ミッションは目的に近いと言えます。目標との対比で言えば、それらがもたらす結果のようなものです。
このように、理念構築においては、ミッションだけではなく、ビジョンとバリューも同時に作り上げることが重要です。このミッションにはさまざまなパターンがありますので、順に説明していきましょう。
一つ目が商品型です。競争力に優れた商品に対する好感度を高めることに力点を置いて組織の実行力を高める考え方です。次に従業員型です。従業員感動満足に力を入れることにより、高い実行力を実現する考え方です。最後に顧客型です。顧客感動満足に力点を置くことで高い実行力を発揮しようとする考え方です。次の図で、それらのベンチマークを紹介します。
商品と従業員のセットで「モノ作り型理念」であれば、伊那食品などが当てはまります。さらに見ていくと、商品と顧客のセットは「ホスピタリティ型理念」になるので、ディズニーランドやスターバックスが当てはまり、顧客と従業員のセットは「フレンドシップ型理念」になるのでサウスウエスト航空が当てはまります。最後に、商品・顧客・従業員のセットに関しては「コンプリート型理念」ということで、リッツカールトンなどが当てはまるのです。このような理念を構築する手法としては、下の図のようなものが挙げられます。
社員インタビューや社員アンケート・ワークショップ・幹部検討会を行いながら、理念を構築していきます。そして、それらの理念を浸透させる手法には、クレド・トップメッセージ・社内報・ブランドブック・コンセプトムービーなどがあります。
これらの浸透においては様々なステップがあることを理解しましょう。理念の浸透においては、さまざまなステップがあることを理解しましょう。
まず第一段階は理解です。発信メッセージについて理解ができているレベルを目指します。そして次に共感・向上意欲・行動・習慣化・伝道とステップが上がっていきます。
理念の浸透については、グーグルフォームなどを使用して点数化することにより、現状の立ち位置を測るのが良いでしょう。また、下の図は、理念を達成することによって地域にどのような効果をもたらしているのかを1冊の本にまとめたケース、あるいは接客面での行動規範を漫画にして1冊の本にまとめたケースです。
また、下の図にあるように、自社の理念ムービーを社内で発信し浸透させるといった取り組みもあります。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
組織のやる気を高めるためには「理念構築」が重要である。
組織が活性化するには、自己実現の欲求を満たす必要がある
組織結束力を高めるには、ビジョンとバリューを定めることが重要である
組織理念は、理解に続き、行動・継続・伝道のステップを踏んで浸透させる
以上、今回は、組織のやる気を高めるための理念構築のポイントについて見てきました。
このような取り組みを行うことによって、しっかりと組織のやる気を高めることが重要です。