「営業の型」は人によって違い、決まった勝ちパターンはありません。各営業マンがキャリアの中で自分に合った勝ちパターンを確立していくことが一般的でしょう。一方で、顧客の世代が変わる中で価値観やスタイルが合わなくなってきたと感じるケースもあるのではないでしょうか。
今回は若い見込み客に対してどのような営業スタイルが適切なのか、について触れてみたいと思います。
こちらはある営業部長のお悩みです。
最近お客様の年齢が下がってきているな・・・。
どんどん自分との年齢の距離が空いてきた・・・。
若手の営業に指導をするも「部長の営業手法は古臭い」という反応。
確かに「夜討ち朝駆け」の営業は通用しないしな・・・。
確かに、最近の若手は友達営業で懐に入るのがうまくてお客様とすぐに打ち解ける。
とはいえ、最近の若手は友達営業で関係構築はうまいがイマイチ決定力がないんだよな・・・。
営業対象がいつの間にか自分の子供くらいになってしまい、長年かけて構築した勝ちパターンがはまらなくなってきた・・・とお感じの方は多いのではないでしょうか。本日はこのようなお悩みについてどのように対処すべきかをお伝えいたします。
では本日の目次をお示しいたします。
変化する住宅営業
住宅営業は長い歴史の中で時流に合わせて変化し続けています。例えば、従来は営業は押しが強いプッシュ型営業が主流でしたが、最近ではプル型、いわゆる引きの営業の方が主流になっているとお感じになるのではないでしょうか。
営業ノウハウ本を見ても全く営業しないがファンがつく、といったそんなテクニックが広く浸透しております。若手の営業もどちらかと言うと押しが弱いが友達になるのは早い、といった営業スタイルに変わってきたとお考えの営業職の方もいるのではないでしょうか。では本当にそのような関係構築型の営業が勝ちパターンなのか、について触れてみたいと思います。
下図をご覧ください。長い歴史の中で様々な営業スタイルが生まれました。最初は昭和ならではのプッシュ型営業ですね。夜討ち朝駆けと言われる飛び込みをして無理やり契約書もらうスタイルです。しかし、一部の業界で社会問題化した為、反動でプル型の営業、狩猟型ではなく農耕型の営業が浸透いたしました。
さらにプッシュ型の亜種として、いわゆる分譲不動産業界を中心に一匹狼型と呼ばれる歩合中心の営業スタイルが生まれました。そしてその流れの中で、時代に適応する形で課題解決型営業が生まれました。
現在では課題解決型営業が最も重要な営業スタイルだと言われています。なお、ここではそれぞれの営業スタイルの特徴をご説明いたしますので課題解決型営業の考え方についてはこちらの記事を参照ください。
4つの住宅営業スタイル
下図をご覧ください。住宅営業のスタイルには大きく4つあり、自己主張と協調性の度合いで分類が出来ます。それぞれ順番に説明いたします。
まず一つ目が一匹狼タイプです。自信家であり、ルールよりも自分の直感に従います。多くの点で端的に言うと「気むずかし屋」、思い通りに行動出来ないくらいなら何もしないといった販売スタイルで社内などの営業ルールを守らない傾向にあります。
次に関係構築タイプです。冒頭でお伝えした若手に多い友達になるタイプの営業ですね。その名の通り顧客と強力な関係を築き、顧客のあちこちに賛同者を確保します。また、時間を惜しまず働き、顧客のニーズに応えようとします。どんな要望にも応えスタイルで非常に親しみやすい、アクのないタイプと言えます。一匹狼と真逆ですね。
そして課題解決タイプです。顧客の状況を注意深く理解しており、その理解と共に顧客の考え方に強く働きかけ、顧客の課題解決に注力します。人とは違った議論を呼びそうな見解であっても臆することなく披露します。自社の上司や幹部にも押しが強い、自己主張が強いタイプです。
そして半人前タイプです。大体営業経験3年未満の方は半人前と思いますが、この先どのスタイルに進化するかか未知数のいわゆる営業候補生です。お読みの方は自身がどのスタイルかを改めて自分の胸に手を当てて考えてみましょう。
住宅業界に求められるスタイルとは?
では、住宅業界に求められるスタイルはどのスタイルかについて説明いたします。答えをお伝えする前に、少し営業のパターンを説明をさせて下さい。
営業スタイルは業界や販売する商品の単価で大きく変わります。
図で言えば自身の営業活動が新規営業がメインか、ルート営業がメインかで分かれます。さらに商品の単価が高いか安いか、さらには報酬が固定か歩合かで分かれます。結論から言えば住宅業界は新規営業であり、商品が高額ですからそもそも関係構築型の営業スタイルでは成果が出しにくいことが分かります。
考えてみればルート営業や商品が安い場合は「いかに気に入られるか」が大事である一方で新規営業でさらには商品が高額である場合は単に仲良くなっても一筋縄ではいかないことがお分かりになるのではないでしょうか。端的に言えば営業の難易度が上がれば上がるほど関係構築型営業では難しくなるということになります。
商品の単価と言っても線引があいまいですのでここで単価についてさらに分解してみたいと思います。下図はいわゆる単価と無形度の2つの軸で業界を分類したものです。ここでは単価だけでなく商品が目に見える(有形)か目に見えない(無形)かも関わってきます。車は目に見えるが、保険は目に見えない、といった考え方ですね。
図の通り住宅業界の営業は単価が高いだけでなく、注文事業やリフォーム事業は目に見えない商品を売る為、より難易度が上がると言えるでしょう。なお、規格住宅は単価が少し下がる為関係構築型が適切と思われがちですが、あくまで住宅自体は他の業界と比較して高単価ですから関係構築型営業ではどこかで伸び悩みに陥ってしまいます。
以上を踏まえるとあるべき営業スタイルは課題解決>一匹狼>関係構築>半人前となります。若手の方が関係構築型を意識してした友達営業を行っている場合は、伸び悩む時期が来てしまうので早いタイミングで教育の仕方を見直しましょう。
組織論から見る勝ち組営業スタイルとは?
では全営業マンを課題解決型営業に切り替えることは可能なのでしょうか。結論から言えば出来なくはないですが、適正がない営業マンにおいては非常に時間がかかってしまいます。ですからここからは営業組織の陣形を見直すことで解決する手立てを説明いして参ります。
営業組織の一つ目がいわゆる一匹狼集団です。いわゆる不動産系、分譲系の会社で多くみられるパターンですが一人一人が自分たちの数字に責任をもって歩合、給料の為にやりきる組織です。歩合などで管理している営業組織はこのスタイルが適切と言えるでしょう。
次の陣形が関係構築と一匹狼型で形成されたパターンです。関係構築型は押しが弱いが協調性があり、一方で一匹狼型は押しが強いが協調性が弱いという対局の属性にあるので陣形を組むとバランスが取れた営業組織になります。
三つ目が、半人前と課題解決型で形成されたパターンです。半人前の方々がいれば、優秀な課題解決型の下につけて営業の事務サポートを行います。結果的に教育にも繋がりますので一つの理想型と言えるでしょう。
4つ目が、半人前・関係構築型・課題解決型で形成されたパターンです。ABC営業という言葉を聞かれたことは無いでしょうか。ABC営業とは営業を分業化し、アポを取る担当(アポインター)、クロージング担当を行う橋渡し(ブリッジ)、クロージング担当(クローザー)で分担します。それぞれの頭文字をとってABCと言うのですが、このタイプが非常に生産性が高いです。クロージング担当のみ課題解決型が行い、アポや価値付けを半人前が行うという教育も兼ねた理想的なスタイルです。
五つ目が関係構築型と課題解決型で形成されたパターンでセミナー型と呼ばれます。半人前あるいは関係構築の方がセミナーのアポイントを取り、課題解決型営業マンがセミナー講師をします。月2回セミナーをして、集客施策はチラシなどではなく営業マンが行うといった手法です。
このように課題解決型を揃えることが困難でも営業組織の編成で最適化を実現することが可能です。営業マンの特性を見極めて適正な人員配置を行うことが営業組織の成果を最大化する上で重要なのです。
本日のまとめ
改めて、本日のまとめをお示しいたします。
住宅営業の勝ちパターンは30年の中で変化している
住宅営業には4つのスタイルが存在する
今住宅営業に求めれるスタイルは「課題解決型」営業である
組織のスタイル構成から適切な人員配置を行うべきである
営業には人によって様々なスタイルがあります。それぞれ強みと弱みがあるので一概にどのスタイルが良いとは言い切れませんが、住宅業界においては課題解決型が一番決定率が高いと言われています。営業スタイルを急に変えることは困難ですから組織体制を見直す形で最適化をしてきましょう。