今回は「顧客満足徹底により零細リフォーム業から大型住宅業に進化した栃木県リアンコーポレーション」について考察したいと思います。

 

まずリアンコーポレーションの概要をお伝えします。創業が20年未満のまだ新しい企業ですが、リフォーム事業から始め、ゼロキューブに加盟し注文住宅事業に参画しました。特徴としては、徹底した顧客満足を追求することで多くのファンを獲得し、感動接客が評判の企業です。比較的利益率も高く、販売領域においての生産性は非常に高いと言えます。

 

 

リアンコーポレーションはどのようなビジネスモデルを展開し成功しているか、について今回は考察してみたいと思います。

 

なお、本記事は戦略論について論じる為、基本的な戦略の考え方をこちらの記事を踏まえて把握した上で読み進めてください。

 

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

CX戦略とは何か?

 

ではこのリアンコーポレーションの戦略オプションは何でしょうか。結論から言えば、CX戦略と言われるものです。

 

従来のビジネスモデルの多くは、提供するもの自体に価値を置きますが、こちらのモデルは本来の目的である購入ではなく、購入に至るプロセス自体に価値を持たせるビジネスモデルです。

 

 

CXは日本語では顧客体験と解釈します。このCX戦略を採用している有名な企業はドン・キホーテです。ドン・キホーテは格安売りにしたディスカウントストアです。単に商品を販売するだけではなくて、宝探しをコンセプトに「圧縮陳列」と呼ばれる商品を積み上げる心理手法をとっています。購買活動自体を宝探しと表現し、購買活動自体を楽しませる取り組みを行っています。

 

 

このような考え方の根底にあるのは、提供価値の切り替えです。一般的には、価格や性能、アクセスのしやすさ・味などで企業価値を高めますが、近年は物質的な満足よりも精神的な満足が重視される傾向にあります。

 

 

 

ですから接客や雰囲気、サポート体制など精神的な満足に提供価値を切り替える企業が増えています。ドン・キホーテ以外にもディズニーやスターバックス、アップルなどが代表的です。

 

下図は、国民に聞いた今一番欲しいものは何か、というアンケートデータです。バブル期においてはマイホーム・マイカー・海外旅行だったのですが、バブル崩壊後は時間・お金・健康に大きく切り替わりました。これは消費者が物質的な欲求からは充足されたので、精神的な欲求を求めるようになったことを示しています。

 

 

また、下の図をご覧ください。商品の種類や数、価格など物質的な価値は多くの企業が模倣しやすい傾向にあります。一方で購買活動の楽しさなどは模倣がしにくく、優位性を保つ上で非常に効果的なのです。

 

 

リアンコーポレーションのビジネスモデルとは?

 

では実際にリアンコーポレーションのビジネスモデルを紐解いてみましょう。

 

ビジネスモデルのキー 顧客満足を最重視した組織風土
内部環境 顧客 栃木県内における年収が低めの一次取得者層をターゲットにしている。
販売戦略 4週間前からポスティングを行う4ステップチラシを行い、またホスピタリティを重視した営業を展開している。
提供価値 ローコスト住宅商品(ゼロキューブ)を提供しているが、販売自体に価値をおいている。
組織戦略 顧客満足至上主義を掲げ、売上よりも大事な指標としてマネジメントを行っている。
財務戦略 経常利益率5%前後と比較的高めで設定している。
外部環境 商圏においては年収が低めの層が多い傾向にある。

 

ビジネスモデルのキーはやはり顧客満足を最上位に置いた組織戦略です。社内の隅々まで顧客満足が浸透している為、社員の一挙手一投足が顧客満足に向けられています。また、見学会に来場した見込み客に対して事前審査を行わなければ商談をしないというルールを設定している為営業の生産性は非常に高い点が特徴的です。

 

ここからはリアンコーポレーションのビジネスモデルにおける一貫性を見ていきましょう。リアンコーポレーションのビジネスモデルには3つのフィットポイントがあります。

 

顧客と提供価値がフィットしている

年収が低いエリアに対し、ローコストパッケージであるゼロキューブを展開している点で年収層と提供価値がフィットしています。また、事前審査の申込みをしないと先に進めない体制を徹底しており、営業生産性が高い一面も持っています。

 

組織戦略と販売戦略がフィットしている

徹底したお客様満足至上主義を組織戦略にて浸透させており、販売活動においても契約よりも顧客満足を重視しています。見学会などの販売面で既に顧客がファン化する為、営業生産性は業界平均より高い水準となっています。

 

組織戦略と提供価値がフィットしている

提供価値は住宅ではなく、「購買経験」としている為、感動接客を得意としています。また、組織戦略としてお客様至上主義を徹底している為、組織戦略と提供価値(購買経験)がフィットしています。

 

上記を踏まえて改めて、リアンコーポレーションのビジネスモデルを図解すると下図のようになります。

 

 

 

見学会から着工、譲渡に至るまで様々な細かい工夫で購買体験自体に価値を持たせていることがお分かりになるかと思います。商品はローコスト住宅ですが、住宅を建てるという工程自体に満足してもらうことで新たな提供価値を作り上げているのです。

 

ここからは実際の取り組みを簡単にご紹介したいと思います。リアンコーポレーションでは着工からの活動を撮影し引き渡しのタイミングでDVDにしてプレゼントをしています。それだけではなく、DVDを20枚ほどプレゼントするのです。多くの施主はご友人にこのDVDをお渡しするのですが、その結果、DVDを観た友人がリアンコーポレーションのファンになって来場するという仕掛けになっています。

 

 

さらにこのDVDは施工業者の名前がエンドロールに流れるのですが、何故だかお分かりでしょうか。このDVDを観た施工業者が自身の仕事に誇りを感じ、リアンコーポレーションの業務を優先的に行うようになるのです。このDVDを観た施工業者からの紹介も多いことは言うまでもありません。

 

また、下の図をご覧ください。このように定期的なオーナーの感謝祭なども開催することでオーナーとの顧客接点を多く持ちます。そのことで圧倒的な紹介獲得を実現しているのです。

 

 

下記の図をご覧ください。先程のドン・キホーテの考え方はリアンコーポレーションでも同様のことが言えます。物質的な商品の価値よりも、購買自体が楽しい、購買活動で感動するといった精神的な価値は競合企業が模倣しにくく、非常に有利な戦略といえるでしょう。

 

 

ここまで読んだ方の中には「自社でも出来ている」とお感じになった方もいるのではないでしょうか。しかしながら、単にDVDや感謝祭など表面的な取り組みを模倣しても購買活動自体を提供価値にすることは困難でしょう。リアンコーポレーションのビジネスモデルにおける最大のポイントは組織戦略です。

 

CX戦略は組織戦略ありきである

 

リアンコーポレーションの組織戦略を押さえる前にミッション・ビジョン・バリューについて説明いたします。ミッションとはブランドを通して世の中にどのように貢献するのかを明確にしたメッセージです。ビジョンというは、日々をの活動を行う中で最終的にどのような状態を目指すかを明確にしたメッセージです。そしてバリューは、ミッションビジョンを達成する為に自分たちがどのような立ち振る舞い、仕事の取り組みを行うかを明確にしたものになります。

 

 

 

リアンコーポレーションはまさにこのミッション・ビジョン・バリューを「お客様満足」と設定し、日々の社員の活動がバリューによって徹底的に顧客満足が浸透しているのです。このようにバリューを浸透させることは簡単ではありません。

 

下図のように手帳サイズのに落とし込む、毎日毎朝朝礼で唱和する、トップが常に伝え続けるといったことが重要になります。このような取り組みを行うことで徐々に組織に顧客満足至上主義の考え方を徹底して浸透させることが重要なのです。

 

 

また、下図のように自社のミッション・ビジョン・バリューをコンセプトムービーにして社員に教育をするといった取り組みも有効です。動画にて自社の哲学をまとめることで効果的に社内浸透が実現します。また、このようなムービーはHPやメルマガ、あるいは採用などにも活用が出来ますので有効な取り組みと言えます。

 

 

当然ながら、ミッション・ビジョン・バリューを新たに設定することは宗教で言う宗旨変えと同様です。リアンコーポレーションも当初はクレームが非常に多い会社だったのですが、改めて顧客満足を最上位に置いたミッションに切り替えたことで当初の圧倒的戦力が退職しました。しかし、その後ミッションに賛同した未来の圧倒的戦力が入社し、今では新卒に人気の企業になっています。

 

 

このようにまず組織戦略を起点に、提供価値を変えるということが近年の顧客の変化を踏まえると重要になります。下の図は、見込み客との対面から契約に至るお客様の気持ちや感情を表したカスタマージャーニーと言われる図になります。自社の販売フローなどを一度棚卸し、どうすれば見込み客、あるいは顧客が満足度を上げるか、を設計することが重要です。

 

 

なお、こちらのシートについては下記よりダウンロードが出来ますので必要に応じてツールを活用し、顧客満足を徹底しましょう。

 

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkboxCX戦略とは提供価値を購買ではなく購買体験に置くモデルである

checkbox他業界でCX戦略を採用している企業はドンキ・ホーテである

checkboxCX戦略は表面的な模倣では実現せず、根本的な組織戦略の見直しが求められる

 

以上、今回はリアンコーポレーションを参考にCX戦略を見て参りました。このような取り組みは今後さらに重要になりますので是非参考にしてください。

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