今回は、「5LDK市場」というブルーオーシャンで東海一を目指す愛知県のエサキホームについて考察していきます。エサキホームの特徴を簡単にご紹介します。

 

エサキホームは愛知県を中心に建売住宅を販売する住宅関連企業(工務店)です。年間販売棟数は400棟以上であり、愛知県の中でもトップシェアを誇ります。5LDKに特化した住宅販売を行っており、比較的土地が広い名古屋において多くの顧客を獲得しています。

 

 

今回は、エサキホームがどのようなビジネスモデルを展開し成功しているか、について今回は考察していきます。

 

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

ブルーオーシャン戦略とは何か?

 

まず、この会社の戦略オプションは何でしょうか。結論から言えば、ブルーオーシャン戦略と言われるものです。従来のビジネスモデルの多くは、寡占市場でいかに差別化を行うかに主軸を置いていますが、当ビジネスモデルは、いかに競合がいない市場で展開するかに主軸を置いています。血みどろの争いが繰り広げられている市場をそのままレッドオーシャンと称し、競合がいない市場を対してブルーオーシャンと呼称します。

 

 

他業界でこの戦略を採用している事例は任天堂のWiiです。任天堂のWiiは、従来のゲーム業界における「画質」「ソフト数」の勝負から脱し、「家族で楽しめるか」「健康に良いか」といった新たな視点を取り入れ、ブルーオーシャンを作り上げました。この市場においては大手競合であったプレイステーションやXboxは参入ができず、Wiiの独占市場となりました。

 

 

エサキホームのビジネスモデルとは?

 

では実際にエサキホームのビジネスモデルを見ていきます。

 

ビジネスモデルのキー 圧倒的差別化要素である5LDKの間取り
内部環境 顧客 比較的予算にゆとり、かつ建売を希望するミドル層をターゲットとしている。
販売戦略 ホームページで物件を案内し、現地にて営業を行う。また、営業時には収納など自社の優位性をアピールする。
提供価値 5LDKの間取りに特化しており、他社よりも広い間取りを展開している。
組織戦略 仕入れがビジネスモデルの要となる為、土地仕入れを含めた「開発・技術センター」を有する。用地に併せて営業所を配置する組織体制を採っている。
財務戦略 大型区画を仕入れる為、自己資本比率は低く財務負担は大きい
外部環境 比較的大きな土地がある愛知県を中心に展開する。近年では岐阜や三重にも出店を行っている。

 

エサキホームは、建て売りにもかかわらず、圧倒的な広さを持つ5LDKの間取りで優位性を維持しています。また、大型区画を仕入れるために開発・技術センターを持ち、分業制で展開をしています。営業時には収納など自社の提供価値に即した提案をするため、競合負けするケースも少なく、営業効率が良い点が特徴的です。

 

では、エサキホームのビジネスモデルにおいて、一貫性はどうでしょうか。三つの観点でフィットポイントが構成されています。

 

①外部環境と提供価値がフィットしている

比較的土地が広い商圏において5LDKの物件を提供していることで、外部環境と提供価値がフィットしています。また、三重県・岐阜県と土地が広いエリアに展開することで、ビジネスモデルを広げることに成功しています。

 

②提供価値と販売戦略がフィットしている

ホームページで予約を獲得し、現地で物件の説明をしています。営業時に収納など自社の優位性を伝えており、販売戦略と提供価値がフィットしています。

 

③提供価値と組織戦略がフィットしている

開発・技術センターという用地を中心とした間接部門を部門化し、店舗として独立させた組織戦略を採っています。用地仕入れが要のビジネスモデルであり、組織戦略とフィットしています。

 

ここで改めてエサキホームのビジネスモデルを図解すると下のようになります。

 

 

一般的な住宅市場では、単価や性能といった軸で分類し、市場を攻めていますが、例えば性能という軸は住宅業界において非常に競合が多く、レッドオーシャン(寡占市場)と言えます。しかし、その中でさらに軸を絞り込むとどうでしょうか。エサキホームは市場をさらに「広い間取り」「分譲」と絞り込み、独占市場を作り上げています。広い間取りであるものの分譲展開しているため、「お手頃価格で良い住宅」を独占市場において確立しているんですね。

 

どのようにして独占市場を作るのか?

 

ここからは、どのようにしてブルーオーシャン、すなわち独占市場を確立するかについて見ていきます。

 

 

まず、市場を見る上で三つの要素があります。自社・顧客・競合ですね。この3つは頭文字を取って3Cと呼ばれています。端的に言えば「自社の得意分野の中で、顧客ニーズを満たし、かつ競合が参入出来ない領域」を市場機会と見ます。この市場機会において独占市場を見つけること、これがすなわちブルーオーシャン戦略なのです。

 

例として、下の図をご覧ください。こちらは先ほどの顧客・競合・自社の特性を図にしたものです。顧客においては「顧客感度」すなわち「顧客が何を求めているか」で判断をします。デザイン性を求めているのであれば顧客感度は高い(○)という考え方です。併せて競合と自社がどの要素に強いかも表に分類します。

 

 

この市場で言えば、自社はもともと気密性を売りにしていました。しかし顧客感度を見ると、そこまで気密性に対して感度が高くないことが分かります。顧客感度が低いにもかかわらず、自社が強いからと訴求をしても意味がありません。このような考え方をプロダクト・アウト型と言います(顧客のニーズを踏まえず自社の強みで勝負すること)。

 

一方で、構造という要素を見てみると、顧客感度はそれなりに高い一方で、他社があまり強くないことが分かります。そうすると、まさに自社が狙うべき優位性は、構造だということになります。

 

ただし、構造という優位性において成功確率が高いかを見極める必要があります。この見極めには「6R」という理論を活用します。市場規模・成長性・競合状況・優先順位・到達可能性・反応の測定可能性という六つの観点で成功確率を判断します。

 

 

なお、ご紹介した構造やデザイン、機密性以外にも、さまざまな軸で設定が可能です。価格やアフター対応などでも軸の設定ができるでしょう。

 

なお、6Rの視点で市場を踏まえた分析ができるツールをご用意しました。必要に応じて左記QRコードよりダウンロードし、自社の戦略にお役立てください。

 

 

このように市場を選定することでブルーオーシャンを見つけることが可能ですが、注意点があります。市場選定軸が集客の決定要因であるということです。例えば、先ほどの構造という軸において集客時にチラシで訴求し反響が来なければ、市場としては未成立です。顧客が住宅会社を選ぶ際、集客すなわち来場した理由と、購買すなわち契約した理由が明確に違います。

 

 

例えば、価格が魅力的で来場したものの、最終的には営業マンの対応が良くて契約した、ということもあるでしょう。その場合は価格が集客決定要因で、営業マンの対応が購買決定要因です。購買決定要因を軸として展開するとそもそも集客自体が見込めない、ということになりかねませんので注意しなければなりません。

 

以上を踏まえて市場を選定してみましょう。例えば、次の図のように価格×性能で市場を分類します。すると、多くの競合が同じ市場に位置づけられています。これではまさに血みどろの争いになってしまいます。

 

 

ですから、さらに市場を細分化することが重要です。図で言えば先ほどの単価×性能市場をさらにアフター対応×デザインで分類します。もし自社がアフター対応とデザイン性が共に高く、それらの要素で顧客感度が高ければ、ブルーオーシャンが出来上がります。  

 

このような取り組みで、いかに「戦わないか」を戦略的に設計することが重要なのです。

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkbox独占市場を独自に作り上げ、効果的な販売活動を行うことをブルーオーシャン戦略と言う

checkbox他業界でCX戦略を採用している企業は任天堂(wii)である

checkboxブルー・オーシャン戦略は自社の強みに沿って市場を絞り込むことで構築が可能である

checkboxただし、絞り込んだ市場に競合がおらず、顧客が存在することが前提となる

 

以上、今回はエサキホームを事例に、ブルーオーシャン戦略を見てきました。このような考え方は今後の住宅業界における戦略として非常に重要です。改めて自社の優位性を見直し、適切な市場を確保していきましょう。

この記事が気に入ったら
いいね!をお願いします

最新情報をお届けします

フォローすると最新情報がTwitterで確認できます