今回は「会員型モデルで年15,000反響を獲得し、青田で6割売り切る埼玉県ポラス」について触れてみたいと思います。まず、ポラスの概要をお伝えします。

 

埼玉県を中心に展開する分譲会社で年間2000棟と全国トップクラスの販売数を誇り、年々売り上げを上げています。インターネットを活用した戦略を得意とし、ネットからの契約が全体の半数を占める優秀な住宅関連企業(工務店)です。

 

 

ポラスはどのようなビジネスモデルを展開し成功しているか、について今回は考察してみたいと思います。

 

なお、本記事は戦略論について論じる為、基本的な戦略の考え方をこちらの記事を踏まえて把握した上で読み進めてください。

 

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

会員型モデルとは何か?

 

まず、この戦略について説明をいたします。この戦略は、会員型モデルといいます。従来のビジネスモデルは、新規客に常にマーケティングと販売を行うといったいわゆる「掛け捨て型」アプローチをとっています。一方で、当モデルはマーケティングで獲得した見込み客を全て会員化し、ダイレクトにアプローチを行うことで、販売活動を効率化しています。

 

 

1:5の法則をご存知でしょうか。新規獲得には既存顧客の5倍のコストがかかるといった考え方です。このモデルでは既存客ではないものの見込み客を囲い込むことで新規獲得コストが大幅に軽減されます。

 

 

他業界で同じモデルを採用しているのが野村不動産のマンションブランドであるプラウドです。プラウド会員と呼ばれる会員を30万人近く保有しており、クラウド会員は様々な特典を受けることが出来、会員向けサービスの中でファン化していく傾向にあります。

 

 

ポラスのビジネスモデルとは?

 

では実際にポラスのビジネスモデルを紐解いてみましょう。

 

ビジネスモデルのキー 独自手法による顧客の囲い込みと販売体制
内部環境 顧客 比較的ミドルコスト層をターゲットとしている。
販売戦略 CMやスポンサーで認知度を上げ、ホームページで会員登録させる。青田で予告広告として案内し、半分は公開前に完売する。
提供価値 自社分譲地を社内一貫施工しており、大幅に原価を下げている。結果高品質でお手頃なサービスを展開している。
組織戦略 子会社は分譲地ごとに24社に分けており、独立採算制を採ることで適切な競争原理を構築している。
財務戦略 ブランドが浸透している為、利益率は比較的高い。また、青田売りで6割完売を実現しており、利息支払いが少なく健全な財務体制を構築している
外部環境 圧倒的な分譲市場であり、デザイン性を重視した戸建て住宅会社が少ない傾向にある。

 

 

 

 

地域においてチラシだけでなくCMや沿線広告、さらには有名スポーツチームのスポンサー、地域伝統行事のメセナ活動などを行い、圧倒的な知名度を誇ります。知名度を武器にホームページ反響を獲得し、会員化する点が特徴的です。また、社内一貫施工体制を構築しており、販売エリアごとに分社化している点が特徴的です。

 

ポラスのビジネスモデルでも特徴的な提供価値と組織戦略にについて深堀りいたします。まず提供価値について見てみましょう。ポラスはお伝えしたように研究開発からアフターまで全て自社で請け負っている点が特徴的です。

 

 

このモデルは、アパレル業界でZARAやユニクロが採用しているSPAモデルと近い考え方になります。自社で全てを管理する為に、原価を大幅に削減するといった考え方ですね。

 

二つ目は、組織戦略における分社体制です。

 

 

ポラスもともと創業者が複数の子息に暖簾分けをした経緯もがあることから、分社化の文化が根づいており、現在では24社もの子会社で構成されています。販売エリアごとに子会社化し、独立採算体制を構築しているので販売体制が強固で、適度な競争原理が働きます。

 

ここからはポラスのビジネスモデルがどのように一貫性を保持しているかを確認いたします。

 

提供価値と組織戦略がフィットしている

社内一貫体制のもと組織を分社化しているが、結果提供価値である住宅商品の品質が高い傾向にあります。結果的にビジネスモデルとフィットしています。

 

組織戦略と販売戦略がフィットしている

販売会社を中心に20以上の子会社に分けて展開しており、そのことにより個社ごとが競い合う適切な競争原理が働いています。

 

財務戦略と販売戦略がフィットしている

青田で販売することで借り入れの早期返済を実現しており、その結果財務負担が軽減し、販売完了後の大幅な仕入れ購入が実現しています。

 

ここで改めてポラスのビジネスモデルを図で見てみましょう。下図をご覧ください。ポラスでは対象商圏において大々的なメディアミックスを展開します。CMや沿線広告だけでなく対象エリアの1軍のサッカーチームやバスケットチームのスポンサーや地域のイベントに関するメセナ活動など大胆なマーケティングを行います。その結果、ホームページに年間15000件の反響が発生します。

 

 

その反響を全て自社の会員制度に取り込み、この中でファン化いたします。そして、この会員の属性に併せて適切な物件を自動的に案内する体制を構築することで全ての物件が販売開始1ヶ月以内に完売し、その契約の半分がWEB反響という体制を構築しているのです。

 

早期完売を実現する予告広告とは?

 

この驚異の早期販売体制を下支えしているのが予告広告です。

 

 

予告広告とは、すぐに取引が出来ない物件について、販売前にあらかじめ告知をする広告です。予告広告を活用し会員に早期に物件を案内をすることで販売効率を高めています。

 

分譲事業において早期販売は回転率という財務指標で評価されますが、回転率が高ければ借り入れ利息が低い為高い利益率を維持出来ます。実際にポラスの利益率は5%水準と分譲事業では比較的高い水準を維持しています。また、次の期における大幅な仕入れが実現出来ると言った副次効果もあるのです。

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkbox会員型モデルとは見込み客を会員化し、販売効率を上げる戦略である

checkbox他業界で会員型モデルを採用している企業は野村不動産(プラウド)である

checkbox会員型モデルは圧倒的なメディアミックス、予告広告による早期完売が重要である

checkboxまた、早期完売に置いては予告広告を活用することが重要である

 

今回はポラスが採用している会員型モデルについて見てきました。年々集客コストが高まっているこの業界において、まず会員化をし囲い込んでいけば、販売効率は高めることが出来ると言えるのではないでしょうか。このような取り組みを自社にも取り込み経営効率を上げていきましょう。

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