今回は住宅業界におけるファイブフォース分析とは何かについて見ていきたいと思います。ファイブフォース分析という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。しかしながら、住宅業界に特化した形での解説などはあまりなく、途中で挫折した方も多いかと思います。今回は住宅業界に沿ってファイブフォース分析とは何かについて触れてみたいと思います。

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

ファイブフォース分析とは何か?

 

そもそもファイブフォース分析とは、1900年半ばに世界恐慌で多くの欧米企業が経営危機が陥ったことが発端と言われています。この折に「勝てる市場を探しましょう」と主張するコンサルタントが現れました。まさに勝てる市場を狙うという点から「ポジショニング」派と呼ばれたんですね。ファイブフォース分析とはこのポジショニング派のコンサルタントが提唱したことから外部環境を重視した分析になります。

 

 

なお、こちらについてはビジネスモデルにおける考え方が前提となりますので、下記の記事を踏まえた上でお読み進めてください。

 

 

では、まずビジネスモデルとファイブフォース分析の位置関係を見ていきます。下の図をご覧ください。こちらは企業戦略(ビジネスモデル)を分解した図になります。ファイブフォース分析は外部環境からビジネスモデルを最適化するといった考え方になります。

 

 

こちらを図で示して示すと下の図のようになります。外部環境において企業の脅威となる要素が大きく5つあります。その5つの動向を踏まえた上でビジネスモデルを強化するといった考え方です。

 

 

実践の流れとしては、「分析する」「戦略の方向性を決める」「ビジネスモデルを再設計する」といった流れになります。

 

ファイブフォース分析のステップ①〜分析する〜

 

まずファイブフォース分析の「分析する」から見ていきましょう。下の図をご覧ください。住宅業界を取り巻く脅威は大きく5つあります。

 

 

まず、賃貸サービスなど代替される可能性があるケースを「代替品の脅威」と呼びます。そして、競合などは「業界の脅威」と呼びます。そして新規参入する企業などはそのまま「新規参入の脅威」と呼びます。

 

住宅会社に資材などを販売する企業は「売り手の脅威」です。原価が高騰して値上がりすると、経営の観点で立派な脅威と言えるでしょう。そして買い手も脅威の1つになります。買い手の(価格などの)交渉力が高ければ、企業効率が下がる可能性があります。

 

このような「5つの脅威」についてどのように対処するべきなのかを分析することが、ファイブフォース分析です。下の図をご覧ください。こちらはお伝えした5つの脅威において、「強」「中」「弱」と3段階で強度を示した図になります。

 

 

例えば、エリア内において賃貸住宅の需要はそこまで強くない場合は、代替品の脅威は弱いと言えます。競合とサービスの観点で住み分けが出来ているのであれば、業界の脅威はそこまで強くないと言えます。また、出店を計画しているメーカーなどがいない場合は、新規参入の脅威は弱いと言えます。

 

売り手においても資材は高騰しているものの、原価がそこまで上がっていなければ脅威はそこまで強くないといえます。買い手においては競合が多くいる場合、他社に流れることもあるので脅威は強いといえます。これらを図にすると、右側のような構造になります。

 

ここまで見れば一見外部環境において脅威はあまりないように見えます。しかし、現在の外部環境だけ見ていれば良いのでしょうか。下の図をご覧ください。

 

 

例えば、住宅業界を取り巻く環境においては、外部環境の変化が起こっています。「資材の高騰」「買収事例の増加」「リフォーム市場の拡大」「経営のIT化」など、これら以外にも様々起こっています。このような観点を踏まえて、自社を取り巻く「未来の脅威」を抑えることが重要でしょう。

 

では、これら外部環境の変化はどのような軸で押さえるべきなのでしょうか。下の図をご覧ください。下の図は、外部環境を抑えるでの4つの軸と言われています。

 

 

一つ目は「政治的な観点」です。補助金などの住宅関連制度の変更などを指します。「経済的な観点」です。株価の高騰や、M&Aの増加などを指します。「社会的観点」はコロナショックや、オリンピックなどを指します。「技術的観点」は、デジタル化・IT化などを指します。

 

これらの頭文字をまとめてPEST(ペスト)と表現します。ファイブフォース分析はこのペストを踏まえた上で、現在だけでなく未来の外部環境を押さえることが重要なのです。

 

下の図をご覧ください。下の図は、現在ではなく未来の5つの脅威について示した図になります。

 

 

この中でもペストの観点で考察をすると、例えば業界内の競合においてはIT化デジタル化により、企業間での勝ち組と負け組の格差が広がり脅威は強くなると言えます。また、売り手においても先ほどお伝えしたように、ウッドショックなどで資材がかなり高騰することを考えると、脅威は強くなると言えます。

 

また、代替品においてもリノベーション市場が広がることによって住宅着工自体が減っていくことを考えると今後さらに深刻化すると言えます。以上を踏まえて、戦略の方向性や未来に備えた方向性を明確にする事が重要になります。

 

ファイブフォース分析のステップ②〜戦略の方向性を決める〜

 

では、ファイブフォース分析で実際に戦略の方向性を決めていきましょう。下の図をご覧ください。下の図は先ほどまとめた現在と未来の脅威になります。ご覧の通り今後住宅業界において、業界の脅威と代替品の脅威が強まると想定されます。

 

 

これらに対して、未来を見据えた対策を打つことが求められます。下の図は、未来の新たな脅威を踏まえた対策事例になります。

 

 

例えば、売り手において資材の原価が上がる場合は資材加工を内製化する、業界の脅威においては対競合の観点でオンライン販売体制を強化する、代替品の脅威においては新築の価値訴求力を強化する、といった脅威に沿った戦略が必要になります。

 

ファイブフォース分析のステップ③〜ビジネスモデルを再設計する〜

 

ファイブフォース分析の結果を踏まえてビジネスモデルを再設計しましょう。こちらについては栃木県のR社を事例として見ていきたいと思います。

 

 

R社のビジネスモデルは、下の図のようになります。

 

ビジネスモデルのキー 顧客満足を最重視した組織風土
内部環境 顧客 栃木県内における年収が低めの一次取得者層をターゲットにしている。
販売戦略 4週間前からポスティングを行う4ステップチラシを行い、またホスピタリティを重視した営業を展開している。
提供価値 ローコスト住宅商品(ゼロキューブ)を提供しているが、販売自体に価値をおいている。
組織戦略 顧客満足至上主義を掲げ、売上よりも大事な指標としてマネジメントを行っている。
財務戦略 経常利益率5%前後と比較的高めで設定している。
外部環境 商圏においては年収が低めの層が多い傾向にある。

 

 

ローコスト層の多い市場に対してゼロキューブなどのローコスト住宅を販売をしており、組織戦略としては顧客満足主義を掲げることで多くのファンを獲得し、非常に健全な経営を行っています。

 

では、R社にファイブフォース分析の結果を当てはめるとどうなるのでしょうか。ここでは、未来の新たな脅威である売り手に対する対策である「資材加工の内製化」を行った場合を見ていきましょう。

 

 

下の図をご覧ください。下の図は、ファイブフォース分析における売り手対策としての「資材加工の内製化」を踏まえたビジネスモデルになります。組織戦略として「今後資材加工を内製化することで自社の原価を高騰させる体制」を進めます。そして、外部環境として分析結果である「ウッドショックにより今後、住宅建材原価が高騰する見込みである」といった要素を付け加えます。

 

ビジネスモデルのキー 顧客満足を最重視した組織風土
内部環境 顧客 栃木県内における年収が低めの一次取得者層をターゲットにしている。
販売戦略 4週間前からポスティングを行う4ステップチラシを行い、またホスピタリティを重視した営業を展開している。
提供価値 ローコスト住宅商品(ゼロキューブ)を提供しているが、販売自体に価値をおいている。
組織戦略 顧客満足至上主義を掲げ、売上よりも大事な指標としてマネジメントを行っている。今後資材加工を内製化することで自社の原価を下げる体制を進めている。
財務戦略 経常利益率5%前後と比較的高めで設定している。
外部環境 商圏においては年収が低めの層が多い傾向にある。今後資材加工を内製化することで自社の原価を下げる体制を進めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上が、ビジネスモデルをファイブフォース分析に沿ってビジネスモデルを補強する強化するといった考え方になります。このような取り組みを行うことで、未来のリスクを押さえた経営をしていきましょう。

 

なお、ファイブフォース分析については、下記のツールを活用することが出来ますので、是非ダウンロードし積極的に戦略の見直しを行いましょう。

 

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkboxファイブフォース分析は外部環境を起点にビジネスモデルを強化する分析手法である

checkboxファイブフォース分析の流れは大きく3つ存在する

checkbox分析を行う上で5つの視点で自社を取り巻く「脅威」への対策を採ることが重要である

checkbox現在の脅威だけでなく未来の脅威を押さえることが重要である

checkbox分析を踏まえてビジネスモデルを強化することがファイブフォース分析の正しい活用方法である

 

以上、今回はファイブフォース分析について見てまいりました。ファイブフォース分析はは現在よりも未来に比重を置いた分析になりますので、あまり緊急性が高くないかもしれません。しかしながら、IT化を中心とした技術革新においては非常に変革スピードが速いので、ファイブフォース分析を活用することで今のうちにしっかりと対策を打つことが重要でしょう。

この記事が気に入ったら
いいね!をお願いします

最新情報をお届けします

フォローすると最新情報がTwitterで確認できます