今回は「圧倒的なデザイン戦略により上場後も5期連続増収増益を続ける群馬県ケイアイスター不動産」について触れてみたいと思います。

 

まず最初にケイアイスター不動産の紹介をいたします。ケイアイスター不動産は埼玉県本庄市に本社を置く不動産会社です。東証一部に上場しており分譲住宅を中心に開発を進め、関東7都県に営業所を置いており、過去5年の売上平均年率が20%を超える驚異的な企業です。

 

 

ここからはケイアイスター不動産がどのようなビジネスモデルを展開し成功しているか、について今回は考察してみたいと思います。

 

なお、本記事は戦略論について論じるため、基本的な戦略の考え方をこちらの記事を踏まえて把握した上で読み進めてください。

 

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

機能外注モデルとは何か?

 

ここからはケイアイスター不動産が採用している機能外注モデルについて説明します。

 

機能外注モデルとは、自社は中核機能に集中し自社の得意分野以外は全て外部に任せるモデルです。結果、外注コストが比較的高くなりますが各パートナーの専門力の高さで相殺されます。このモデルは、ケイアイスター不動産以外にも、飯田グループや三栄建築設計など多くの住宅会社で採用されています。

 

 

ではこの機能外注モデルを他業界で採用している企業について見てみましょう。他業界においてはナイキがこのビジネスモデルを採用していることが有名です。

 

ナイキは大手スポーツ用品メーカーで、1970年代初頭にインドネシア・中国・タイ・ベトナムなどのアジア諸国に製造の外注を開始し、自社は中核機能であるR&D・製品企画・製品設計・マーケティングに注力しています。結果、競合優位性を獲得しスポーツ用品業界のトップ企業としての地位を築いています。

 

 

端的に言えば試作・製造など自社が行わなくてもよい領域については外注をし、得意領域に特化して委託先を含め全体統率をするといった考え方です。では実際にケイアイスター不動産のビジネスモデルを見ていきましょう。

 

下の図をご覧ください。

 

ケイアイスター不動産は、分譲戸建ての販売市場において「デザイン」と「低価格」を強みとして展開しています。単にデザインが良いだけではなく、家賃以下の価格を実現する企業努力を行っており、実際に価格上限を5000万円と決めています。

 

 

その為に仕入れ段階では「出来る限り買い付ける」といった企業姿勢をとっています。また、デザインにおいても数々の賞を受賞することで付加価値を高めています。さらにはボリュームを武器としたスケールメリットで価格を下げつつ、在庫2ヶ月で値引き処分をすることによって資金回転率を上げるといった徹底したコストダウンを行っております。

 

ケイアイスター不動産が展開をしている群馬県では商圏の22%と驚異的なシェアを誇っておりますが、業界的にシェア30%が限界と言われる中でこれ以上成長が見込めないと判断したケイアイスター不動産は自社に販売機能を持たず、提携不動産会社やFC展開、またM&Aした子会社などを活用して販売を外注しながら拠点を広げており、ケイアイスター不動産単体では仕入れや商品開発のみに専任しています。

 

 

ここで少しシェアの考え方について触れてみたいと思います。

 

業界のシェアは30%が限界、とお伝えしましたが、理由は二つあります。一つ目は土地業者からすれば、一社に依存するということは、経営上リスクになるということです。その一社が潰れてしまえば共倒れになるからですね。二つ目に顧客の関心です。顧客の指向性の多様化を踏まえれば同じテイストは30%が限界ということです。

 

また、下の図をご覧ください。下の図は「1000棟商圏においてシェアを20%獲得しているケース」を図にしたものです。

 

例えばケイアイスター不動産シェアが20%ということは、1000棟商圏において200件の契約があると言えます。仮にケイアイスター不動産の契約率が20%だった場合に、割り戻すと営業活動数が1000組にとなります。つまり「1000棟商圏でシェア20%」ということは、商圏の顧客全てと営業活動を行っているということを意味するんですね。

 

 

ケイアイスター不動産のビジネスモデルとは?

 

ここでケイアイスター不動産のビジネスモデルを細かく見ていきましょう。

 

ビジネスモデルのキー 委託先マネジメント力
内部環境 顧客 低価格でデザイン性の高い分譲住宅を希望する層
販売戦略 販売機能を外部に委託している為、販売戦略は各委託先に依存する。低価格である為、外注先の販売担当は月間4棟を販売する。(自社販売は1棟)
提供価値 「家賃以下でおしゃれな分譲住宅」を提供している。
組織戦略 チャレンジを推奨組織風土であり、他社の模倣をし拡大する組織風土である。
財務戦略 在庫2ヶ月で値引き処分するため、資産回転率が高く、財務は良好である。
外部環境 着工までのスピードが早い分譲、または低価格×デザインにおいて大規模な市場がある。また、事業承継が出来ない工務店が多く業界自体がM&Aとの相性が良い。

 

 

 

まずビジネスモデルのキーとしては、機能を外注するため、「外注先のマネジメント力」が非常に重要になります。その上で、ケイアイスター不動産がターゲットとしている顧客は低価格でデザイン性の高い分譲住宅を希望する層になります。

 

販売機能を外注している為、販売戦略は外注先の営業力に依ってしまいますが、商品自体が低価格であるため、外注先では月間一人あたり4棟販売(自社の場合は月間一人当たり1棟)という実績を出しており販売戦略は成功していると言えます。

 

提供価値においては家賃以下でおしゃれな分譲住宅を提供しており、組織戦略においては、チャレンジ精神が旺盛な組織風土であることが特徴的です。財務戦略においては在庫2ヶ月で値引き処分をするため、資産回転率が高く財務は比較的優良です。

 

また、ケイアイスター不動産を取り巻く外部環境においては、「デザイン力が高く安い家」におけるニーズ根強く大規模な市場があると言えます。また、事業承継が増加傾向にある状況においてM&A戦略との相性も良く、外部環境から逆算した正しいビジネスモデルが構築されています。

 

ここで組織戦略について深堀りいたします。先程「チャレンジ精神が旺盛な組織風土」と伝えましたが、ケイアイスター不動産の成長の軌跡がその風土を作ったといっても過言ではありません。

 

下の図をご覧ください。ケイアイスター不動産は様々なチャレンジをしながら拡大してきたという経緯があります。

 

 

まず、設立当初は不動産仲介業として展開をしておりましたが、踊り場のタイミングで、土地を購入し、戸建販売事業に参画しました。しかし、仕入れを広げすぎて集客が低下するといった事態を解決するために住まいの情報館を立ち上げ、集客が安定化します。

 

そして再度成長の踊り場に陥りましたが、ここでビジネスモデルを戸建ての直接販売に切り替えます。しかし、分譲事業自体がシェアの限界近づき、企画注文住宅事業を立ち上げます。そしてさらなる成長に向けて今回ご紹介する機能外注型のビジネスモデルに切り替えたのです。

 

図を見れば連続的ではなく、非連続的な成長を遂げていますが、この非連続成長こそが今の時代に重要なのです。下の図をご覧ください。

 

 

経済が成長期、あるいは確実性が高く、競争が緩やかな時代はマネジメントの時代と呼ばれ、連続的な成長を促進する傾向にあります。しかしながら、経済が成熟、あるいは衰退期、さらに確実性が低く、競争が激しい時代はリーダーシップの時代となり、非連続的な成長を求めるべきと言われています。

 

まさに、ケイアイスター不動産はこの非連続的な成長を行うことによって高い成長率を実現したのです。では最後に、ケイアイスター不動産のビジネスモデルにおけるフィット構造を見ていきましょう。

 

販売戦略と外部環境がフィットしている

一つ目に、販売戦略と外部環境がフィットしていると言えます。
販売機能を外注する点はお伝えしましたが、M&Aも同様です。承継者のいない工務店を買収し販売機能として強化している点が、事業承継案件が急増している業界の外部環境とフィットしています。

 

提供価値と外部環境がフィットしている

二つ目に、提供価値と外部環境がフィットしている点です。分譲業界におけるデザインローコスト市場は競合が比較的少なく、展開がしやすいと言えます。また、顧客のニーズも高い点を踏まえると提供価値と外部環境とフィットしていると言えます。

 

財務戦略と販売戦略がフィットしている

三つ目に、財務戦略と販売戦略がフィットしている点です。在庫2ヶ月で値引き処分をすることで、資産回転率を高め販売効率を上げている点が財務戦略と販売戦略がフィットしていると言えます。

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkbox機能外注モデルとは自社が得意とする領域以外を外注するビジネスモデルである

checkboxケイアイスター不動産は販売(集客・営業)領域を外注している為、営業マンがいない

checkboxケイアイスター不動産の「非連続の成長」は今の時代に求められるリーダーシップモデルである

 

以上がケイアイスター不動産のビジネスモデルになります。

 

繰り返しになりますが、現在は連続的な成長よりも非連続な成長が求められています。ですから、ケイアイスター不動産のように常にチャレンジをし、失敗を受け入れながら進んでいくという考え方を是非とも自社の企業経営において取り入れて頂ければと思います。

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