今回は「マクドナルド経営でローコスト住宅圧倒的エリアNo. 1を実現した埼玉県富士住建」について触れてみたいと思います。

 

富士住建の紹介をいたしますと、埼玉県で注文事業を営んでいる事業です。業界でも早い時期から定額フル装備の自由設計を展開し、若年一時取得者層を獲得して開拓してきました。

 

ローコストビルダーの激戦区、埼玉県を本拠地として関東1都6県にエリアを広げており、棟数も1000棟近く販売しており非常に勢いのある企業です。

 

 

ここからは富士住建がどのようなビジネスモデルを展開し成功しているか、について今回は考察してみたいと思います。

 

なお、本記事は戦略論について論じるため、基本的な戦略の考え方をこちらの記事を踏まえて把握した上で読み進めてください。

 

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

ベルトコンベアモデルとは?

 

まず富士住建が採用しているベルトコンベアモデルについて触れてみたいと思います。ベルトコンベアモデルとは端的に言えば、業務プロセスを徹底的に機械化することで効率的な業務活動を行うモデルになります。一般的にはローコストオペレーションモデルと言われており、多くの小売業で採用されているビジネスモデルです。

 

 

このビジネスモデルの代表的な事例はマクドナルドです。

 

 

 

マクドナルドは世界的な飲食チェーンで業務を徹底的に機械化させ、プロが行う領域を素人でも出来るようにマニュアル化しています。そこのことで人員コスト下げ、その分を原価に投下することで商品の品質を上げる点が特徴です。利益率は低いものの、低価格という巨大市場で拡大展開することで、最終的な利益は大きくなります。

 

下の図は、一般的なハンバーガーメーカーとマクドナルドの違いを示しています。

 

 

商品価値上げるため、原価率は比較的高い傾向にある一方で、原価率上げた分サービスにおいて機械化し、人件費を削ることで帳尻を合わせています。また、人的な販売力が減るため広告費を比較的多めにかけます。最終的には利益率は下がるものの、シェアを拡大できるため利益は担保できるといったビジネスモデルです。

 

この考え方は、かつて社会学者のマックスウェーバーが「鉄の檻」という論文で発表した合理主義に則った考え方です。また、この考え方をジョージ・リッツアがマクドナルド化する社会という書籍で「サービス業は人的資産から構造資産になる」と説き、反響を呼びました。

 

 

 

では実際に富士住建のビジネスモデルについて見ていきたいと思います。下の図は、富士住建のUSP(差別化ポイント)を示しているものです。

 

富士住建はローコストの注文住宅市場で展開をしているので、品質と価格軸の市場で分けることが出来ます。この市場において富士住建は高品質かつ低価格な注文住宅を販売しております。

 

 

 

一般的なローコストビルダーは「1000万円で家が建ちます」と言いながらもエンドユーザーの観点で見れば、「どうせオプションで高くなる」という不安感があります。一方で富士住建の場合は「全てコミコミでフル装備」を謳っているので、顧客に受け入れやすい傾向にあります。このようにローコストだけではなくて、フル装備で他のローコスト住宅と差別化している点が非常に特徴的です。

 

また、下の図をご覧ください。一般的な住宅と富士住建の財務内容を示した図になります。

 

 

富士住建は商品価値を上げるために比較的原価を高めている傾向にあります。一方で、原価率を上げた分価値提供フローを機械化することによって、人件費や研修費を削り、帳尻を合わせています。さらには人的な販売力が減る為、広告費をかけることによって、販売力を担保しています。

 

最終的には利益率は下がるものの、シェアを拡大できる為利益が担保出来るという構造です。ローコスト市場は巨大市場になので、このような手法が成功する傾向にあります。

 

実際に同規模の3社平均と富士住建の財務諸表を見てみましょう。

 

 

粗利率が低い一方で、労働分配率や一人あたり給与を見ると人的コストは他社と比較し低い傾向にあります。一方で、広告宣伝費率は他社平均と比較して5倍の水準となっており、機械化することによって失われた販売力を広告宣伝費で担保しているということが分かります。

 

実際に富士住建の販売構造を見てみると、他社の5倍以上のCM出稿で認知度を高めまており、また自社で出版を行っているフリーペーパーなど、様々な広告費を広告媒体を活用しています。

 

 

 

 

また、商圏ごとにショールームを設置し、オプションなどはカスタマイズ不可にすることで販売効率を上げています。このように圧倒的な販売体制の標準化で販売スキルに依存しない体制を確立している点が非常にユニークです。

 

富士住建のビジネスモデルとは?

 

ここでさらに詳しく富士住建のビジネスモデルを解説していきます。

 

ビジネスモデルのキー 圧倒的合理化による効率経営
内部環境 顧客 低価格で性能の高い注文住宅を希望する若年一次取得層
販売戦略 同等企業の5倍にあたる広告費5%を投下し、幅広いプロモーションを展開している。テレビCMだけでなく、自社でフリーペーパーを発行しロードサイド型ショールームではほぼ毎週末にイベントを行う。
提供価値 坪単価37.7万円の自由設計フル装備の家を提供している。コストパフォーマンスは高く、同等企業のひとつ上のグレードを整備している。
組織戦略 徹底した合理化を推進する風土であり、営業要員のトレーニングなどには費用をかけず、マニュアル化を推進している。
財務戦略 原価を下げ広告費を上げることで経営の合理化を徹底し、労働分配率を下げることで最適化を実現している。
外部環境 展開市場がローコスト市場の激戦区であり、低価格な住宅を求める層が多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビジネスモデルのキーはマクドナルドと同様、圧倒的な合理化による効率化です。また、低価格で性能が高い注文住宅を希望する一次取得者層をターゲットとしています。

 

販売戦略においては前途の通り、広告宣伝費を比較的多めにかけ、幅広いプロモーションを行っています。ロードサイドに設置するショールームではほぼ毎週末にイベントを行い、集客の間口を広げています。

 

提供価値については、坪単価37.7万円の自由設計フル装備の家を提供しており、コストパフォーマンスが高く、同等企業の一つ上のグレードを徹底して整備している点から非常に顧客に受け入れられやすい商品となっています。

 

組織戦略においては、徹底した合理化を推進する風土であり営業要員なトレーニングなどには費用をかけず、マニュアル化を推進しています。財務戦略においては、原価を下げ広告費を上げることで、経営の合理化を徹底し労働分配率を下げることで、最適化を実現しています。

 

外部環境は展開市場がローコスト市場の激戦区であり、低価格な住宅を求める層が多く、この外部環境から逆算してビジネスモデルを構築していることが分かります。

 

ここからは富士住建のビジネスモデルからどのようなフィット構造になっているかを考察したいと思います。

 

販売戦略と財務戦略がフィットしている

まず一つ目が販売戦略と財務戦略がフィットしている点です。CMによる認知度の強化やショールーム展開による営業サポート体制など販売において広告宣伝費に高額の投資をしていますが、財務観点ではその分人員コストを下げている点で販売戦略と財務戦略がフィットしていると言えるでしょう。

 

提供価値と財務戦略がフィットしている

二つ目が提供価値と財務戦略はフィットしている点です。原価率を高める財務戦略のもと、坪単価37.7万円という高い商品サービスが可能になっています。

 

組織戦略と販売戦略がフィットしている

三つ目に、組織戦略と販売戦略がフィットしている点です。徹底した合理化を推進する組織風土により、販売における標準化マニュアル化が徹底されています。合理的な販売体制を構築している点で、組織戦略と販売戦略がフィットしていると言えるでしょう。

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkboxベルトコンベアモデルは価値提供フローを徹底的に機械化することでシェアを拡大するビジネスモデルである

checkbox他業界でベルトコンベアモデルを採用している企業はマクドナルドである

checkboxベルトコンベアモデルは原価率や労働分配率などの財務管理が重要なモデルである

 

以上、今回は富士住建に見えるベルトコンベアモデルについて見てきました。

 

この考え方は、多くの企業が展開している規格住宅事業と非常に近いビジネスモデルです。自社で規格住宅を展開しているのであれば、このような考え方を踏まえて財務戦略を中心にビジネスモデルを構築しましょう。

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