編集を終えて
今回もノウフルを通して、売り上げを上げるためのノウハウを紹介してきた。ノウフルは、人・物・金に次ぐ第四の経営資源である情報を、平等にさまざまな住宅会社に伝えることができたらと思い、執筆している。
また、それだけではなく、常々お伝えしているように、今後、住宅業界においては集客大恐慌が到来する。そのような中で、ノウフルは、単なる販促ではなく、商品戦略・価格戦略・立地戦略を踏まえた広義のマーケティング、いわゆる「シン・マーケティング」の浸透を目的としている。今回も、この「シン・マーケティング」というテーマに沿って編集後記を記し、本号の締めくくりとしたい。
データの重要性とは
今回は、マーケティングにおけるデータの重要性についてお伝えしていく。近年では、多くの企業が、外観デザインでいえばシンプルモダン、性能では高気密・高断熱といった強みを生かして展開している。当然ながら、そのような市場は大きく存在するし、そこに向けて展開することは間違いではない。
しかし、それらのニーズがエリアによって異なることを把握することが重要である。例えば、下の図をご覧いただきたい。これは、住宅の外観デザインの分類を示したものである。皆さんは、この中でどの住宅が一番人気があると感じるだろうか。
多くの方が右上のテイストを選ぶのではないだろうか。しかし、下の図の結果を見れば、長野県松本市ではシンプルモダンよりもナチュラルテイストの方が人気が高かった。このように、データなどをもとにニーズを把握しなければ、大きな間違いを犯す可能性がある。
また、同じようにソフト面においても調査を行ってみた。下の図のソフト的な要素の中で、皆さんが最もニーズがあると思うものはどれだろうか。多くの方が「高気密・高断熱の家」と答えるかもしれないが、実際には、価格を除くと耐震性が1位となった。
このように、エリアによってニーズは大きく異なるため、データをもとに展開の仕方を考えていくことが重要である。 同じようなことが、他のデータでも確認できる。例えば、多くの住宅会社が家族4人以上の世帯を中心にモデルハウスを設計しているが、下の図をご覧いただきたい。
これは、国勢調査が示した世帯人員別一般世帯数の推移である。このデータによると、この20年間で80%の世帯が3人以下世帯になっていることがわかる。このような状況を考慮すると、一般的な32〜36坪の住宅よりも、さらにコンパクトな住宅の方がニーズがあることがわかる。また、下の図にあるように、新築住宅の着工棟数と平屋の割合の推移を見ても、平屋の割合が右肩上がりに増加していることがわかる。
これらのデータを考慮すると、モデルハウスの企画においては、コンパクトな平屋の住宅を展開すると良いだろう。このように、データを活用して市場のニーズを明確にしながら展開することが重要だ。
また、これらは「シン・マーケティング」における商品戦略の一環であるが、このような販促だけではなく、商品のUSPなどからも逆算してマーケティングをしなければ集客は難しいのである。
最後に
以上、今回は、住宅業界の重要テーマとして「データを踏まえてマーケティングを構築すべし」について見てきた。正しいマーケティングを行うには、データを活用しての市場ニーズを分析し、戦略を立てることが重要となってくる。また、自社の商圏エリアの状況を把握するなど、よりデータに沿った対応が求められる。一人でも多くの建築業界従事者の方々にとって、ノウフルが貴重な情報源になれば、それ以上のことはない。
引用