K社の取り組み
では、K社はどのような取り組みをしたのだろうか。まず一つ問いかけをしたい。住宅購入検討客は自社に何を求めて来場するのだろうか。当然ながら「家を購入する」という形で来場するのであれば、顧客が求めているものは「豊かな暮らし」であると言える。ある学者が唱えた格言を見ていただきたい。
これはどういうことだろうか。例えば、ホームセンターにドリルを買いに来た顧客は、ドリルではなくそれによって開ける穴を求めている。つまり、穴を開けるための手段としては、ドリルでなくともノコギリやドライバーでもいいのである。
これを住宅営業に当てはめると、顧客は豊かな暮らしを購入しに来ているのに、営業がC値やUA値などの話をしては、全くかみ合わないのである。このような観点を踏まえると、究極的に言えば、一つ一つの営業面談は顧客が幸せになることを目的にして臨むことが最も重要であると言える。
顧客が幸せになるために資金計画をしてあげる、あるいは土地探しをしてあげるということが重要になってくる。その中の手段の一つとして、自社商品を提案するといったスタンスをとることが、営業マインドとしては重要だ。
また、このような営業活動のポイントは、「中立性」である。自社の商品を売り込むのではなく、顧客が幸せになるための中立的なアドバイスをするといった考え方だ。自社の商品に価値があると感じているのであれば、おのずと幸せの手段の一つとして、自社商品を紹介するだろう。
究極を言えば、顧客にとっては、他社の商品を紹介するぐらいの中立的なスタンスが、顧客の信頼を勝ち取る上で非常に重要である。このような「顧客の課題を解決するアプローチ」という考え方は、いわゆる「コンサルティング営業」といった表現で定義されるが、コンサルティング営業とは、問題解決を主とした考え方を指している。
K社ではこのような考え方がトップセールスは理解していたものの、若手営業には全く浸透しておらず、ただ単に顧客のことを考えず商品を押し売りしているスタンスであった。そこで、若手を中心にトヨタ生産方式に基づいた研修を行なった。
トヨタ生産方式
トヨタ生産方式とは、自動車メーカーのトヨタが、徹底して社内教育を行っている領域である。「なぜを5回繰り返す」といった考え方を聞いたことはないだろうか。例えば、下の図にあるように、売り上げが低下しているという現象に対して、なぜこうなのかと回答すると、最終的に自社のすべきことが見えてくるといった考え方である。
トヨタでは、このような考え方を末端の工場員までが心得ているため、現場の工場レベルと兼務コンベアが急に止まっても、それぞれの社員が「なぜそうなったか」を考え、的確に解決策を見出すことで、生産性が高い組織であり続けるのである。このような考え方は、様々な書籍で求められているが、共通のフレームワークは下記の通りだ。
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