今回は、購買心理を活用した営業力強化により契約率を2倍にした千葉県A社の事例を見ていきたい。A社の概要は以下である。
当初の課題
A社では、従来より営業メンバーの契約率のばらつきに課題を持っていた。ベテランメンバーは、契約率が20%を超えるものの、若手メンバーの営業力は10%、あるいはそれ以下にとどまっていた。このような状況において、A社では営業力強化という施策に踏み切った。弊社の営業力強化の施策は、一般的な取り組みとは違い、非常にユニークであり、それが顧客の心理に沿った営業改善である。下の図を見ていただきたい。
.
.
一般的なセールスステップは、初回面談から次アポに続いてプラン提案などの2次面談、そしてクロージングの3次面談といった流れで進んでいく。しかし、単にこのステップを進めるだけでは受注に繋がるとは言えない。相手は人であり、この流れを作業のように進めても失注に繋がってしまう。
では、どのように取り組めば良いのか。上の図で言えば、横軸のいわゆる顧客の心理ハードルを潰していくという作業が同時に必要となってくる。この2軸を順番に沿って進めていくことにより、契約率は大幅に改善されるのである。
正しい営業ステップとは
では、この心理ステップとは何か。この話を進める前にまず、一つ問いかけをしたい。住宅業界のトップセールス10人に見られる共通点は何だろうか。
このトップセールスについては、図にあるように、平均の販売頭数が25棟、勤続年数が15年で初回面談からの土地契約が5割、建物契約が7割といったセールスパーソンである。実は、弊社ではこのようなトップセールスを集めた座談会を開催し、一般的な営業パーソンと何が違うのかを聞いたことがある。その際に、ほとんどのトップセールスのメンバーが、営業ステップでなく心理ステップに沿って営業活動を行っていると答えたのである。
では、この心理ステップは何だろうか。例えば下の図にあるように、一般的な営業ステップとして、自己紹介・資金計画・プラン提案・土地提案・クロージングの流れがあるが、例えば、お客さんの心理すると最初に自己紹介をしたところで、「関係性がが全くできてないのに一方的に話しかけないで欲しい」あるいは、資金計画で年収を聞いてきたとしても「信頼していないのに年収なんか教えない」といった気持ちが芽生える。
プラン提案についても、「家作りの不満や不安を汲み取って欲しいのに、全く見てくれない」とストレスを感じることもあるし、土地提案についても、単に情報を教えるのでなく中立的なアドバイスが欲しいという想いがあるわけだ。さらには、単に契約を推し進めるよりも、「新しい生活に対してわくわくするようなイメージを持たせてほしい」といった心理もある。このような顧客の心理に沿った営業活動を行うということがトップセールスの共通点であった。これらのステップを、弊社では次のようにまとめている。
項目は大きく五つあり、まず、人として認められるグリッピング、プロとして認められるポジショニング、そして、自分自身が顧客の悩みを聞き取りそれらに対するアドバイスを提供するコーチングである。さらに、自社の強みを選定基準とし購入基準を明示するフレーミング、最後に生活のイメージを醸成させて購買意欲を高めるイメージングと行い営業を締める。これらが下の図のように、それぞれの心理的ハードルに沿って機能している。
A社の取り組み
では、まずA社が取り組んだこれらの心理ステップについて説明していこう。まずは、クリッピングである。クリッピングは先ほど伝えたように、顧客のハードルを解除することが前提としてあり、そもそも顧客が来場した際の心理としては、下の図のように「ゴリゴリ営業されてしまう」「相手のペースには飲まれない」といったボクシングで言うガードが上がっている状態である。
これらは、顧客と営業マンの関係性を構築することによってガードを下げることが重要だ。そして、この顧客のガードを下げるためには五つの重要なポイントがある。
①社会的な望ましさ
社会的な望ましさとは、一般的に好感を得やすい特性で見た目などが当てはまる。住宅営業においては、スタッフの身なりや振る舞いが、顧客との関係性を構築することで重要だ。営業パーソンが思っている以上に、見た目の清潔感などは顧客からの印象を左右する大きなポイントである。
②自己開示
自己開示とは、その名の通り営業マンが自分がどんな人なのかをお客様に知ってもらうことを指す。人間関係が親密になっていく過程においては、パーソナルな情報交換が重要役割を果たすため、営業マン自身の情報をまとめ自己紹介カードなどを活用することがポイントだ。
ログインもしくは会員登録の上ご覧ください。