本号より新しく「住宅業界バンバン集客塾」というテーマで、住宅業界の集客について徹底考察をしていきます。初回のタイトルは「住宅業界の4P戦略を踏まえて集客を考えよ!」です。

 

まず、マーケティングの4Pとは何でしょうか。下の図をご覧ください。この図は、コトラーが提唱したマーケティングの4Pを、住宅業界に当てはめて説明したものです。

 

 

この四つのPは、プロダクト・プライス・プレイス・プロモーションの頭文字をとったものです。プロダクトは製品で、住宅業界においては建物そのものを指します。プライスは価格であり、どのような価格帯で展開をするかということを決めます。

 

プレイスは販売する場所を指し、モデルハウスやオーナー見学会、建売物件など、お客様を呼び込む場所のことを指します。これらは、一般的に「販売ルート」と言われます。そして、プロモーションは広告やSNS、チラシなどの施策を指します。集客にあたっては、このプレイスとプロモーションの位置づけが重要であり、さらに噛み砕いて説明すると下の図のようになります。

 

 

まず、プロモーションについては、顧客に自社を認知してもらう飛び道具となります。オフライン媒体は、チラシや折り込み、看板などを指します。ホームページにおいては、Web広告やSEOから顧客が流れ込んできますので、その構図を踏まえています。リード管理とは、自社の保有しているハウスリストを指し、SNSはインスタグラムやFacebook・YouTubeなどを指します。そして契約客はOBからの紹介などを指します。また、営業と呼ばれる領域も便宜的にここに含みます。

 

あわせて、単展、総展など記載している領域がプレイスになり、一般的にルートと表現されます。

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

住宅業界のプロモーション戦略

 

まず、プロモーションについて説明していきます。次の図をご覧ください。この図は野村総合研究所が出した住宅着工数の予測です。

 

 

元々、2024年の着工数は86万戸と予測されていましたが、最終的には82万戸に落ち着くと言われています。この下げ率を反映させると、2026年の着工数は79万戸になり、2016年からの10年間でなんと20%の減少になります。この背景としては、人口減少が考えられます。次の図は日本の人口の推移を示したものですが、人口は2004年12月にピークアウトし、減少の一途をたどっています。

 

 

このように、住宅業界の集客難というのはそもそもの構造的な問題であり、これは集客が業界にかかわらず日本全体の課題であることを示してます。さらに言えば、集客は先進国全体の課題であると言い換えることもできるのです。これについて細かく見ていくと、図5のようになります。

 

 

現在、一次取得者層として我々がターゲットとしている30代人口は1720万人です。それが、今後対応していくであろう20代人口になると1320万人となり、25%も減少します。具体的に実際の集客数で見ていくと、年間500組あった集客は375組になり、契約率が10%とすると、受注数は50棟から38棟にまで減少します。

 

上記の背景により、プロモーションにおいて集客を強化すべきか、営業を強化すべきかといった二択を迫られた際には、圧倒的に集客を強化しなければならない時代に来ていると言えます。これがプロモーション戦略における考え方です。

 

住宅業界のプレイス(ルート)戦略

 

次に、プレイス(ルート)戦略について見ていきます。住宅業界のルートにはさまざまなパターンがありますが、近年では、移動式モデルハウスや完成見学会での展開を強化している企業が多いのではないでしょうか。これらは「自力集客」と定義されますが、対するルートが「他力集客」です。他力集客とは、他社のルートを活用した集客のことですが、この他力の集客に依存していると、今後は非常に厳しい結果が待ち構えています。

 

 

例えば、総合展示場は他力集客の代表的な施策です。代表的なルートではあるものの、その母体は新聞社やテレビ局などのオールメディアであるケースが多く、近年主流となりつつあるSNS集客やWeb集客にうまくシフトできないために苦戦を強いられています。

 

また、自力集客と違って案件を待つしかないので、今期は50棟の受注が必要だから500組の来場を作ろうといった数値管理が難しく、減少していく集客を黙って見ているしかありません。また、集客効率が悪化していく中では、広告宣伝費率に関しても、非常に効率が悪くなっていくと考えられます。

 

さらに、カウンター集客というルートもあります。こちらは、いわゆるSUUMOカウンターやインフルエンサーに代表されるルートを指しています。カウンター集客はリスクが高く、その課題の一つにコストの高さが挙げられます。住宅業界の広告費は売り上げの2%が標準と言われていますが、カウンター集客は売り上げの5%近くの手数料を取られています。ここまで手数料を取られると、利益率が悪化していくことが予測できるでしょう。

 

 

また、このカウンタービジネスは、良くも悪くも下準備をしっかりしてくれるため、営業にとっては非常にやりやすい案件が増えていきます。一方、自力集客である完成見学会などと比べると、従業員のモチベーションが下がっていくリスクも考えられます。

 

また、総合展示場と同様に案件のコントロールができない問題もありますし、カウンタービジネスにメリットがあると考えて登録する企業が増えている影響で、今後は紹介してもらえる案件が減っていくことも予想できます。このような状況下で、今、戦略として求められているのは、他力集客ではなく自力集客の比率を上げていくことです。

 

また、他力集客にはFC本部からのルートも含まれます。FCに加盟している場合、今まではFC本部が集客のサポートをしてくれていました。しかし、FC本部自体が、特に集客のデジタル化において軒並み苦戦しており、とても集客を期待できる状況ではありません。こうした状況を踏まえると、常設展示場や移動式モデルハウス、完成見学会といった自力のルートを強化することが重要であることが見て取れます。

 

 

住宅業界の商品・価格戦略

 

続いて、商品戦略について見ていきましょう(価格戦略については別機会にて解説)。まず、商品戦略には、目に見えるものと目に見えないものがあります。スターバックスを例にとって説明すると、コーヒーは物質的な価値ですが、サードプレイスという言葉に代表される空間的なサービスは精神的なものです。

 

 

サードプレイスとは、スターバックスのスローガンであり、自宅、職場に次ぐ三つ目の落ち着く空間(サードプレイス)を提供しようというものです。このように、目に見えるものをハード、見えないものをソフトと定義します。その上で、住宅業界におけるハードは建物(外観)と土地を指しています。

 

 

外観については、時代のニーズに応じて潮流があります。次の図は住宅の外観デザインについて分類したものです。シンプル(ミニマム)とデコラティブ(装飾的)軸、モード(流行的)とトラディショナル(伝統的)軸で分類されます。近年はスマート社会と言われるように社会がスマート化しているので、よりシンプルな外観が求められています。2階を削ぎ落とすという意味では、平屋がその究極と言えるでしょう。

 

 

その前提のもと、従来は外観や土地が良ければ売り上げは担保できましが、近年では分譲系大手パワービルダーでさえ外観の品質が上がっています。下の図は、分譲系大手パワービルダーI社のグループ企業の外観の変化を示したものです。

 

 

このように、ローコストの建売住宅でさえ高い品質を実現しているので、見栄えが良いだけでは勝負ができなくなります。大きな潮流としては2020年まではハードの時代でしたが、2020年以降はソフトの時代になっています。

 

 

ソフトというのは、下の図にあるように、リビングが広い・家族の絆が深まる・安全性が高い・快適を実現できる・健康に良いなどといった、目に見えない付加価値のことです。

 

 

商品の価値というのは、下の図にあるように、価格を分母にした場合、「ハード×ソフト×ブランド」で構成されます。

 

 

今後、ハードで差別化ができなくなっていく中では、上記のようなソフトをしっかりと打ち出していくことが重要となってきます。以上を踏まえて、今後、4P戦略においては次のようになります。

 

まず、プロモーションにおいては、集客か営業かの選択になりますが、集客が大事になります。そして、ルート戦略においては、自力集客か他力集客かで決断が迫られますが、自力集客を強化していくことが重要になります。また、商品戦略においては、ハードかソフトかという決断に迫られますが、ソフトを強化していくことが重要になります。

 

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkbox住宅業界の集客難は構造的な問題であり、営業より集客を強化することが重要である。

ルート戦略においては、他力集客より自力集客に注力することが重要である。

checkbox商品戦略においては、ハードよりソフトを強化していくことが重要である。

 

以上、今回は、お客様と関係性を構築するためのグリッピングについて見てきました。

このように、事業全体を4P戦略の観点でを押さえた上で、事業を強化していきましょう。

 

引用

 

 

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