アート建工は、鳥取県米子市・境港市・鳥取市を中心に、一戸建ての新築及び分譲住宅を 販売施工している工務店である。性能・デザイン・価格のすべてに妥協せず、 理想のライフスタイルを叶えるオーダーメイド住宅を提供している。 今回は同社の代表である、魚谷宗司氏(代表取締役)に事業での取り組みや 販売における考え方、経営のモットーなどについてお聞きした。(聞き手:ノウフル編集長狩野)

 

ーまず御社の概要を教えてください。

 

弊社は鳥取県・島根県を商圏とし、昨年の売り上げは約50億円、棟数は200弱ほどを展開しています。拠点は鳥取と島根で4拠点あり、注文住宅と分譲住宅を展開しています。

 

 

ー御社ではシェア戦略を軸に多角化を進めているとお聞きました。シェア戦略についてどのような取り組みをされているのでしょうか。

 

まず、山陰は陸の孤島と呼ばれており、非常に交通の便が悪く、さらに鳥取県は人口が一番少ない県です。鳥取と島根は特に、少子高齢化が日本で最も進んでいるエリアでもあります。かつ山陰は横に長いため、人口密集地が分散されているエリアで、15万人ほどで分散をしている点で、経営効率が非常に悪いんです。

 

しかしながら、弊社は既存の地域に深く根を下ろし、展開しようと決めました。そうなると、基本的に売り上げを伸ばすにはシェア率を上げるしかないので、シェアナンバーワンを取るシェア戦略を採用することになりました。そもそもエリアシェアが小さい時点で、ニッチ戦略でシェアの少ないものを少しずつ取っていくのも非常に難しいですから、基本的には最も「ど真ん中」の商品を作りました。それを中心に、高い商品と安い商品で価格の差別化をしています。高い商品が注文住宅で、安い商品が建て売りとなっています。

 

 

また、山陰は人の採用が難しいですから、どうしても若手のメンバーが多くなってしまいます。未経験や若手の従業員が半分以上ですから、まずは企画住宅で若手育成をして、慣れてきたら一つ上のラインを担当してもらうなど工夫しています。建て売りも注文住宅よりは遥かに規格化・標準化がしやすい商品ですので、そういったところから少しずつ人を育てていくようにしています。

 

ーさまざまな工夫をされているのですね。多角化についてはどのような取り組みをされているのですか。

 

 

去年は売り上げの1割くらいが、障害者施設やクリニック、事務所や倉庫などの非住宅事業でした。今後は住宅と同じ規模まで非住宅を持っていきたいと考えています。その中でさまざまな非住宅を受注し、最終的には街を作ってコミュニティを作るという目標があるため、コワーキングオフィスや小さなホテル運営なども進めています。

 

最近は「家づくり」から「街づくり」へ事業を拡大していきたいと考えており、デベロッパー事業を目指しています。その上でさまざまな不動産を複合的に作っていくため、利回りベースで儲からなければ成り立たせることが難しくなります。田舎の場合は利回りが合わないことが多く、我々のエリアも同じです。その中で、利回りの観点で投資家から見ても価値のある商品を作っていく必要があります。

 

 

今のところ、例えば障害者施設やクリニック、ホテルなども最初の投資コストが安ければ利回りが出ますので、ホテルや民泊のようなネタをひたすら作り、複合的にデベロッパーとして企画をしていけたら良いと考えています。田舎はどうしても人が分散してしまい、不動産が集約されずに利回りが出にくいという課題がありますが、それでもイオンのショッピングモールなど特定の場所には人が集まっています。そこで不動産の価値を高めた商売ができれば利回りが出るので、その街を中心に住宅を展開できれば、半径500メートル〜1キロメートル程度の密集した小さな「街ユニット」がたくさんできるかもしれません。我々の住んでいる街全体も不動産の価格が上がってくれば、投資も活発になり、良い循環が生まれるのではないかと考えています。

 

あとは、エリアでは我々の分譲棟数がナンバーワンですので、不動産会社から見れば我々が一番土地を買う会社であるとも言えます。不動産との付き合いが密接であることを活用し、不動産情報を武器に非住宅を受注していく戦略も見据えています。

 

 

ー山陰では人材採用が難しいですが、御社は非常に好調であるとのお話を伺いました。どのような取り組みをされているのでしょう。

 

不動産業界・住宅業界は特殊な風土で、非常に労働集約型であることが多いですよね。成果主義で労働環境や人当たりが厳しい業界構造と言えますが、我々はその逆のカルチャーを作っています。中途採用者が8〜9割ではありますが、新卒社員も含めて穏やかな風土を作り、風土に合った人材を採用しているので、採用後も社員が友人を連れてくるといった形で人が集まってくるという流れができています。

 

 

特に、面接や採用が非常に重要であると考えていて、スキルを持っていても風土に合わないような人は基本的には採用しません。エージェントの使い分け・広告の活用・募集の仕組み構築など、あらゆる採用の手は打ちますが、やはり最終的にはどのような人を採るのかが重要だと考えています。私一人で全ての面接を対応することはできないため、面接も組織化し、聞く内容や点数の付け方、風土適合に関してはどのように判断をするか、といったことを組織の中で標準化しています。

 

ー労働集約型の住宅会社が多い中で、どのような良い人材を採るのかが徹底されているのですね。最後に、今後の事業展望を伺ってもよろしいですか。

 

 

住宅と非住宅で、同じぐらいの割合まで売り上げを持っていきたいと考えています。その上で、まずは住宅でトップシェアをとることが重要です。住宅のトップシェアに非住宅を近づけることができれば、山陰の地面にくっついているものを全て作れるようになる。全て作れるようになったら、次はデベロッパーとしてそれらを組み合わせた価値を作っていく、という流れをイメージしています。デベロッパーとしてさまざまなものが作れるようになり、集約されたエリアユニットが完成した頃には、その先のサービスでマネタイズをして、ビジネスをさらに展開していきたいですね。

 

一昔前は、住宅のシェアも10%取れたら良いとの風潮がありましたが、我々は20〜30%くらいのシェア率を目指しています。30%のシェアで建築物が多く作れると、土地の情報が集約され、企画を運営することで小さな街ユニットができます。そうすると、次はサービス展開が広がります。例えば、グーグルでは今、宇宙ビジネスを積極的に行っていますが、グーグルマップを作れても、家の中まではセキュリティ上、マネタイズできないんですよね。しかし、我々ならその情報の提供が可能です。グーグルマップで建物の中まで情報が見られるといったようなビジネスも、グーグルと提携してできるかもしれませんね。

 

 

また、島根・鳥取は少子高齢化が最も進んでいますので、医療・介護・福祉についての課題もある、いわば課題先進国です。今までは病院内の施設で治療行為が行われていたものが、どこかで家に移ってくるタイミングもあるでしょう。そのような側面でも、次のビジネスにつながっていくのではないかと考え、挑戦していきたいと思っています。

 

ーネガティブな環境だからこそチャンスがある、という発想が重要ですね。本日は、ありがとうございました。

 

株式会社アート建工


アート建工は、鳥取県米子市・境港市・鳥取市を中心に、一戸建ての新築及び分譲住宅を販売施工している工務店である。性能・デザイン・価格のすべてに妥協せず、理想のライフスタイルを叶えるオーダーメイド住宅を提供している。

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