checkbox編集を終えて

 

現在ノウフルの1月号に向けた執筆をしているが、主要な住宅企業11社の受注金額速報値(対前年同月比)が発表された。結果、マイナス企業数がプラス企業数を上回った。子育て世帯の住宅取得を支援する、こどもみらい住宅支援事業の訴求に力を入れるものの、受注環境の好転までには至っていない。

 

実際にノウフル経由で経営のご相談を毎月20社以上いただき、状況などをお伺いしているが、ほとんどの建築会社が昨年の10月あたりから集客が激減し、回復していない。このような状況下で各建築会社がどのような戦略を設定すべきなのか。今回、編集の結びとして残された紙面で適切な戦略構築にお役立ちできる考察を提唱し、本号の締めくくりとしたい。中でも今回は、多くの住宅会社が採用している「多角化戦略」について触れてみたい。

 

なお、私は延べ15年ほど建築業界に携わり、コンサルタントとして100社以上を支援し、3000人以上の経営者と対峙をしてきた経験と見解があるものの、考察に関してはあくまで個人の意見であることは事前にご了承いただきたい。

 

checkbox住宅業界の多角化「買取再販」について考える

 

それでは、今回は住宅業界の多角化の一例として、買取再販事業について見ていきたい。

 

まず、買取再販について念のために解説しておこう。買取再販とは下の図にある通り、中古戸建てあるいは中古マンションを仕入れ、リフォームやリノベーションを行い、それを販売するという事業を指す。住宅業界あるいは住宅会社において、買取再販事業は非常に魅力的であるが、市場についてはどのような状況なのだろうか。

 

 

買取再販の市場規模については、過去、コロナ禍による不動産取引をはじめとした経済活動の一時停止により、市場は縮小を余儀なくされていた。一方で、現在あるいは未来においては確実な成長が見込まれると考えられている。

 

 

まず、現在においては三つの観点で市場が成長している。

 

一つ目に、新築マンション価格の高騰・高止まりによる中古住宅の需要増加である。二つ目に、住宅政策を軸足とした新築事業から中古事業へのシフトである。そして三つ目に、大手・中小新築系の副業的参入による市場活性化である。

 

このような要因から、コロナ禍に停滞した市場は、今、拡大のステージに入りつつある。

 

 

ここで、住宅政策についても詳しく見ていきたい。

 

次の図は、地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画を表したものである。図にある通り、2030年度には46%の削減、2050年度にはCO²排出量実質ゼロを目指している。そして、千葉県北習志野台で行われた実験によると、リフォームやリノベーションをした場合は、新築を建てたときと比べて最大76%のCO²削減効果があるという結果が明確になった。このような背景からも、前述した住宅政策はより充実した内容になっていくであろう。そして結果的に、買取再販事業は市場拡大すると考えられる。

 

 

 

次に、未来について見ていこう。未来についても大きく三つ、市場拡大のドライバーがある。

 

一つ目が、住宅ローンの低金利を前提とした緩やかな上昇である。これによって、新築住宅の需要が縮小し、逆に買取再販の需要が拡大すると考えられる。二つ目に、住宅取得時の税制優遇措置である。こちらについても、前述した住宅政策の延長線上で優遇措置がより強化されると考えられる。そして三つ目に、リフォームを必要とする住宅ストック数の増加である。

 

近年、空き家問題などがより一層深刻化している中で、住宅ストック数が増加している。買取再販事業は、そのような社会課題を解決する施策であることからも市場は拡大していくであろう。

 

 

以上を踏まえて、2030年までの予測を見ていこう。下の図にあるように、買取再販事業の市場規模は2015年から緩やかな成長を続けている。そして、2030年にはマンションと戸建てを合わせて5万戸に到達するであろう。この数値は2015年から比較すると、なんと2倍の水準となる。こちらについては、マンション・戸建て共に同じような成長速度で拡大するとみられている。

 

 

checkbox最後に

 

以上、今回は「住宅業界の多角化 買取再販について考える」というテーマで見てきた。

 

今後、住宅業界の市場縮小が進むにつれて、多角化戦略が企業存続の鍵となることは間違いない一方で、縮小自体は比較的緩やかに進行すると考えられる。このような状況下において「茹でガエル」にならないためには、常に危機感を持ち、ヒト・モノ・カネに次ぐ「情報」に対してアンテナを張ることが重要であり、一人でも多くの建築従事者の方々にとってノウフルが貴重な情報源になればそれ以上のことはない。

 

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